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だが、そんなナタリアの心配が杞憂であったことを知るのは、カーティスがまたしても塔を留守にした翌日のことだった。
「姉さん……! やっと、会えた……!」
久しぶりに会う弟は、たった一年で見違えるような成長を遂げていた。凛々しい青年に成長した弟の姿に、ナタリアも頬を緩ませる。
「ねえ、姉さん……ここを出よう。カーティス殿下はおかしいよ……こんなところに、姉さんを閉じ込めたままで……」
「え……?」
だが、再会の挨拶もそこそこに弟の口から飛び出したのは、思いもよらない一言だった。目を瞬かせたナタリアに、弟は尚も言い募る。
「カーティス殿下は、魔法力の制御ができるようになったことで陛下に認められて、今は軍務に就いてらっしゃる。もう、塔にこもっている必要なんかないんだ……それなのに、姉さんはずっと塔に閉じ込められたまま……」
「え、だって、そんな……?」
そんなこと、カーティスは一言も言わなかった。呆然としたままのナタリアの腕を、弟が握る。強くその腕を引っ張られて、ナタリアは自分でも意図しないうちに、一歩、また一歩扉へと近づいた。
そして、塔に来た日から一度も外に出たことのないナタリアの身体が、とうとう扉をくぐった――その時。
部屋の中に、大きな竜巻が突如として現れる。強すぎる風にぎゅっと目を閉じたナタリアは、恐る恐る目を開いて驚愕した。
弟は部屋の外に吹きとばされ、壁に身体をしたたかに打ち付けたらしく呻いている。慌てて駆け寄ろうとしたナタリアの腕を背後から誰かが掴んだ。
「ナタリア、どこへ行く気だ」
「カ、カーティス様……!」
振り返ると、そこには恐ろしい形相をしたカーティスの姿があった。どうやら、あの竜巻は彼が空間を渡ったことで発生したらしい。
しかし、それよりもナタリアを驚かせたのは、彼の頭に生えた――一対の獣の耳だ。
銀の髪のカーティスの頭から、やはりそれと同じ色をした――犬の耳のようなものが生えている。
(あれは……見間違いではなかった、ということ……?)
ナタリアの視線の先に気付いたのか、カーティスが自分の耳に触れる。ハッとした顔つきになった彼は、慌てたように扉をしめ、ナタリアを寝室へと連れ込んだ。
「み……見たな……?」
「え、ええ……」
というか、現在進行形で見ている。ナタリアが目を瞬かせて頷くと、カーティスが呻いた。
「恐ろしくはないのか」
「恐ろしくは……特には」
というか、むしろかわいい。触らせてほしい。もしかしたら、尻尾もあるのだろうか。確認したいが、軍のものらしき長い外套に身を包んでいるカーティスの背後を確かめることはできなかった。
そんなナタリアの姿に、カーティスは呆然としていたが――やがて、はは、と乾いた笑い声を漏らした。
「そうだ、きみはそういうやつだったよ……」
「そういうやつ、ってなんですか」
ナタリアが呟くと、カーティスはその彼女の頭をぽんと撫でた。
「姉さん……! やっと、会えた……!」
久しぶりに会う弟は、たった一年で見違えるような成長を遂げていた。凛々しい青年に成長した弟の姿に、ナタリアも頬を緩ませる。
「ねえ、姉さん……ここを出よう。カーティス殿下はおかしいよ……こんなところに、姉さんを閉じ込めたままで……」
「え……?」
だが、再会の挨拶もそこそこに弟の口から飛び出したのは、思いもよらない一言だった。目を瞬かせたナタリアに、弟は尚も言い募る。
「カーティス殿下は、魔法力の制御ができるようになったことで陛下に認められて、今は軍務に就いてらっしゃる。もう、塔にこもっている必要なんかないんだ……それなのに、姉さんはずっと塔に閉じ込められたまま……」
「え、だって、そんな……?」
そんなこと、カーティスは一言も言わなかった。呆然としたままのナタリアの腕を、弟が握る。強くその腕を引っ張られて、ナタリアは自分でも意図しないうちに、一歩、また一歩扉へと近づいた。
そして、塔に来た日から一度も外に出たことのないナタリアの身体が、とうとう扉をくぐった――その時。
部屋の中に、大きな竜巻が突如として現れる。強すぎる風にぎゅっと目を閉じたナタリアは、恐る恐る目を開いて驚愕した。
弟は部屋の外に吹きとばされ、壁に身体をしたたかに打ち付けたらしく呻いている。慌てて駆け寄ろうとしたナタリアの腕を背後から誰かが掴んだ。
「ナタリア、どこへ行く気だ」
「カ、カーティス様……!」
振り返ると、そこには恐ろしい形相をしたカーティスの姿があった。どうやら、あの竜巻は彼が空間を渡ったことで発生したらしい。
しかし、それよりもナタリアを驚かせたのは、彼の頭に生えた――一対の獣の耳だ。
銀の髪のカーティスの頭から、やはりそれと同じ色をした――犬の耳のようなものが生えている。
(あれは……見間違いではなかった、ということ……?)
ナタリアの視線の先に気付いたのか、カーティスが自分の耳に触れる。ハッとした顔つきになった彼は、慌てたように扉をしめ、ナタリアを寝室へと連れ込んだ。
「み……見たな……?」
「え、ええ……」
というか、現在進行形で見ている。ナタリアが目を瞬かせて頷くと、カーティスが呻いた。
「恐ろしくはないのか」
「恐ろしくは……特には」
というか、むしろかわいい。触らせてほしい。もしかしたら、尻尾もあるのだろうか。確認したいが、軍のものらしき長い外套に身を包んでいるカーティスの背後を確かめることはできなかった。
そんなナタリアの姿に、カーティスは呆然としていたが――やがて、はは、と乾いた笑い声を漏らした。
「そうだ、きみはそういうやつだったよ……」
「そういうやつ、ってなんですか」
ナタリアが呟くと、カーティスはその彼女の頭をぽんと撫でた。
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