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 小鳥のさえずりが聞こえる。ふっと意識が浮上して、ナタリアはゆっくりと目を開いた。部屋の中は薄暗い。だが、薄明りに照らされた部屋の調度に見覚えはなく、自分がどこにいるのかとっさにはわからない。
 だが、それも一瞬。昨夜――いや、昨日のことを思い出して、ナタリアは慌てて周囲を見回した。
 調度類は高級品のようだが、思った以上に小さな部屋だ。部屋のほとんどを、今ナタリアが寝ている寝台が占めている。
 部屋の中には自分一人のようで、おそらく一緒に寝たであろう彼の姿はすでになかった。慌てて身体を起こそうとしたとき、下腹部に鈍い痛みを覚える。
 そっと手を添え、ナタリアは小さく息を吐き出した。

「そうだったわ……」

 昨夜、自分は彼に純潔を捧げたのだ。この痛みはその証し。
 だが、不思議と身体はさっぱりとしている。身にまとっているのは見覚えのないシャツ一枚で——おそらく、ナタリアの身に着けるものの準備などされていないのだろう。
 仕方なく、傍にあった大きなガウンを羽織り、もういちど周囲を見回す。

「どうしたらいいのかしら」

 そんな小さなつぶやきと同時に、部屋の扉ががちゃりと開いた。

「……起き上がれるのか」

 顔を出したのは、美しい銀の髪に濃い紫色の瞳をした青年だ。今日はフードを被っておらず、中性的な美貌がさらけ出されている。
 初めて目にしたカーティスの美しい顔に、ナタリアは答えることすら忘れて見惚れた。

「……のうは、悪かったな」
「へっ?」

 その沈黙をどうとらえたのか、小さな声でカーティスが言う。ナタリアが思わず目を瞬かせると、彼はふい、とそっぽを向いた。
 目を瞬かせ、その秀麗な横顔をじっと見つめていると、居心地悪そうにカーティスが言葉を続ける。

「向こうに朝食が準備してある。食べられるなら来い」
「あ、は、はい。あの……」
「……ああ、着るものがないのか。あとで届けさせる」
「あ、ありがとうございます……」

 呆気にとられたままナタリアがそう答えると、カーティスは足早に扉の向こうに消えていった。ナタリアも慌ててそれを追う。
(結局、私……ここにいて、いいのかしら?)
 黙って朝食を食べるカーティスの向かいに座って自身もそれを口に運びながら、ナタリアは小さく首を傾げた。
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