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それぞれの分岐点 その3−1

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そわそわとリオネルがもどってくるのをまちながら、部屋の中にちらばった書籍やよくわからない実験道具をさけて飾り棚のところにいく。

ここだけは綺麗にしていて、そこにはマリアンヌが贈った懐中時計が飾られていた。

それは2人が恋人になった日から1年目にマリアンヌからリオネルに贈った懐中時計だった。

マリアンヌのお給料の実に3ヶ月分に相当するもので倹約家の彼女としては相当の覚悟がいる買い物だった。

普段めったにお金を使うことのない彼女にとってもほとんどの貯金を使い果たすほどの大きな買い物でそれを知った時のリオネルはだくだくと涙を流し、そんな彼を宥めるのに1時間以上かかったのは2人の良き思い出である。

彼には記念日に贈り物をするという発想がなかったようで、自分から何も用意していなかったことを非常に気にしていた。

その1年後、今度はリオネルが、マリアンヌ同様に給料3ヶ月分相当だという手首につける時計を贈ってくれた。

最新流行の、装飾品のような珍しい時計だった。

マリアンヌは土いじりをするため、残念ながら日常使いで身につけることができないため大切にしまっている。特別な日だけ装飾品として身につけている。

そして来る今度の3回目の記念日に、実は、特別な贈り物を用意してマリアンヌからプロポーズをしようと考えている。


2人の愛の性活から生まれた避妊薬は、安全性が高く今では王都のみならず王国全土にわたって使用されている。

避妊薬やそれにかかる商品、書籍などはリオネルが知り合いだという商会マントデドラゴ社を経由して広く販売され、その売り上げは莫大だった。

結果、家族の一人や二人、いや十人くらいは裕に養える資産がマリアンヌにもたらされていた。

その資産は勿論既に北方辺境地区に図書館を寄贈したり街道を整備したりと、郷里のためにも使っている。

しかしそれでもあまりある資産があり、生活に困窮してる様の見受けられるリオネルを自分が養っていけばいいと考えたのだった。

リオネルは今の仕事を好きなようだが以前少し話してくれた中に”家族のために働いている”というのをマリアンヌは覚えていた。

もし彼や彼の家族に借金があるなどの苦しい事情があっても支えていく覚悟も経済力もある。

彼は家族との縁が薄いようで家族の話をすることをさけたがるしその理由や詳細はわからないが、いつもみなりはボロボロで彼自身にお金があるとも到底思えない状況だった。

だが彼は彼でいてくれればいい。

皆に認められる頭脳で好きな仕事をすればよいが、体を壊しそうな今の働き方を続けるのは賛成できない。ならば一時的にでも退所しゆっくり生活をしても良いのではないか。

マリアンヌ自身も十分知識も経験もそれに加え資産も築けたので、今すぐ辺境地にもどっても以前と比べ物にならないほどよい環境のはずなのだ。

彼と2人力をだしあえっていけば、あのまったく戻りもしないオリウス伯爵を待つより全てをうまくいくように仕向けられるかもしれない。それどころか北方辺境地区をよりよくすることも可能なはずである。

そんなことをかんがえて改めて彼へのプロポーズの決意を固めていた。

今日はそんな彼との愛をさらに育むため、彼の要望がつまった成人指定恋愛小説の再現を全力で行う。気合いも準備も十分である。マリアンヌの鼻息は荒い。


そんなことを考えて鼻をフガフガさせていると扉をノックする音が聞こえた。

部屋のあるじはいないが、今室内にいるのはマリアンヌしかいないため扉を開けに向かう。

しかし、突然扉は開いた。

「入るぞ~、リオネルよ今日は何がしたい? って、あれ?マリーちゃん?」

勝手知ったる様で扉から現れたのは長身に白衣を着こなすロングヘアーの女性だった。

「あ、あの、デリュース様はもうすぐお戻りになります」

「?デリュース? 誰のことだ?って、あぁ我が愛しのオリーのことか?」

「いっ? 愛しの???」

マリアンヌとその女性が顔を見合わせ ?! としているところへ頭から湯気を出したまま濡れ髪巨人が胸をはだけた状態で入ってきた。

「ギェ、サシャ・ルーポ!?」

突然現れた女性は、二人の思い出の図書館で脚立を貸してくれたあのお姉さんだった。
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