【R18】おいもではじまるシークレットベイビー

それぞれの分岐点 その１−２

マリアンヌが１２歳になったその頃、父カルドはある考えに至っていた。

やはり北方辺境地はオリウス伯爵家が正しく収めるべきだと。

あの侵攻の際、できるだけのことを行い辛からくも領を守ることができたがいくつかの幸運がかさならなければ領の民に甚大な被害が及んでいたことは想像に難くない。

そしてファルマ男爵家にいくら統治代理権限があろうとも、真の権限でない以上何かあった時に当主だけでなく家族、そして使用人たちにまで責がおよぶ可能性もあるからだ。

新しく家族も増えたこの頃、父カルド・ファルマは北方辺境地の真の当主であるオリウス伯爵家になんとか北方にもどってもらおうと動き出すことにしていた。

しかし、どう連絡をとっても一向に戻る気配のないオリウス本家の面々。

時期当主のマルティン・デ・オリウスからはもうしばらく待てば悪いようにはしないとの文が同じ内容で幾度も送られてきてはいた。

一方で不穏な空気が再度訪れる。

南に飛ばしている諜報部隊からは再度侵攻を企むものがいるとの報せを受け取るといよいよカルドは王都に直談判に行こうかというところまで来ていた。

それと同じ頃、図らずもオリウス本家の縁戚で当主の長女であり今はファルマ家筋に嫁いでいたアザレアがマリアンヌの事実上の継母にあたるアザリと共にマリアンヌに基礎四科試験（王国の公職につくための能力試験）を受験させていた。

２人は大した意味もなく、領内の教師たちがこぞってマリアンヌは天才だと声を揃えるのでどれほどまでの学力か調査する意味程度のものとして捉えていた。

するとその結果は良い意味で予想を裏切り、全科満点。
年齢性別例を見ない優秀さで、派遣された試験官はすぐに中央へ報告してしまったのだった。

中央からはすぐにマリアンヌを王立研究所に正規研究員として入職させよと連絡が来た。

本人が望んではいたとしても、事情がありこちらもまだマリアンヌをここから出すわけにはいかないと考えていた父カルドは幾度もその命を丁重に辞退していた。

しかし諦めない中央と、さらにはどこからか噂を聞きつけた王室まで乗り出してきたためマリアンヌの周囲はいささか騒がしくなり始めた。

そんな中、当の本人が中央と交渉をすると言い出したのだった。

賢く強したたかなマリアンヌ、己と引き換えにオリウス家をこちらに戻してもらおうと思った。

周囲は反対したが、いささか頑固な長子マリアンヌは責任感も強くそれが一番の策だと笑顔で中央を手紙を送ってしまった。

その返事は、諾。

王家から中央まで、権力であちらもこちらも収めようと動いてくれた。

かなり抵抗して最後まで当主は反対していたようだが、どういうことかある時期すっと物事がうごきだした。

幼い少女が己を贄として差し出し、家族と関係者を守る。
その構図に父と継母、そして関係者だったアザレアは苦い思いに浸ったのがマリアンヌ上京の背景だった。