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資料管理室の才女たち その5

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先程マリアンヌの父、カルド・ファルマが案内されていた資料管理室の一角にある応接コーナーに資料管理室の職員たちが集まっていた。

応接用ソファ、椅子とテーブルそれらの隙間にどこかから持ち込まれた研究所が特許を持つ折りたたみ式椅子が運び込まれた。

「よいしょ、よいしょっと。ふぅぅ。今日も暑いですねえ」

と言いながらふくふくとしたお顔にたっぷり玉の汗をのせている大柄な男性が折りたたみ式の椅子を運び込みそこに座ろうとした。

ギジぎしっ、ミシみしっ、、、と不穏ふおんな音を立てる椅子の様子を見ていた上司のナオミがその部下に対して自分が腰掛ける一人用ソファの向かいにある3人掛けソファを示しそこに座るように誘導する。

「オルソー、その折りたたみ式椅子は記念すべき試供品第一号として用具開発部門から寄贈された貴重な品なんだ。大切にしてほしい。君はそこに座りなさい」

「ナオミ様、申し訳ない。僕は少々力が強いようで良く物を壊してしまうんですよね、気をつけないといけないと常々思っているのですが。いやいや、言い訳はいけないですね。反省しております、はい」

汗を拭き拭き、お肉に埋まったお目目をさらにほそめて笑っているように見えるオルソーという男は3人がけの椅子に座った。が、もうそのソファに他の人が座る余地はない。

仕方なく、先輩補助員ネイトと新人補助員マリアンヌはそれぞれ並んで折りたたみ式の椅子に収まった。
セドー女史の隣に据えられたもうひとつの一人掛けには食堂から一緒に来た美人さんが腰掛ける。

「それでは、来週からここで勤務してもらうことになったマリアンヌ・ファルマ嬢を紹介する。北方辺境地の出身でファルマ男爵家の長子である。すでに知っている者もいると思うが彼女は大陸共通7語はもとより32言語を解することができる。基礎4科も1次試験満点で修了している。とはいえ、社会経験はないに等しく歳も15才と若い。皆多忙なことは承知しているが、できる限り全員で指導に当たってくれるとありがたい」

ネイト以外の大人3名はニコニコとマリアンヌを見つめているが、隣のネイトは椅子から転がり落ちるほどに驚いていた。

「さささささ、32言語ですかっ!?それにじゅじゅじゅじゅじゅ15才で基礎4科1次試験満点修了って研究所の研究員さんと同じ頭脳レベルじゃないですか?なんで補助員なんすか???」

「ネイト、15才じゃないぞ、12才の時に満点修了だ」

腕組みし眉間に皺を寄せ困ったやつだという顔で声を発したのはナオミの隣の首絞め麗人だった。

「んがっ?じゅじゅじゅじゅじゅじゅ12歳?」

(あ、さっきより”じゅ”がひとつ増えたわ)

と、隣でどうでも良いことを考えていたマリアンヌ。

「まぁ、マリアンヌは事情があって研究部門預かりではなく資料管理室の私のもとで補助員というか弟子のような扱いになる。彼女の能力については知っているものは知っているが知らないものもいるから辺境地出身の年若い彼女を見下すような振る舞いをするやからも出てくるかもしれないがそんなものは放っておいていい。彼女もそういうものに振り回されるような性質ではないと彼女の父君からも聞いている。しかし、目に余るようなものがいた場合は、みな年上の同僚として守ってやってほしい。彼女はこの王都に頼れる身よりもほとんどいない。プライベートなことでも相談があったら乗ってやってもらえないだろうか」

少し癖や訳のある資料管理室のメンバーは、それぞれこの部署に入職したときからこの優しい上司に何くれと世話を焼いてもらってきた。もちろん他のメンバーにも世話になっている。お互い補い合ってもきた。当然、新しく入ってきたこの幼いメンバーにも同様に優しく手を差し伸べるであろう。

「詳しい身の上や、自己紹介などは来週勤務が始まってから空き時間に行うことにする。とりあえず今日は顔見せと名前の紹介だ。父君が外で待っているのもあるから手短に名乗っていってほしい」

「あ、では年の功で私から。えー私はオルソー・デルソルと申します。歳は35才。国の東の端にある町の出身です。補助員をしておりまして、得意な分野は科学技術の分析です。大陸共通7言語は読解できますが、それ以外はあまり得意ではないのでいつも皆さんにお世話になっております。えー、それで好きな食べ物ですが はちみ 「オルソー、もういいその続きはまた今度だ」」

次、っと指示を出すとナオミの隣に座っていた意外と武闘派麗人様が声を発した。

「私はマロー・スピナ、よろしく」

「僕はネイトです、平民なので姓はないですがここにくるまでは七つ屋根のネイトと呼ばれていました。よろしくおねがいします!」

「私を含めこの5人でこれから資料管理室を運営していく。マリアンヌ、時折研究部門の人間が入ることがあるがそれはそれぞれの研究部門が必要な資料提供を求める際によくある人事交流のような物だ。そんなに悪い人間はまぁ、いない。癖のある奴は多いがな。この敷地に癖のない人間はいないと想って心算こころづもりをしておくとやりやすくなる、というのは上司としての初めてのアドバイスだ」

からからと笑う稀代の才女、ナオミ・セドー女史は家庭教師風でも女神官もどきでもなく、はたまた桃色小説の女王様でもなく領のお姉様方と同じ雰囲気をもつ肝っ玉かあさんのようだった。

見た目は怖そうだったけど。

生まれて初めての職場体験は肝っ玉ナオミ母さんと楽しそう?な仲間たちにより無事終了したのだった。
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