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資料管理室の才女たち その1
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資料管理室の業務は多岐にわたる。
研究所中で使用される図書資料にはじまり行政・司法・立法のの大小議事録、王室および王国全領の会計伝票・財務資料に加えありとあらゆる文書・図等を管理および保管を行う。
資料は王国内で使用されている言語のみならず大陸中のほぼすべての言語によるものが存在し、またすでに使用されなくなった古代の言語による資料も取り扱う。
そのほか、数式や化学式のような専門的かつ見る者を限定する性質のものや税務や婚姻等に関わる秘匿性の高いものも取り扱う。
そういったすべてに対して一定以上の知識と理解を有していないと分類・記録・管理といった作業をこなせない。
このような部署に配属されるのはごく一部の限られた人間であった。
また、資料の悪用を防ぐため高い倫理観や社会地位などの背景も念入りに調べられての入職となるためその採用条件は極めて厳しいものであると断言できる。
エリートが集合する研究所の中でも難関職であるから、さぞ人気もあり羨望を多く集める花形職かとおもいきやその実まったくそれとは逆であるから悲しい。
採用基準や必要とされる素養の高さに比例して給与などは高めではあるものの、採用される人数が少ないため常に業務は滞る。そのため拘束時間が異常に長い。残業5時間は当たり前の世界線。
また、勤務時間外のプライベートな時間でさえも常に知識情報を更新していくための研鑽を積むことに費やさねばならない。勤勉性や好奇心、向上心などは他の研究所の職と比べても非常に多くが求められるのであった。
安寧の世となり娯楽も多いこの王都において、給金は高くとも己の全てを犠牲にするほどの覚悟を要求される資料管理職はあまり人気が高くない。
それになんといっても、資料管理、という響きに華がなく内情をよくしらない人たちからすると「なにそれダサい」といった印象すら持たれてしまう悲しい部署でもある。
巷でも話題になるような便利な生活用品や画期的なアイデアで国民に受け入れられた制度などの発信元である研究所内の部署であれば、庶民にもその名前は行き渡り人気はほしいままである。しかし、あまりに専門的で高度な内容を取り扱う研究部門や”資料管理”といった漠然として対象範囲の広すぎる部門はすこぶる人気が低い。
やはりみな就職する時には、給金や福利厚生のよさだけでなく、将来の伴侶にプラスで望まれる華やかな部署に希望が殺到するわけである。真面目に多忙な部署に勤める者たちからすれば、ミーハー同士くっついてくれというはなしではあるが。
さて話はマリアンヌの所属する資料管理室に戻る。
ざっくり、ミーハーな人たちには受けの悪い部署である。
そこの指揮監督を行うトップは国内にとどまらずその名を大陸中に轟かす賢人一族セドー家出身のナオミ・セドー女史である。
濃い栗色の毛を頭上に一つくくりにし髪の毛1本の乱れも許さないまとめ髪スタイルはTHE オールドミスなどと揶揄されそうな出立ちである。だが当の本人は4人の子供をもつ50歳近い肝っ玉かあさんである。 神経質な印象を与える風貌に反し非常に面倒見が良い優しき資料管理室のおかあちゃんなのである。
そんな隠れたエリート部門に、なぜ辺境地出身の男爵令嬢が潜り込めたのか。
その理由は非常にシンプル。
マリアンヌが王国史上例を見ぬほどの高得点で学術試験を最年少突破したからである。
マリアンヌは大陸中で現在使用されている37言語のうち25言語を話し、32言語を読解する能力を若干14歳で身につけていた。
また、学術試験の1段階目の試験である『法令・会計・技術・教養』の基礎4科目を満点で突破した。
これは彼女が12歳の時のはなしである。その後2段階、最終段階の記述・面接の試験をランダムに振られる大陸共通7言語から出題された試験内容をぶっちぎりの1位通過してしまった。
14歳にして研究所への入職資格を取得したが、ある条件のために1年以上関係各所が揉めに揉めたため入職は16歳の誕生日の直前となった。
研究所中で使用される図書資料にはじまり行政・司法・立法のの大小議事録、王室および王国全領の会計伝票・財務資料に加えありとあらゆる文書・図等を管理および保管を行う。
資料は王国内で使用されている言語のみならず大陸中のほぼすべての言語によるものが存在し、またすでに使用されなくなった古代の言語による資料も取り扱う。
そのほか、数式や化学式のような専門的かつ見る者を限定する性質のものや税務や婚姻等に関わる秘匿性の高いものも取り扱う。
そういったすべてに対して一定以上の知識と理解を有していないと分類・記録・管理といった作業をこなせない。
このような部署に配属されるのはごく一部の限られた人間であった。
また、資料の悪用を防ぐため高い倫理観や社会地位などの背景も念入りに調べられての入職となるためその採用条件は極めて厳しいものであると断言できる。
エリートが集合する研究所の中でも難関職であるから、さぞ人気もあり羨望を多く集める花形職かとおもいきやその実まったくそれとは逆であるから悲しい。
採用基準や必要とされる素養の高さに比例して給与などは高めではあるものの、採用される人数が少ないため常に業務は滞る。そのため拘束時間が異常に長い。残業5時間は当たり前の世界線。
また、勤務時間外のプライベートな時間でさえも常に知識情報を更新していくための研鑽を積むことに費やさねばならない。勤勉性や好奇心、向上心などは他の研究所の職と比べても非常に多くが求められるのであった。
安寧の世となり娯楽も多いこの王都において、給金は高くとも己の全てを犠牲にするほどの覚悟を要求される資料管理職はあまり人気が高くない。
それになんといっても、資料管理、という響きに華がなく内情をよくしらない人たちからすると「なにそれダサい」といった印象すら持たれてしまう悲しい部署でもある。
巷でも話題になるような便利な生活用品や画期的なアイデアで国民に受け入れられた制度などの発信元である研究所内の部署であれば、庶民にもその名前は行き渡り人気はほしいままである。しかし、あまりに専門的で高度な内容を取り扱う研究部門や”資料管理”といった漠然として対象範囲の広すぎる部門はすこぶる人気が低い。
やはりみな就職する時には、給金や福利厚生のよさだけでなく、将来の伴侶にプラスで望まれる華やかな部署に希望が殺到するわけである。真面目に多忙な部署に勤める者たちからすれば、ミーハー同士くっついてくれというはなしではあるが。
さて話はマリアンヌの所属する資料管理室に戻る。
ざっくり、ミーハーな人たちには受けの悪い部署である。
そこの指揮監督を行うトップは国内にとどまらずその名を大陸中に轟かす賢人一族セドー家出身のナオミ・セドー女史である。
濃い栗色の毛を頭上に一つくくりにし髪の毛1本の乱れも許さないまとめ髪スタイルはTHE オールドミスなどと揶揄されそうな出立ちである。だが当の本人は4人の子供をもつ50歳近い肝っ玉かあさんである。 神経質な印象を与える風貌に反し非常に面倒見が良い優しき資料管理室のおかあちゃんなのである。
そんな隠れたエリート部門に、なぜ辺境地出身の男爵令嬢が潜り込めたのか。
その理由は非常にシンプル。
マリアンヌが王国史上例を見ぬほどの高得点で学術試験を最年少突破したからである。
マリアンヌは大陸中で現在使用されている37言語のうち25言語を話し、32言語を読解する能力を若干14歳で身につけていた。
また、学術試験の1段階目の試験である『法令・会計・技術・教養』の基礎4科目を満点で突破した。
これは彼女が12歳の時のはなしである。その後2段階、最終段階の記述・面接の試験をランダムに振られる大陸共通7言語から出題された試験内容をぶっちぎりの1位通過してしまった。
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