56 / 126
第十一章
婚約者の来訪
しおりを挟む
「エリー、ずいぶんご無沙汰してしまったね。
元気だった?」
応接室にてエリージェ・ソードルと対面する第一王子ルードリッヒ・ハイセルが柔らかく微笑んだ。
それを受けたエリージェ・ソードルも、嬉しそうに頬を緩ます。
「はい、殿下。
わたくしは問題なく過ごしております。
殿下もお元気そうでなによりです。
モンドルはいかがでしたか?
鷹狩りは出来ましたか?」
第一王子ルードリッヒ・ハイセルは苦笑をしながら頭を掻いた。
「やっぱり危ないからといって、認めてもらえなかったよ。
そりゃあ、向こうとしては外国からの客人に怪我なんかさせられないから仕方がないさ。
ただ、オーメはかなり食い下がっていたけどね」
「……その様子が目に浮かぶようですわ」
エリージェ・ソードルの口元にも苦いものが浮かぶ。
オーメとは幼なじみオーメスト・リーヴスリーの事だ。
「一緒にいてくれて心強かったし、退屈もしなかったけど、ああいう時のオーメには困ったものだよ」
「リーヴスリー伯爵夫人が、リーヴスリーの血をより濃く受け継いでいると頭を抱えるだけのことはありますわね」
「参ったものだ」
と第一王子ルードリッヒ・ハイセルは愉快そうに笑った。
エリージェ・ソードルの記憶よりもさらに若い彼ではあった。
だけど、その黄金色の瞳は”前回”と同じように女を優しく見つめる。
エリージェ・ソードルの胸が温かく締め付けられた。
ああ、殿下。
わたくしがお会いしたかったお方。
第一王子ルードリッヒ・ハイセルは話を続ける。
「でも、モンドルの鷹狩りは体験できなかったけど、なかなか有意義な時間は過ごせたよ。
父上の課題であった、羊毛の取引の拡大も何とか及第点ぐらいには話を付けられたしね。
それに、異国の空気も体験できて――エリー、いつか君とも一緒に行きたいよ」
「それは楽しそうですわね。
是非ともご一緒したいです」
エリージェ・ソードルの頬が緩む。
異国情緒が溢れる町を、愛しい人の腕に手を絡めて散策する。
様々なものに追われた”前回”では、想像することすら出来なかったそれに、この女の心は躍った。
(ああ、”素敵”
そうだわ、クリスティーナの言っていた”素敵”ってこの事なんだわ)
この女らしからぬ事に、自身の妄想にうっとりした。
すると、第一王子ルードリッヒ・ハイセルが「ああそうだ」と眉をハの字にしながら言う。
「エリー、申し訳ないんだけど、約束していた王立植物園での散策、別の日にして貰ってもいい?」
「何かございましたか?」
とエリージェ・ソードルは小首をひねる。
「実は鷹狩りが出来なかったので、代わりに遠乗りをしようって話になったんだ。
でも、皆の空いている日がその日しか無くて……」
「……そうですか。
それはかまいませんが……」
と言いつつ、エリージェ・ソードルは少し訝しげに思う。
第一王子ルードリッヒ・ハイセルの対応が余りにも稚拙だったからだ。
エリージェ・ソードルの知る第一王子ルードリッヒ・ハイセルなら、植物園の見頃の花、予定を変えさせるエリージェ・ソードルの心情、遠乗りする利点等を加味して、丁寧に話を持って行くはずだった。
にもかかわらず、今、目の前の彼は余りにも無防備に話を切りだした。
だから、おかしく思ってしまったのだ。
だがそれも仕方がなかった。
”前回”の第一王子ルードリッヒ・ハイセルは成人を過ぎた十七歳なのである。
現在の十歳そこそこの彼とは経験が違いすぎた。
この女も、その辺りに思い当たり、仕方がないかと考えた。
(ただ、このお方も将来、国の王となられるのだから、今のうちにご指摘した方がよいかしら?)
などとも、思った。
?
エリージェ・ソードルはそこで妙な違和感を感じた。
同時に、何か言いしれぬ不安が胸の中を揺らした。
(何かしら?)
だが、それが何なのか、明確には分からない。
混乱するエリージェ・ソードルをそのままに、第一王子ルードリッヒ・ハイセルの話は続く。
「ねえ、思ったんだけど、王立植物園じゃなくて王宮の庭園での散策にしないかな?」
「王宮の、ですか?」
騒ぐ胸中を必死に押さえつつ、エリージェ・ソードルは合いの手を入れる。
第一王子ルードリッヒ・ハイセルはどことなく無邪気な笑みを浮かべた。
「うん、王宮の庭園も王立植物園なんかに負けないくらい沢山の花がそろっているよ。
それにほら、エリーも将来、”王宮に住む”ことになるんだから、色々、紹介したいな。
あと、母上もエリーと久しぶりにお茶をしたいとおっしゃってたし」
ドキンと心臓がはねた。
”王宮に住む”――嬉しいはずなのに、高揚するはずなのに、胸を叩くのは不安だった。
体から体温がすり抜けていくような感覚に襲われ、この女、自身の腕をさすった。
それは表情に出ていたようで、対面する第一王子ルードリッヒ・ハイセルが訝しげに「エリー? どうしたの?」と訊ねてきた。
だが、混乱するこの女は、それに応えることが出来ない。
ただ、たどり着いてはならない、”それ”に、言いしれぬ恐怖を感じた。
この方と王宮に住む……。
それは……それは……。
だって、わたくし、あの時……。
脳裏に浮かんだのは、少女の後ろ姿だった。
エリージェ・ソードルはその薄金色の頭に、火掻き棒を振り下ろした。
(違う!)
赤髪の少年を池にたたき落とした。
(違う!)
攻撃魔術で威嚇してくる少年を”黒い霧”で縛り上げ、踏みつけた。
(違う!)
黄金色の瞳の少年が、女を睨みながら言い放った。
『エリー!
これ以上すると、婚約破棄をする!』
(違う! 違う! 違う!)
生徒会室の応接室、その中央にエリージェ・ソードルは立っていた。
その周りには四人の少年が倒れている。
それを見下ろす女の顔は、満面の笑みを――。
「エリー!
しっかりして、エリー!」
目の前に黄金色の瞳が心配そうに見つめている。
いつの間にか、女は長いすから降り、床に両膝を着いていた。
そんな女を、第一王子ルードリッヒ・ハイセルは抱きしめながら必死に声をかけていた。
だが、応えられない。
エリージェ・ソードルは応えられない。
この女、目を見開き、ガクガクと震えた。
エリージェ・ソードルは貴族である。
貴族の中の貴族と言っていい。
ゆえにこの女、弱い姿を見せない。
”当たり前だ”。
貴族は守るべきものを先導し、貴族は守るべきものの誇りでなければならない。
だからこの女は、いつだって強くあり続けた。
強くあり続けなければ、ならなかった。
だが、そんな女が、今、涙をこぼした。
老執事ジン・モリタをはじめとする大切な人間が離れていった時も。
守るべき領民から罵声を浴びても。
理不尽な悪意に足を引かれても。
この女はけして、けして、流さなかった”それが”……。
頬を伝い、顎からこぼれ落ち、手を濡らした。
まるで決壊したかのように流れ続けた。
第一王子ルードリッヒ・ハイセルの胸の中で小さくなりながら、震えながら、こぼし続けた。
(あり得ない。
わたくしがこの方を害するなんて、あり得ない。
だって、この方はこの国の未来なのに……。
何で……?
死ぬなら、わたくしが死ねば良かったのに……)
「お嬢様!
いかがしましたか!?
お嬢様!」
目の前に侍女長シンディ・モリタの顔が現れた。
老婦人は心配そうにエリージェ・ソードルの顔をのぞき込んでいた。
エリージェ・ソードルは目を大きく見開く。
『背筋を伸ばしなさい。
あなたは――』
エリージェ・ソードルは奥歯を強く噛みしめた。
そして、静かに立ち上がる。
「エリー?
大丈夫?」
見上げる第一王子ルードリッヒ・ハイセルが不安そうな顔で訊ねてきた。
エリージェ・ソードルは侍女長シンディ・モリタが差し出した手ぬぐいで目元と頬を押し当てるように拭い、それを返しながら答える。
「殿下、申し訳ございません。
本日は体調が優れませんので、これで失礼します」
「あ、うん。
気にしないで!」
第一王子ルードリッヒ・ハイセルは少し安堵したように言うと、立ち上がった。
そんな彼に、エリージェ・ソードルは向き直り、深々と頭を下げた。
「あと、大変勝手ながら申し上げます。
婚約の件、こちらの都合で破棄させていただきます」
「……え?」
「お、お嬢様!?」
ポカンとする第一王子ルードリッヒ・ハイセルと絶句する侍女長シンディ・モリタをそのままに、エリージェ・ソードルは応接間を出る。
付き従う侍女ミーナ・ウォールや女騎士ジェシー・レーマーなども、状況についてこれず動揺しているようだった。
だが、エリージェ・ソードルは静かに、自室に向かって淡々と歩く。
途中、何人もの使用人とすれ違ったが、一様に困惑しながらも、ただ、頭を下げた。
だから、エリージェ・ソードルは何も言わずに歩いた。
自室の前に誰かが立っていた。
クリスティーナだった。
彼女は大きな本を抱えていて、エリージェ・ソードルに気づくと、嬉しそうに微笑んだ。
だが、すぐに目を見開く。
クリスティーナの腕から、本が滑り落ちた。
「おじょ~様?
どうしたの?」
そう言う少女の姿が、何故かぼやけた。
「おじょ~様!
どうしたの!?」
クリスティーナが駆け寄ってきて、女の体を抱きしめた。
「クリス……」
エリージェ・ソードルは膝から床に落ちた。
女騎士ジェシー・レーマーなどの声が聞こえてくる。
だが、エリージェ・ソードルはクリスティーナを抱きしめると、少女の小さな肩に目元を乗せた。
声は上げなかった。
だけど、この女は泣いた。
元気だった?」
応接室にてエリージェ・ソードルと対面する第一王子ルードリッヒ・ハイセルが柔らかく微笑んだ。
それを受けたエリージェ・ソードルも、嬉しそうに頬を緩ます。
「はい、殿下。
わたくしは問題なく過ごしております。
殿下もお元気そうでなによりです。
モンドルはいかがでしたか?
鷹狩りは出来ましたか?」
第一王子ルードリッヒ・ハイセルは苦笑をしながら頭を掻いた。
「やっぱり危ないからといって、認めてもらえなかったよ。
そりゃあ、向こうとしては外国からの客人に怪我なんかさせられないから仕方がないさ。
ただ、オーメはかなり食い下がっていたけどね」
「……その様子が目に浮かぶようですわ」
エリージェ・ソードルの口元にも苦いものが浮かぶ。
オーメとは幼なじみオーメスト・リーヴスリーの事だ。
「一緒にいてくれて心強かったし、退屈もしなかったけど、ああいう時のオーメには困ったものだよ」
「リーヴスリー伯爵夫人が、リーヴスリーの血をより濃く受け継いでいると頭を抱えるだけのことはありますわね」
「参ったものだ」
と第一王子ルードリッヒ・ハイセルは愉快そうに笑った。
エリージェ・ソードルの記憶よりもさらに若い彼ではあった。
だけど、その黄金色の瞳は”前回”と同じように女を優しく見つめる。
エリージェ・ソードルの胸が温かく締め付けられた。
ああ、殿下。
わたくしがお会いしたかったお方。
第一王子ルードリッヒ・ハイセルは話を続ける。
「でも、モンドルの鷹狩りは体験できなかったけど、なかなか有意義な時間は過ごせたよ。
父上の課題であった、羊毛の取引の拡大も何とか及第点ぐらいには話を付けられたしね。
それに、異国の空気も体験できて――エリー、いつか君とも一緒に行きたいよ」
「それは楽しそうですわね。
是非ともご一緒したいです」
エリージェ・ソードルの頬が緩む。
異国情緒が溢れる町を、愛しい人の腕に手を絡めて散策する。
様々なものに追われた”前回”では、想像することすら出来なかったそれに、この女の心は躍った。
(ああ、”素敵”
そうだわ、クリスティーナの言っていた”素敵”ってこの事なんだわ)
この女らしからぬ事に、自身の妄想にうっとりした。
すると、第一王子ルードリッヒ・ハイセルが「ああそうだ」と眉をハの字にしながら言う。
「エリー、申し訳ないんだけど、約束していた王立植物園での散策、別の日にして貰ってもいい?」
「何かございましたか?」
とエリージェ・ソードルは小首をひねる。
「実は鷹狩りが出来なかったので、代わりに遠乗りをしようって話になったんだ。
でも、皆の空いている日がその日しか無くて……」
「……そうですか。
それはかまいませんが……」
と言いつつ、エリージェ・ソードルは少し訝しげに思う。
第一王子ルードリッヒ・ハイセルの対応が余りにも稚拙だったからだ。
エリージェ・ソードルの知る第一王子ルードリッヒ・ハイセルなら、植物園の見頃の花、予定を変えさせるエリージェ・ソードルの心情、遠乗りする利点等を加味して、丁寧に話を持って行くはずだった。
にもかかわらず、今、目の前の彼は余りにも無防備に話を切りだした。
だから、おかしく思ってしまったのだ。
だがそれも仕方がなかった。
”前回”の第一王子ルードリッヒ・ハイセルは成人を過ぎた十七歳なのである。
現在の十歳そこそこの彼とは経験が違いすぎた。
この女も、その辺りに思い当たり、仕方がないかと考えた。
(ただ、このお方も将来、国の王となられるのだから、今のうちにご指摘した方がよいかしら?)
などとも、思った。
?
エリージェ・ソードルはそこで妙な違和感を感じた。
同時に、何か言いしれぬ不安が胸の中を揺らした。
(何かしら?)
だが、それが何なのか、明確には分からない。
混乱するエリージェ・ソードルをそのままに、第一王子ルードリッヒ・ハイセルの話は続く。
「ねえ、思ったんだけど、王立植物園じゃなくて王宮の庭園での散策にしないかな?」
「王宮の、ですか?」
騒ぐ胸中を必死に押さえつつ、エリージェ・ソードルは合いの手を入れる。
第一王子ルードリッヒ・ハイセルはどことなく無邪気な笑みを浮かべた。
「うん、王宮の庭園も王立植物園なんかに負けないくらい沢山の花がそろっているよ。
それにほら、エリーも将来、”王宮に住む”ことになるんだから、色々、紹介したいな。
あと、母上もエリーと久しぶりにお茶をしたいとおっしゃってたし」
ドキンと心臓がはねた。
”王宮に住む”――嬉しいはずなのに、高揚するはずなのに、胸を叩くのは不安だった。
体から体温がすり抜けていくような感覚に襲われ、この女、自身の腕をさすった。
それは表情に出ていたようで、対面する第一王子ルードリッヒ・ハイセルが訝しげに「エリー? どうしたの?」と訊ねてきた。
だが、混乱するこの女は、それに応えることが出来ない。
ただ、たどり着いてはならない、”それ”に、言いしれぬ恐怖を感じた。
この方と王宮に住む……。
それは……それは……。
だって、わたくし、あの時……。
脳裏に浮かんだのは、少女の後ろ姿だった。
エリージェ・ソードルはその薄金色の頭に、火掻き棒を振り下ろした。
(違う!)
赤髪の少年を池にたたき落とした。
(違う!)
攻撃魔術で威嚇してくる少年を”黒い霧”で縛り上げ、踏みつけた。
(違う!)
黄金色の瞳の少年が、女を睨みながら言い放った。
『エリー!
これ以上すると、婚約破棄をする!』
(違う! 違う! 違う!)
生徒会室の応接室、その中央にエリージェ・ソードルは立っていた。
その周りには四人の少年が倒れている。
それを見下ろす女の顔は、満面の笑みを――。
「エリー!
しっかりして、エリー!」
目の前に黄金色の瞳が心配そうに見つめている。
いつの間にか、女は長いすから降り、床に両膝を着いていた。
そんな女を、第一王子ルードリッヒ・ハイセルは抱きしめながら必死に声をかけていた。
だが、応えられない。
エリージェ・ソードルは応えられない。
この女、目を見開き、ガクガクと震えた。
エリージェ・ソードルは貴族である。
貴族の中の貴族と言っていい。
ゆえにこの女、弱い姿を見せない。
”当たり前だ”。
貴族は守るべきものを先導し、貴族は守るべきものの誇りでなければならない。
だからこの女は、いつだって強くあり続けた。
強くあり続けなければ、ならなかった。
だが、そんな女が、今、涙をこぼした。
老執事ジン・モリタをはじめとする大切な人間が離れていった時も。
守るべき領民から罵声を浴びても。
理不尽な悪意に足を引かれても。
この女はけして、けして、流さなかった”それが”……。
頬を伝い、顎からこぼれ落ち、手を濡らした。
まるで決壊したかのように流れ続けた。
第一王子ルードリッヒ・ハイセルの胸の中で小さくなりながら、震えながら、こぼし続けた。
(あり得ない。
わたくしがこの方を害するなんて、あり得ない。
だって、この方はこの国の未来なのに……。
何で……?
死ぬなら、わたくしが死ねば良かったのに……)
「お嬢様!
いかがしましたか!?
お嬢様!」
目の前に侍女長シンディ・モリタの顔が現れた。
老婦人は心配そうにエリージェ・ソードルの顔をのぞき込んでいた。
エリージェ・ソードルは目を大きく見開く。
『背筋を伸ばしなさい。
あなたは――』
エリージェ・ソードルは奥歯を強く噛みしめた。
そして、静かに立ち上がる。
「エリー?
大丈夫?」
見上げる第一王子ルードリッヒ・ハイセルが不安そうな顔で訊ねてきた。
エリージェ・ソードルは侍女長シンディ・モリタが差し出した手ぬぐいで目元と頬を押し当てるように拭い、それを返しながら答える。
「殿下、申し訳ございません。
本日は体調が優れませんので、これで失礼します」
「あ、うん。
気にしないで!」
第一王子ルードリッヒ・ハイセルは少し安堵したように言うと、立ち上がった。
そんな彼に、エリージェ・ソードルは向き直り、深々と頭を下げた。
「あと、大変勝手ながら申し上げます。
婚約の件、こちらの都合で破棄させていただきます」
「……え?」
「お、お嬢様!?」
ポカンとする第一王子ルードリッヒ・ハイセルと絶句する侍女長シンディ・モリタをそのままに、エリージェ・ソードルは応接間を出る。
付き従う侍女ミーナ・ウォールや女騎士ジェシー・レーマーなども、状況についてこれず動揺しているようだった。
だが、エリージェ・ソードルは静かに、自室に向かって淡々と歩く。
途中、何人もの使用人とすれ違ったが、一様に困惑しながらも、ただ、頭を下げた。
だから、エリージェ・ソードルは何も言わずに歩いた。
自室の前に誰かが立っていた。
クリスティーナだった。
彼女は大きな本を抱えていて、エリージェ・ソードルに気づくと、嬉しそうに微笑んだ。
だが、すぐに目を見開く。
クリスティーナの腕から、本が滑り落ちた。
「おじょ~様?
どうしたの?」
そう言う少女の姿が、何故かぼやけた。
「おじょ~様!
どうしたの!?」
クリスティーナが駆け寄ってきて、女の体を抱きしめた。
「クリス……」
エリージェ・ソードルは膝から床に落ちた。
女騎士ジェシー・レーマーなどの声が聞こえてくる。
だが、エリージェ・ソードルはクリスティーナを抱きしめると、少女の小さな肩に目元を乗せた。
声は上げなかった。
だけど、この女は泣いた。
0
お気に入りに追加
150
あなたにおすすめの小説
聖女としてきたはずが要らないと言われてしまったため、異世界でふわふわパンを焼こうと思います!
伊桜らな
ファンタジー
家業パン屋さんで働くメルは、パンが大好き。
いきなり聖女召喚の儀やらで異世界に呼ばれちゃったのに「いらない」と言われて追い出されてしまう。どうすればいいか分からなかったとき、公爵家当主に拾われ公爵家にお世話になる。
衣食住は確保できたって思ったのに、パンが美味しくないしめちゃくちゃ硬い!!
パン好きなメルは、厨房を使いふわふわパン作りを始める。
*表紙画は月兎なつめ様に描いて頂きました。*
ー(*)のマークはRシーンがあります。ー
少しだけ展開を変えました。申し訳ありません。
ホットランキング 1位(2021.10.17)
ファンタジーランキング1位(2021.10.17)
小説ランキング 1位(2021.10.17)
ありがとうございます。読んでくださる皆様に感謝です。
劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。
【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う
たくみ
ファンタジー
圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。
アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。
ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?
それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。
自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。
このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。
それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。
※小説家になろうさんで投稿始めました
付与って最強だと思いませんか? 悪魔と呼ばれて処刑されたら原初の悪魔に転生しました。とりあえず、理想の国を創るついでに復讐しようと思います!
フウ
ファンタジー
勇者にして大国アルタイル王国が王太子ノアールの婚約者。
そんな将来を約束された一人の少女は……無実の罪でその人生にあっさりと幕を下ろした。
魔王を復活させて影で操り、全てを赦そうとした聖女様すらも手に掛けようとした公爵令嬢。
悪魔と呼ばれた少女は勇者ノアールによって捕縛され、民の前で処刑されたのだ。
全てを奪われた少女は死の間際に湧き上がるドス黒い感情のままに強く誓い、そして願う。
「たとえ何があったとしても、お前らの言う〝悪魔〟となって復讐してやる!!」
そんな少女の願いは……叶えられた。
転生者であった少女の神によって与えられた権利によって。
そうして悪魔という種族が存在しなかった世界に最古にして始まり……原初の悪魔が降り立ったーー
これは、悪魔になった一人の少女が復讐を……物理的も社会的にも、ざまぁを敢行して最強に至るまでの物語!!
※ この小説は「小説家になろう」 「カクヨム」でも公開しております。
上記サイトでは完結済みです。
上記サイトでの総PV1200万越え!!
異世界転生漫遊記
しょう
ファンタジー
ブラック企業で働いていた主人公は
体を壊し亡くなってしまった。
それを哀れんだ神の手によって
主人公は異世界に転生することに
前世の失敗を繰り返さないように
今度は自由に楽しく生きていこうと
決める
主人公が転生した世界は
魔物が闊歩する世界!
それを知った主人公は幼い頃から
努力し続け、剣と魔法を習得する!
初めての作品です!
よろしくお願いします!
感想よろしくお願いします!
願いの守護獣 チートなもふもふに転生したからには全力でペットになりたい
戌葉
ファンタジー
気付くと、もふもふに生まれ変わって、誰もいない森の雪の上に寝ていた。
人恋しさに森を出て、途中で魔物に間違われたりもしたけど、馬に助けられ騎士に保護してもらえた。正体はオレ自身でも分からないし、チートな魔法もまだ上手く使いこなせないけど、全力で可愛く頑張るのでペットとして飼ってください!
チートな魔法のせいで狙われたり、自分でも分かっていなかった正体のおかげでとんでもないことに巻き込まれちゃったりするけど、オレが目指すのはぐーたらペット生活だ!!
※「1-7」で正体が判明します。「精霊の愛し子編」や番外編、「美食の守護獣」ではすでに正体が分かっていますので、お気を付けください。
番外編「美食の守護獣 ~チートなもふもふに転生したからには全力で食い倒れたい」
「冒険者編」と「精霊の愛し子編」の間の食い倒れツアーのお話です。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/2227451/394680824
モブです。静止画の隅っこの1人なので傍観でいいよね?
紫楼
ファンタジー
5歳の時、自分が乙女ゲームの世界に転生してることに気がついた。
やり込んだゲームじゃ無いっぽいから最初は焦った。
悪役令嬢とかヒロインなんてめんどくさいから嫌〜!
でも名前が記憶にないキャラだからきっとお取り巻きとかちょい役なはず。
成長して学園に通うようになってヒロインと悪役令嬢と王子様たち逆ハーレム要員を発見!
絶対お近づきになりたくない。
気がついたんだけど、私名前すら出てなかった背景に描かれていたモブ中のモブじゃん。
普通に何もしなければモブ人生満喫出来そう〜。
ブラコンとシスコンの二人の物語。
偏った価値観の世界です。
戦闘シーン、流血描写、死の場面も出ます。
主筋は冒険者のお話では無いので戦闘シーンはあっさり、流し気味です。
ふんわり設定、見切り発車です。
カクヨム様にも掲載しています。
24話まで少し改稿、誤字修正しました。
大筋は変わってませんので読み返されなくとも大丈夫なはず。
冒険がしたい創造スキル持ちの転生者
Gai
ファンタジー
死因がわからないまま神様に異世界に転生させられた久我蒼谷。
転生した世界はファンタジー好きの者なら心が躍る剣や魔法、冒険者ギルドにドラゴンが存在する世界。
そんな世界を転生した主人公が存分に楽しんでいく物語です。
祝書籍化!!
今月の下旬にアルファポリス文庫さんから冒険がしたい創造スキル持ちの転生者が単行本になって発売されました!
本日家に実物が届きましたが・・・本当に嬉しくて涙が出そうになりました。
ゼルートやゲイル達をみことあけみ様が書いてくれました!!
是非彼らの活躍を読んで頂けると幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる