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第586話 静かなる宣戦布告
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建国宣言から3日ほど。招待客であるレイヴンは帰路に就き、コット村も殆どを日常へと戻していたが、一部名残も残っている。
村の広場に作られた特設ステージは残留が決定。野外ライブが思いの外好評で、定期的に使用したいとイレース側から打診があった為である。
解体しても、特に使用用途の決まっていない空き地。更には村の発展にも貢献するだろうとの事で、そこはあっさりと許可が出た。
他にも、レイヴンとの会談に使われた倉庫もそのままの状態。
今日、そこで行われるのはすり合わせという名の話し合い。レイヴンから得た情報を皆に周知する為、村の主要人物たちに集まってもらっているのだ。
「第1回! もふもふアニマルキングダム、軍事作戦会議ぃぃ!」
「わぁー」
俺の隣でカガリに跨り声を張り上げたのはミア。
それに拍手で答えたのはキャロのみで、他の者は反応に困ったような微妙な表情。ネストに至っては、盛大な溜息が漏れていた。
その呆れた表情から、何を言いたいのかは一目瞭然。軍事会議とは名ばかりの緊張感のなさが原因だろうことは明らかだ。
リリーはまだいいとしても、ミアにキャロはその容姿から場違い感が否めず、エルザはパッと見、頼りなさそうな老婆である。
オルクスは上半身裸にロングコート1枚の海賊スタイル。黒いトリコーンを被ったまま偉そうに椅子にふんぞり返り、アーニャは何処か上の空。
真面目そうなのは、ネストとバイスとシャーリーくらいなものである。
「不安だわ……」
そりゃ、王宮で行っているような軍事会議と比べるのは少々酷だが、似ても似つかない雰囲気に不安を募らせてしまうのもわかる気がする。
強いて言うなら座談会やお茶会と言った方が、まだ信憑性がある。
「まず始めに、言っておかなければならない事がありまして、もふもふアニマルキングダムはスタッグ王国に対して宣戦布告をしました」
「「はぁぁぁぁ!?」」
思わず立ち上がり声を上げたのは、ネストとバイス。
「どういうこと!?」
「いや、どうもこうも言った通りです。遅かれ早かれ争う事にはなるわけですし、どうせなんでついでにレイヴン公から伝えてもらおうかと」
「ついでで宣戦布告って……。するにしても、準備ってものが……」
ネストやバイスから見れば、準備不足だと思われるのかもしれないが、完璧を待っていたら時間などいくらあっても足りやしない。
2人を守るためにと行った建国だが、それは達成されたと言っていい。
だが、それで終わりではない。状況は次のフェーズへと移行しただけに過ぎないのだ。
「準備はしてきました。建国宣言だって、その一環です。それとも、相手が準備を終えるまで待てと?」
「それは……」
本来なら、王都を混乱させる程度の予定だったが、レイヴン公を味方に引き込めたのは大きなアドバンテージだ。
それを生かさない手はない。
「確かに九条は強ぇ。だが、戦争に関しちゃド素人。厳しいことを言うようだが、戦術や戦略なんかは一朝一夕で身につくような物じゃない」
バイスに言われずともわかっている。決して自分で何でもやろうとは思っていない。
餅は餅屋。俺には助けてくれる仲間が大勢いるのだ。
「もちろん理解してます。俺に出来る事と言えば、力に任せたゴリ押しくらい……。それが通じない場面も出てくるだろう事は考慮しています。なので、そっちは本業であるネストさんとバイスさんのお力を借りるつもりです」
「……任されるからには当然全力で事に当たるが、自領の防衛分を除いてウチから出せるのは1000人程度。恐らくネストんとこも同じようなもんだぞ? それで勝算はあるのか? その自信は何処からくる?」
「勝算がなければ宣戦布告などしませんよ。根拠……とまでは言いませんが、連日徹夜で専門家と協議した結果です」
「専門家ぁ?」
「今も、ここにいますよ? 黒翼騎士団の部隊長たちがね」
知将バルザックに豪炎ゲオルグ。無拍子ザラに星穹レギーナ。
その姿は俺にしか見えていないが、いずれも300年前の激動の時代を生き抜いた猛者たちである。
常勝無敗のスペシャリスト。彼らほど合戦に詳しい者は、ここにはいないだろう。
「なるほどな……。そりゃ最強の専門家だ……」
レイヴンから現状のスタッグ王国の軍事力を聞き出し、それを踏まえて幾つものパターンを精査した。
純粋な兵力で言えば相手が上。だが、質ではこちらの方が勝っている。
曰く、コット村の防衛だけなら容易。しかし、アンカース領やバルク領までを視野に入れるとなると、戦力の分散は否めず、時間経過につれこちら側が不利になるとの見解だった。
「それで? 開戦の予定は決まってるのか?」
「今すぐにでも……と、言いたいところではありますが、初陣は2週間後を予定しています。それだけあればレイヴン公も王都に到着、宣戦布告も周知されている頃でしょう。まずは、ベルモントの制圧を目指します」
現実的な王都攻略のルートは2つ。コット村からダンジョンを経由し、直接王都に攻め込むパターン。
もう1つは、西の街道からベルモントを経由し、北上する正規ルートだ。
早期決着を狙うなら前者でも構わないのだが、ベルモントからの援軍による挟撃には備えておくべきだろう。
ベルモントを制圧、軍事的拠点とすることで、コット村の守護と同時に切り離されたハーヴェストも制圧してしまおうという魂胆だ。
そうすることで、南側からの援軍を気にすることなく王都攻略に集中できるという訳である。
「まぁ、考えたのは全部バルザックさんなんですけどね……」
「でしょうね……」「だろうな……」
ネストとバイスから漏れ出た溜息は、苦笑まじりではあるものの酷く真剣なものだった。
村の広場に作られた特設ステージは残留が決定。野外ライブが思いの外好評で、定期的に使用したいとイレース側から打診があった為である。
解体しても、特に使用用途の決まっていない空き地。更には村の発展にも貢献するだろうとの事で、そこはあっさりと許可が出た。
他にも、レイヴンとの会談に使われた倉庫もそのままの状態。
今日、そこで行われるのはすり合わせという名の話し合い。レイヴンから得た情報を皆に周知する為、村の主要人物たちに集まってもらっているのだ。
「第1回! もふもふアニマルキングダム、軍事作戦会議ぃぃ!」
「わぁー」
俺の隣でカガリに跨り声を張り上げたのはミア。
それに拍手で答えたのはキャロのみで、他の者は反応に困ったような微妙な表情。ネストに至っては、盛大な溜息が漏れていた。
その呆れた表情から、何を言いたいのかは一目瞭然。軍事会議とは名ばかりの緊張感のなさが原因だろうことは明らかだ。
リリーはまだいいとしても、ミアにキャロはその容姿から場違い感が否めず、エルザはパッと見、頼りなさそうな老婆である。
オルクスは上半身裸にロングコート1枚の海賊スタイル。黒いトリコーンを被ったまま偉そうに椅子にふんぞり返り、アーニャは何処か上の空。
真面目そうなのは、ネストとバイスとシャーリーくらいなものである。
「不安だわ……」
そりゃ、王宮で行っているような軍事会議と比べるのは少々酷だが、似ても似つかない雰囲気に不安を募らせてしまうのもわかる気がする。
強いて言うなら座談会やお茶会と言った方が、まだ信憑性がある。
「まず始めに、言っておかなければならない事がありまして、もふもふアニマルキングダムはスタッグ王国に対して宣戦布告をしました」
「「はぁぁぁぁ!?」」
思わず立ち上がり声を上げたのは、ネストとバイス。
「どういうこと!?」
「いや、どうもこうも言った通りです。遅かれ早かれ争う事にはなるわけですし、どうせなんでついでにレイヴン公から伝えてもらおうかと」
「ついでで宣戦布告って……。するにしても、準備ってものが……」
ネストやバイスから見れば、準備不足だと思われるのかもしれないが、完璧を待っていたら時間などいくらあっても足りやしない。
2人を守るためにと行った建国だが、それは達成されたと言っていい。
だが、それで終わりではない。状況は次のフェーズへと移行しただけに過ぎないのだ。
「準備はしてきました。建国宣言だって、その一環です。それとも、相手が準備を終えるまで待てと?」
「それは……」
本来なら、王都を混乱させる程度の予定だったが、レイヴン公を味方に引き込めたのは大きなアドバンテージだ。
それを生かさない手はない。
「確かに九条は強ぇ。だが、戦争に関しちゃド素人。厳しいことを言うようだが、戦術や戦略なんかは一朝一夕で身につくような物じゃない」
バイスに言われずともわかっている。決して自分で何でもやろうとは思っていない。
餅は餅屋。俺には助けてくれる仲間が大勢いるのだ。
「もちろん理解してます。俺に出来る事と言えば、力に任せたゴリ押しくらい……。それが通じない場面も出てくるだろう事は考慮しています。なので、そっちは本業であるネストさんとバイスさんのお力を借りるつもりです」
「……任されるからには当然全力で事に当たるが、自領の防衛分を除いてウチから出せるのは1000人程度。恐らくネストんとこも同じようなもんだぞ? それで勝算はあるのか? その自信は何処からくる?」
「勝算がなければ宣戦布告などしませんよ。根拠……とまでは言いませんが、連日徹夜で専門家と協議した結果です」
「専門家ぁ?」
「今も、ここにいますよ? 黒翼騎士団の部隊長たちがね」
知将バルザックに豪炎ゲオルグ。無拍子ザラに星穹レギーナ。
その姿は俺にしか見えていないが、いずれも300年前の激動の時代を生き抜いた猛者たちである。
常勝無敗のスペシャリスト。彼らほど合戦に詳しい者は、ここにはいないだろう。
「なるほどな……。そりゃ最強の専門家だ……」
レイヴンから現状のスタッグ王国の軍事力を聞き出し、それを踏まえて幾つものパターンを精査した。
純粋な兵力で言えば相手が上。だが、質ではこちらの方が勝っている。
曰く、コット村の防衛だけなら容易。しかし、アンカース領やバルク領までを視野に入れるとなると、戦力の分散は否めず、時間経過につれこちら側が不利になるとの見解だった。
「それで? 開戦の予定は決まってるのか?」
「今すぐにでも……と、言いたいところではありますが、初陣は2週間後を予定しています。それだけあればレイヴン公も王都に到着、宣戦布告も周知されている頃でしょう。まずは、ベルモントの制圧を目指します」
現実的な王都攻略のルートは2つ。コット村からダンジョンを経由し、直接王都に攻め込むパターン。
もう1つは、西の街道からベルモントを経由し、北上する正規ルートだ。
早期決着を狙うなら前者でも構わないのだが、ベルモントからの援軍による挟撃には備えておくべきだろう。
ベルモントを制圧、軍事的拠点とすることで、コット村の守護と同時に切り離されたハーヴェストも制圧してしまおうという魂胆だ。
そうすることで、南側からの援軍を気にすることなく王都攻略に集中できるという訳である。
「まぁ、考えたのは全部バルザックさんなんですけどね……」
「でしょうね……」「だろうな……」
ネストとバイスから漏れ出た溜息は、苦笑まじりではあるものの酷く真剣なものだった。
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