十二死

知人さん

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夫婦

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元は、渉の相棒との過去を聞いた後、再び質問
していた。
「奥さんは、どんな人なんですか?」
「お前、それ誰に聞いた」
「平野刑事からです」
「あの人、おしゃべりだなー」
「で、奥さんって、どんな人なんですか?」
「妻は....俺がこの世で1番愛してる人だ」
「どんな人か気になります!、お子さんはいるん
ですか?」
「今、妻のお腹の中にいる」
「名前とか決めてますか?」
「一応、候補はある」
「教えてください!」
気になって聞いた直後、署内放送が流れた。
『西区2丁目と東区1丁目で干支が出現しました』
渉と元は急いで現場に向かった。西区方面に来て
現場を確認すると檻が見えて、中には大型犬
4匹と子供の遺体があった。元は
「子供まで」
そう呟き、渉が
「忠犬が調子乗るなよ」
怒りの表情で呟いた。そしてスマホが鳴り、
電話に出ると
『松田、こっちの現場確認は終わった。ウサギ
だった』
「こちらは、犬でした」
『遺体処理が済んだら戻ってこい』
「了解」
電話を切った。その後、渉は元と署に戻り、
事件記録を書いてるとスマホが鳴って電話に出た。
『松田さん!、奥さんが危険な状態です!』
「え!?、莉奈が!?」
『もし来れるなら病院に来てください!』
「すぐに向かいます!」
そう伝え、電話を切って上司に報告して署を出た。
急いで車で向かい、病室に入ると黒髪ロングの
女性が苦しんでいて、渉は駆け寄って
「莉奈!、大丈夫か!?」
焦りながら声をかけて、女性は
「渉、君」
名を呼んで渉は
「どうした!」
そう言い、手を握った。女性は
「この子を、お願いっ」
お腹を抑えて言うと渉は
「何言ってる、莉奈は絶対助かる!」
そう言い、女性は
「でも、私、まだ、死にたくない!」
そう言うと渉は
「大丈夫だ。莉奈もお腹の子も死なない」
優しい眼差しの強い口調で言い、医師が
「手術室に運びます。旦那さんは、外でお待ち
ください」
そう言って、女性は手術室に運ばれた。数時間後、
女性はベット目を閉じて出てきて渉は
「先生!、莉奈は!」
医師に焦りながら聞くと医師は
「今は奥様もお子さんも大丈夫です。ですが、
次また再発したら」
暗い表情で言い、渉は
「治せないんですか!」
強い口調で聞くと医師は
「残念ながら、今のところは」
そう言い、どこかに行った。渉は拳を握り締めて
「どうして莉奈が....」
悔しんだ。

翌日、女性が病室で目を覚ますと渉が
「莉奈!、大丈夫か?」
不安そうに聞き、女性は
「うん。今はもう平気だよ」
そう言うと渉は
「そうか」
一言発した。女性が
「そういえば、子供の名前、考えた?」
そう聞き、渉が
「ああ。決まった」
そう言うと女性は
「何々!、教えて!」
子供のような眼差しで聞き、渉は
「男なら新(あらた)、女なら莉緒(りお)」
教えると女性は
「とっても良いね!、両方とも賛成!」
笑顔で言い、渉は
「まだ性別は、分かってないか?」
そう聞くと
「松田さんのご家族ですか?」
看護師の声が聞こえた。渉は病室を出て扉の前を
見ると元がいて、渉は
「神谷!、お前何してる」
質問すると元は
「すいません、気になっちゃって」
そう言い、渉は
「お前、刑事が盗み聞きしてたのかぁ?」
呆れて言うと元は
「すいません、今すぐ帰ります」
そう言い、背を向けると渉が
「待て神谷、せっかくだから妻に顔見せていけ」
そう言った。元は振り返って
「え!?、良いんですか!?」
驚いた表情で言うと渉は
「ああ。入れ」
そう言い、2人で病室に入った。女性が
「渉君、その人....」
そう言うと元は近寄り、
「初めまして。神谷 元です」
自己紹介と挨拶をして、女性は
「初めまして、松田 莉奈(まつだりな)です」
同じように自己紹介と挨拶した。元が
「いつも渉さんには、お世話になってます」
そう言うと莉奈は
「いえいえ、こちらこそ。いつも夫がお世話に
なってます」
そう言い、元は
「それじゃぁ、俺はこれで。」
そう言って、病室を出た。莉奈は
「真面目な相棒さんだね」
そう言い、渉は
「ああ。神谷は良いバディだ」
そう言うと莉奈は静かに微笑んだ。

この日、渉は一日中莉奈の傍にいて、翌日に
自県へ戻り、署に向かった。部署に入ると元が
「松田さん、おはようございます。大丈夫
でしたか?」
そう言うと渉は
「ああ。もう大丈夫だ」
そう言い、元が
「松田さん、ちょっと屋上きてくれますか」
真剣な表情で言うと渉は
「ああ」
一言発して、2人で屋上に向かった。屋上から
外を眺めながら渉が
「で、何か聞きたいのか?」
そう聞くと元は
「莉奈さんって、何の病気なんですか」
そう聞き、渉は
「莉奈は.....大腸がんだ」
病名を教えた。元が
「助かるんですよね?」
不安な表情で聞くと渉は
「医者は、最善を尽くしてる。でも、難しくて
次再発したら」
暗い表情で言い、元は
「お腹の子は?」
そう聞くと渉は
「莉奈は、絶対産みたいらしい。俺も、もちろん
子供の顔を見たいけど、莉奈の身体が心配で」
そう言い、元は
「新君と莉緒ちゃん、でしたっけ?」
そう聞くと渉は
「それも盗み聞きしてたのか」
呆れた声で言い、元は
「すみません。でも、きっと大丈夫ですよ!」
励した直後、署内放送が流れてきた。
『南区3か所と西区1丁目で干支が出現しました』
渉と元は急いで車に乗り、現場に向かった。
出現した干支は、猿、ウサギ、猪、竜で、
負傷者は0名、死亡者は12名。渉と元は
またしても間に合わなくて助けられず、干支も
捕まえられないまま、1年が経過した。
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