十二死

知人さん

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「干支が、党情警察署に出頭した」
あり得ない言葉に、渉と元は困惑と怒りで理解が
追いつかないまま署に戻った。

警察署に戻り、渉と元は取調室に向かい、扉を
開けた。取調室のイスには、ネズミの仮面マスク
を着けた人物が大人しく座っていた。渉は
「何が目的だ、なぜ出頭した」
質問して、ネズミは
「ただ自主しに来ただけですよ」
そう言うと渉は
「嘘つくなよ、お前らみたいなのが、自主だけ
するために来る訳無いだろ。正直に言え、お前は
何が目的で自主しに来た」
強い目力と重い声で聞き、ネズミは
「僕たち干支は、今まで数え切れない人数の人を
殺してきた。でも殺しに飽きてきて、そろそろ
幕締めと思って、出頭した。きっと他の干支も
時期に来るんじゃないですか?」
そう告げると仮面マスクをとった。すると
凛々しい若い男性の顔が見えた。渉は
「お前がネズミの正体か」
そう聞くとネズミは
「はい」
そう言い、渉は
「なぜ自主なんかした。これも何かの罠か?」
怪しんで聞くとネズミは
「いえ。もう悪足掻きはしません、もちろん
逃げも隠れも。さぁ、逮捕するんでしょ?」
煽るように言い、元が
「ふざけんな。お前のせいで何人が死んだと
思ってんだよ!、お前は連続殺人鬼の1人だ。
それを自覚してるのか?」
そう言うとネズミは
「僕は今まで自分の好きな事をしてきただけです。
それの何が悪いのですか?、それに自覚なら
当然ありますよ。だって僕は、干支なのだからぁ」
舐めた口調で言い、元が
「この野郎っ」
怒り口調で言うと拳銃をネズミに向けて
「お前みたいなの生きてる価値、無い。死んで
償え!」
そう言い、引き金を引きかけた時、渉が
「やめろ!、神谷!!」
怒鳴った。元は
「どうしてですか!?、松田さん!」
そう聞き、渉は
「これは罠だ。確実に何か仕掛けてる」
そう言うとスマホが鳴り、電話に出ると
『松田!、羊の予告だ、今すぐ戻れ』
「了解」
そう言って電話を切り、渉は
「神谷、戻るぞ。羊の予告だ」
そう言い、扉を開けようとしたが、開かなかった。
渉は
(まさか)
そう思うとネズミが
「気づいてくれたんですか?、さすが松田刑事」
褒めて、渉は
「ドアに細工したな。今回は羊と組んだのか?」
そう聞くとネズミは
「残り1時間後に多勢が死ぬ。そして30分後に
僕らは死ぬ」
そう言い、元が
「どうゆう事だ」
そう聞くと渉は
「お前まさかっ」
焦った声で言い、ネズミが座ってるイスの下を
見ると爆弾があった。渉は
「自分ごと、俺たちを道連れにする気か」
そう言い、ネズミは
「ご名答です」
そう言って拍手した。元が
「じゃぁ、すぐに外さなきゃ!」
そう言うと渉が
「俺たちは爆弾処理班じゃないし、それに、
この爆弾おそらく少しの振動で爆破する。だから
こいつを立たせたら終わる上に、扉も開かない。
これは、干支2匹のイタズラだ」
そう言い、元は
「そういえば、羊って」
そう言うと渉が
「羊の殺人法は、大量殺人だ。普段、大人しくて
目撃は少ないけど、いざ動き出したら本物の羊の
特徴を活かして、群れが好きだから人が多勢
集まる場所を狙って大量の爆弾を仕掛ける。
だが、なぜかそれを警察に予告してくる」
説明して、元は
「予告?、そんな事他の干支はしないのに」
そう呟くと渉は
「どっちにせよ、多勢殺させる訳にはいかない。
ここから出て、すぐに向かうぞ」
そう言い、元は
「はい!」
了解するとネズミが
「鳥がおっしゃったように、頼りになる刑事さん
ですね~」
不気味な笑顔で言い、渉が
「お前さっき俺の事を松田刑事って言ったよな。
鳥から教えてもらったのか?」
そう言うとネズミは
「さぁ~?」
そう言い、渉は
「答えろ。鳥は何をしている、なぜあいつだけ
目撃例が無いんだ」
質問するとネズミは
「もう最期ですから教えましょう。鳥は、自分で
殺しはしません、僕らが殺して身体の部位を
持ち帰り、鳥が闇組織に売るのです。闇のネット
など駆使して、とても稼いでいますよ」
教えて、渉は
「だから鳥の印がついた遺体は、いくつか身体の
部位が無いのか」
納得して、
「でも、人を売るなんて、鳥は随分腐った奴だな」
怒りの表情で言うとネズミは
「だから鳥は目撃例が0なんです。しかも、
稼いだ金は僕たちにも分けてくれるんです。なので
腐ってなどいません、とても優しい方です」
そう言い、渉は
「いや、1番狂ってんだよ!!」
怒声で叫び、扉を無理やり蹴り開けた。渉が
「俺たち警察は、全ての干支を捕まえる」
睨んで言うと元が
「急いで向かいましょう!、松田さん」
そう言い、渉は
「まだ、あいつの爆弾をとってないだろ」
そう言うとネズミは立ち上がり、
「嬉しいお言葉ですが、あなたたちのような
負け猫には、干支は終わりません」
そう言い、爆弾が反応して
『ピーピーピーピピピ』
不吉な音が鳴り、渉と元は走って取調室を出て
ネズミは、逃げずに爆発に巻き込まれて
亡くなった。元が
「嘘だろ、あいつ。自殺!?」
そう言うと渉が
「これが、ネズミなりの償いか。こんな償いで
許されると思うなよ、お前ら干支は自殺だけで
償わせねぇ」
怒り声で言い、2人で現場に向かった。
巨大ショッピングモールに着くと警察官や刑事が
多勢の人を避難させていた。だが、避難させても
大規模で巨大すぎるショッピングモールだから
もし、本当に爆発すれば周りに被害が出て
街中が悲しみと苦しみで溢れかえってしまう。
渉と元も刑事たちと協力して爆弾を探したが、
見つからず、元が
「まずいですよ、松田さん。どこにもありません」
焦って言うと渉は
「羊の爆弾は、いつも見つからない。しかも
今回は若草タウンだから爆破すると被害が
デカすぎる。急いで探すぞ」
そう言い、全力で探索した。その後も爆弾を
見つけられずにいる中、元が渉に駆け寄り、
「松田さん、そろそろ逃げなきゃ俺たちも爆破に
巻き込まれます」
焦るように言うと渉は
「ここで逃げたら、この建物と周りの人たちが
犠牲になるだろ。俺たち警察は死んでも
見つけなきゃいけないんだ」
そう言い、元が
「でも、もし間に合わなかったら奥さんや
和紀さんが悲しみます」
暗い表情で言うと渉が
「お前、それ誰から聞いた」
そう聞き、元は
「他の先輩刑事たちに」
そう言うと渉は
(達貴さんか、安堂か。余計な事を)
そう思い、
「とりあえず早く見つけるぞ」
指示すると嫌な視線を感じて右方面を見た。
そこには、羊の仮面マスクを着けた人物が立って
いて、渉が
「羊!?」
驚いて言うと元も振り向いて確認した。羊は
「やっと気づいた?」
上から目線の言い方で、渉は
「爆弾はどこだ」
質問した。羊は
「そんなの教える訳ないでしょ」
そう言い、渉が
「今すぐ答えろ。爆弾はどこだ」
怒りを抑えるような口調で言うと羊は
「はぁ...」
ため息をついて、
「1階に7つ、2階に3つ、3階に3つ、4階に
5つ。そしてスイッチが、これ」
そう言い、携帯型の爆破スイッチを取り出した。
渉が
「今すぐそれを渡せ」
そう言うと羊は
「渡す訳ないでしょ」
そう言い、渉が
「分かった。神谷!!」
元の名を叫ぶと羊の背後に回り込んでいた元が
取り押さえようとした時、羊は爆破スイッチを
頭上に投げて元の腹部に肘突きして腕を掴んで
背負投げをして、落ちてきた爆破スイッチを
片手でキャッチした。羊は
「そこそこ早いけど気配が全く消せてなかった」
そう言い、渉が
(そのセリフ、どこかで)
そう思うと
【力はそこそこあるけど気配が消せてないわよ】
ある言葉を思い出した。渉は
「安堂」
女性刑事の名を口にした。羊は
「やっぱり同期だと分かっちゃうか」
呆れた口調で言い、仮面マスクをとった。顔を
見た渉と元は言葉が出なかった。羊の正体は
紗良だった。元が立ち上がって
「安堂、刑事?」
疑問口調で言い、紗良は
「覚えてくれてたのね、神谷」
そう言うと渉が
「どうゆう事だ.....何の冗談だ。安堂が、羊?」
焦った表情で言い、紗良は
「冗談じゃないわよ。私は正真正銘、羊よ」
堂々と言って、渉は
「何言ってる。お前は、俺の同期で信頼できる
刑事だろ」
そう言うと紗良は
「そう。私は刑事であり、干支なの」
そう言い、渉は
「どうしてだ。何でお前が干支なんだ」
疑うように聞くと紗良は
「刑事は人を守る。でも、そんな刑事の立場で
ありながら逆に人を殺すのは、快感なの。
助けてあげた人は、いつか私たち干支に殺される
のに感謝してくれて、バカを見てるみたいで
楽しいのよ」
上機嫌に言い、渉は
「お前、それ本気で言ってるのか?」
そう聞くと紗良は
「もちろん」
そう言った瞬間、渉と元が
「ふざけんな!!」
怒鳴り、拳銃を紗良に向けて構えた。紗良は
「松田、あんた新しい相棒と息ぴったりじゃない。
良いわよ、撃ちたいなら撃って」
そう言うと渉は
「安堂、自主してくれ。俺はお前を撃ちたくない。
罪を償ってくれ、頼む」
そう頼み、紗良は
「松田。あんたは、昔からウザい程お人好しで
優しいよね。こんな状況でもそんな事
言えるなんて」
そう言うと元が
「俺からもお願いします、安堂刑事。俺は
松田さんが信頼してる人を撃ちたくない。だから
どうか自主してください」
そう頼んで、紗良が
「あなたまで。刑事のくせに、犯罪者を庇ったり
説得したり、無意味な事して何になるの?、
だから和紀は死んだのよ!」
怒り声で言うと渉は何も言い返せず、顔を下げて
足元しか見えなくて、紗良が
「松田」
名を呼んだ。渉が顔を上げると紗良は
「和紀は死んだ。でも次の相棒は、守って
あげなさいよ」
そう告げて、渉は
「安堂、お前....」
そう言うと紗良は爆破スイッチを押した。すると
ショッピングモールは爆破しなかったが、紗良は
爆発死した。渉と元は爆風で吹っ飛ばされて、
数分後、意識を戻して、渉は
「安堂!!」
名を呼んで駆け寄り、人としての姿は失った紗良
らしき物に
「安堂!!、安堂!!」
必死に名を呼びかけて
「安堂ーーーー!!」
悔し声で名を叫んだ。その後、紗良の遺体は
運ばれて、渉と元は重い足取りで署に戻った。

この日は悲劇の連続で、警察側は安堂 紗良という
優秀な女性刑事を1人失い、干支側は羊という
有能な仲間を1匹失った。

      『干支、残り10匹』
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