1 / 3
はるくんとの出会い
しおりを挟む
私は、大学で歴史の研究をしている。
主に日中戦争、太平洋戦争の辺りだ。
子供の頃からこの時代の歴史に興味があり、
祖父母や近所のおじいさんやおばあさんに話を聞いたりする。
1996年7月6日。
今日は、広島県の原爆資料館に来ている。
小学校の修学旅行で1度行き、
それから何度か訪れている。
原爆資料館と言うと、この人形だろう。
広島出身の方々が声を揃えてこう言う。
『実際はこんな物じゃない』
『この人形は綺麗な方だ』
それはそうだよな…と、私も思う。
◇
資料館を出た私は、原爆の子の像を見ていた。
「ん?」
何だろう…。何度も見ている像なのに、
違和感が…
「うわぁ!!」
目を開けていられない程の強い風が吹いて、
私は尻もちをついた。
◇
「いてて…」
「大丈夫?」
目を開けると、小学校低学年ぐらいの男の子が私を見つめていた。
服装が、現代と違う様な…。
「びっくりしたわ。
お姉ちゃん、突然現れたんじゃもん。
どこから来たん?」
「え…。広島市だけど…」
「いや、ここも広島市じゃけど」
私は立ち上がり、周りを見渡した。
「!!」
原爆ドームが…!!
周りも全然違う!!
「ね、ねぇ、今って何年の何月何日!?」
「えっと、1945年の7月6日じゃけど…」
「え、それ…本当?」
「うそをついてどうするんじゃ?」
「そ、そうだよね…ごめん…。」
男の子が嘘をついている様には思えない。
「それより、おねーちゃん怪我しとらん?」
「え?…あぁ、してないよ。大丈夫。」
「うで、すりむいとるよ」
これぐらい大したことない!
と言ったけど、男の子に腕を引っ張られて、恐らくこの子の家であろう場所へ連れて行かれた。
「かーちゃーん!!けがなおせるものなーいー?」
「晴彦!!まーたやんちゃして!!」
「ちがうちがう!!おれじゃなくて、そこの姉ちゃん!!」
「え?」
はるひこくん…って言うんだ。
晴彦くんのお母さんは、私を見て固まった。
「こがぁな人、この村におったかのぉ?
服装とかも、ぶち綺麗じゃが。」
「あ、あの…!明らかに怪しいですよね!私!!失礼します!!」
「ちぃと待って。怪我の手当ばっかしでもして行きんさい。」
◇
「あ…ありがとうございます…」
随分丁寧に手当をしてくれた。
部屋をチラッと見渡すと、確かにカレンダーには“1945年”と書かれていた。
「あんた、どこから来たん?」
「あ…広島市です。出身は静岡なんですけど。」
「そう…。お名前は?」
「小篠凛(こしのりん)です。」
「てあて終わったー!?」
お母さんとお話していると、晴彦くんの声が聞こえた。
「終わったよ。晴彦、凛お姉ちゃんに遊んでもらいんさい。」
「りんちゃんって名前なん?」
「うん。」
「おれは晴彦!!“はる”ってよんで!」
はるくんは私の手を掴んで、勢い良く外に出た。
戦時中の広島市をよく見て回りたかった気もしたけど、
はるくんとそのお友達と遊ぶのは本当に楽しかった。
いつの時代も、子供は可愛い...。
◇
「凛さん、お家は遠いん?」
「遠い...と言うか、帰り方が分からない...と言うか...。」
この時代には。
「そう。じゃあ、帰り方が分かるまで家に泊まる?」
「え...でも...」
食料が不足しているのに、
お世話になるのは申し訳ない。
と、1度断りを入れましたが
「おれ、お姉ちゃんとまたあそびたい!!
とまっていきなよー!!」
はるくんにそう言われ、私は有難くこのお家にお世話になる事になった。
◇
はるくんが学校に行っている間、
私ははるくんのお母さんと一緒に家事をします。
「ふぅ...一つ一つが大変...」
家にある家電は、ボタンを押せば良い物が多いので、中々の重労働。
「凛ちゃん、ありがとうねぇ。」
「そんな!お世話になるんですから、これぐらい当然ですよ!!」
そろそろはるくんが帰ってくる時間だ。
「ただいま!!」
「おかえりなさい!!」
「りんちゃん、あそびに行こう!!」
はるくんに手を引かれ、一緒に遊びに行く。
そんな日々が続きました。
主に日中戦争、太平洋戦争の辺りだ。
子供の頃からこの時代の歴史に興味があり、
祖父母や近所のおじいさんやおばあさんに話を聞いたりする。
1996年7月6日。
今日は、広島県の原爆資料館に来ている。
小学校の修学旅行で1度行き、
それから何度か訪れている。
原爆資料館と言うと、この人形だろう。
広島出身の方々が声を揃えてこう言う。
『実際はこんな物じゃない』
『この人形は綺麗な方だ』
それはそうだよな…と、私も思う。
◇
資料館を出た私は、原爆の子の像を見ていた。
「ん?」
何だろう…。何度も見ている像なのに、
違和感が…
「うわぁ!!」
目を開けていられない程の強い風が吹いて、
私は尻もちをついた。
◇
「いてて…」
「大丈夫?」
目を開けると、小学校低学年ぐらいの男の子が私を見つめていた。
服装が、現代と違う様な…。
「びっくりしたわ。
お姉ちゃん、突然現れたんじゃもん。
どこから来たん?」
「え…。広島市だけど…」
「いや、ここも広島市じゃけど」
私は立ち上がり、周りを見渡した。
「!!」
原爆ドームが…!!
周りも全然違う!!
「ね、ねぇ、今って何年の何月何日!?」
「えっと、1945年の7月6日じゃけど…」
「え、それ…本当?」
「うそをついてどうするんじゃ?」
「そ、そうだよね…ごめん…。」
男の子が嘘をついている様には思えない。
「それより、おねーちゃん怪我しとらん?」
「え?…あぁ、してないよ。大丈夫。」
「うで、すりむいとるよ」
これぐらい大したことない!
と言ったけど、男の子に腕を引っ張られて、恐らくこの子の家であろう場所へ連れて行かれた。
「かーちゃーん!!けがなおせるものなーいー?」
「晴彦!!まーたやんちゃして!!」
「ちがうちがう!!おれじゃなくて、そこの姉ちゃん!!」
「え?」
はるひこくん…って言うんだ。
晴彦くんのお母さんは、私を見て固まった。
「こがぁな人、この村におったかのぉ?
服装とかも、ぶち綺麗じゃが。」
「あ、あの…!明らかに怪しいですよね!私!!失礼します!!」
「ちぃと待って。怪我の手当ばっかしでもして行きんさい。」
◇
「あ…ありがとうございます…」
随分丁寧に手当をしてくれた。
部屋をチラッと見渡すと、確かにカレンダーには“1945年”と書かれていた。
「あんた、どこから来たん?」
「あ…広島市です。出身は静岡なんですけど。」
「そう…。お名前は?」
「小篠凛(こしのりん)です。」
「てあて終わったー!?」
お母さんとお話していると、晴彦くんの声が聞こえた。
「終わったよ。晴彦、凛お姉ちゃんに遊んでもらいんさい。」
「りんちゃんって名前なん?」
「うん。」
「おれは晴彦!!“はる”ってよんで!」
はるくんは私の手を掴んで、勢い良く外に出た。
戦時中の広島市をよく見て回りたかった気もしたけど、
はるくんとそのお友達と遊ぶのは本当に楽しかった。
いつの時代も、子供は可愛い...。
◇
「凛さん、お家は遠いん?」
「遠い...と言うか、帰り方が分からない...と言うか...。」
この時代には。
「そう。じゃあ、帰り方が分かるまで家に泊まる?」
「え...でも...」
食料が不足しているのに、
お世話になるのは申し訳ない。
と、1度断りを入れましたが
「おれ、お姉ちゃんとまたあそびたい!!
とまっていきなよー!!」
はるくんにそう言われ、私は有難くこのお家にお世話になる事になった。
◇
はるくんが学校に行っている間、
私ははるくんのお母さんと一緒に家事をします。
「ふぅ...一つ一つが大変...」
家にある家電は、ボタンを押せば良い物が多いので、中々の重労働。
「凛ちゃん、ありがとうねぇ。」
「そんな!お世話になるんですから、これぐらい当然ですよ!!」
そろそろはるくんが帰ってくる時間だ。
「ただいま!!」
「おかえりなさい!!」
「りんちゃん、あそびに行こう!!」
はるくんに手を引かれ、一緒に遊びに行く。
そんな日々が続きました。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る
家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。
しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。
仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。
そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。
薬屋の一人娘、理不尽に婚約破棄されるも……
四季
恋愛
薬屋の一人娘エアリー・エメラルドは新興領地持ちの家の息子であるカイエル・トパーヅと婚約した。
しかし今、カイエルの心は、エアリーには向いておらず……。
婚約解消は君の方から
みなせ
恋愛
私、リオンは“真実の愛”を見つけてしまった。
しかし、私には産まれた時からの婚約者・ミアがいる。
私が愛するカレンに嫌がらせをするミアに、
嫌がらせをやめるよう呼び出したのに……
どうしてこうなったんだろう?
2020.2.17より、カレンの話を始めました。
小説家になろうさんにも掲載しています。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
【完結】愛も信頼も壊れて消えた
miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」
王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。
無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。
だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。
婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。
私は彼の事が好きだった。
優しい人だと思っていた。
だけど───。
彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。
※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる