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学生時代

羊羹

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「あれ?紗和ちゃん帰ってきたん?」

深々と頭を下げるおかみさんにどうしようか…
と思っていたら、米田くんが帰ってきました。

「浩二くん!!」

紗和さんは、米田くんの元へ駆け寄りました。

「浩二くん、めっちゃ久し振り!!
背ぇ大きくなったなぁ…!!」

米田くんの頭を撫でる紗和さん。

「や、辞めぇや…」
「米田くんと紗和さんは幼なじみかなんかなん?」
「幼なじみと言うか、きょうだいみたいなものかな?」
「まぁ、せやな。俺、両親おらんから、 
小さい頃からおばちゃんと紗和ちゃんには
お世話になってる。」
「そっか。」

彼は幼い頃、父親を戦争で、母親を病気で亡くしたのだそう。

米田くんの母親とおかみさんが親友同士だったとの事で、おかみさんが米田くんの面倒を見たのです。

「天涯孤独になってしもうたけど、
おばちゃんや紗和ちゃんのおかげで全然寂しくなかったで!!」
「皆、はよ中にお入り。お茶煎れたるわ。」
「おー!ありがとう、おばちゃん。」
「ありがとうございます。」
「東京の元職場の仲間から、
お土産を頂いたの。良かったら皆で食べましょ。」



この時代、食料…特に甘味は貴重な物でした。

「あっまい…久し振りに食べたわ…」
「ほんとにね!」

紗和さんが職場の仲間から貰ったお土産…

それは羊羹でした。

「あの、紗和さん。
こんなに良いものを頂いて、
本当に良かったの…?」
「うん!皆で食べた方が楽しいし!」
「!!」

紗和さんがにこっと笑いかけてくれた時、私の胸の高鳴りを感じました。

この気持ちが何なのか…。

それを理解するのに、然程時間はかかりませんでした。

「昴さん」
「はい?」
「もう1個あげる!」
「え、そんな!紗和さんが貰って来たんだから…」
「私の分まだあるし!ほらっ」
「昴がいらんって言うんやったら、俺が貰うで~!」
「紗和さんありがとう!!頂きます!!」
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