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14話

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「……録音、というのは少し違う。対象者の声を石の中に閉じ込め、後で聞くことができる魔法だ。それを……お前に渡した石にかけた」
 
 深夜遅く、俺はノースと向かい合って椅子に座っていた。机の上には件の魔晶石がある。ノースは拗ねた表情を浮かべている。
 
「なんでそんなことしたんですか?」
 
「それは……」
 
 ノースは黙ってしまう。俺は小さくため息を吐いた。別に怒りたかったわけではない。ノースの行動の理由を知りたかっただけだ。
 
「……いつからこんなことを」
 
「……少し、前から」
 
 俺は、「そうですか」と呟いた。ノースはこれ以上何も言いたくないんだろうなっていうのは分かる。でも、だからってこのまま「はいそうですかおやすみなさい」と言うわけにはいかない。無言でいるノースに、俺はもう覚悟は決まってるんだと思った。
 
「……聞いていたから分かると思うけど、俺リディアさんに異世界から来たこと伝えたんです」
 
 ノースは、「そうらしいな」と言った。いいかノース、もうあなたに逃げ道はないんだぞ。
 
「それで、いろいろ教えてもらったんです。この世界のこととか、魔法使いのこととか、ノースの、こととか……」
 
 他の人から教えてもらうなんて、卑怯だとは思ったけど本人が教えてくれないんだ。ノースのことを知るには誰かに頼るしかないと思った。
 
「『トパーズ』の国の王族、なんですよね。ノースは」
 
 リディアと話した時間はそう長くはなかった。途中でマディナたちと合流してしまったから。それでも、いくつかのことを教えてもらった。魔力を持って生まれた人間が魔法使いになるとか、いろいろ偏見とか問題もあるとか……正直、なんで『サファイア』の国にいる魔法使いなのに、『トパーズ』に詳しいんだろうとは思った。でも、『トパーズ』の王族であったなら納得だ。
 
「俺には、分かりません。王族で、しかも魔法使いって、いろいろ大変だろうなって思うだけで……でも、そのいろいろ大変だろうなって思うだけじゃ、結局はノースのことを理解出来ないままだって気が付きました。本当は、ノースが『トパーズ』に詳しいの変だなって思ってたんです。でも、あなたに尋ねることを諦めて、気のせいだって思うことにして、流して、リディアさんから教えてもらって、ああ王族だったから詳しかったんだってようやく気が付きました。今だって同じです。あなたの行為の理由を、俺なりに考えて納得することはできる。けれどもそれじゃあ、本当に理解できたことにならないんです」
 
 石にかけた魔法の説明を聞いたとき、まるで見張られてるみたいだと思った。ノースは俺を警戒してたのかな、全然信頼されてなかったんだ。そう思うと悲しかった。でもこれは俺の考えた予想でしかない。隠したがっていることを暴くのは悪いことなんだろうけど、「きっとこうなんだ」と考え続けるのも不毛だ。俺は前に座っているノースを見た。
 
「ちゃんと教えてください。ノース、なんで魔晶石に魔法をかけたんですか」
 
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