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5話
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「ノース・アプリコットの使いです。魔法薬の効果の確認に来ました」
ノース手作りの地図を見ながらしばらく歩き、無事に俺は目的地である村に到着することができた。俺を旅人か何かだろうと思ったんだろう、近づいてきた女性の村人に俺は、自分がノースの代わりに来たことを伝える。それを聞くと、その人は驚いて目を丸くさせ、「そ、村長の元に案内します」と言い、俺は村の奥にある大きな家へと連れてこられた。そこでも、自分がノースの代わりに来たと話し、またさっきと同じように驚かれた。
「えっと、何か……?」
「いえ、疑うわけではないのですが、本当にあなたがノースさんの使いの方なのかこちらも判別ができず……」
村の人と、村長さんが俺を見ながらこそこそと話している。居心地の悪さを感じて俺が尋ねると、村長さんは恐る恐ると言った風にそう話した。
「俺がノースの使いである証拠……」
地図でも見せるか、いや、あれが証拠になるのかな。ノースは意外にも可愛い絵を描くようで、渡された地図には、何とも言えないテイストの家や川が描かれていた。あれを見せたらノースが可愛い絵を描くことバレちゃうな、でも証拠になるのなら。そう思いながらポケットを漁っていると、何か固いものが指先に触れた。
「何だろう。これ……?」
「おお、それは魔晶石ですな。かなり質が良いものとお見受けします」
村長さんは俺がポケットから取り出したものに興味を持ったようだった。眼鏡をくいと上げ、俺が手の平に乗せているものをしげしげと見ている。俺のポケットに入っていたのは、紫色の角ばった小石みたいなものだった。
「あなたのものではないのですか?」
「いや、実はこの服ノースから借りたもので。多分、気づかずに入れたままだったんじゃないかな」
俺がそう言うと、俺をここまで案内してくれた人が「……服?」と呟いた。
「ちょっと失礼」
「えっ、なに」
女性は俺の肩をがしっと掴むと、顔を近づけ、じっと凝視した。突然の行動に驚いたが、「止まってください」と言われればしかたがない。何が起きているかも分からないまま、俺は変な格好でじっとしているしかなかった。
「あー、この服金糸が使われてますね」
「なにっ。ならば、この人は本当にノースさんの……」
「あの、動いていいですか!」
また2人だけで話しだしそうな雰囲気を感じ取り、俺は会話に割って入った。女性が、「ああごめんなさい。もういいですよと」微笑む。一体何なんだと思うと、俺の前に立っていた村長さんが「うほん」と咳ばらいをした。
「疑ってしまい申し訳ない。私はこの村の村長を務めるドターと申します。いや、まさかノースさんが人を使うとは思っておらず」
「はぁ……」
なぜ疑いが晴れたのか分からないまま、俺も自己紹介をした。ドターは、眼鏡をかけていて鼻の下にひげを生やしている。俺が小学生の時の校長先生がこんな感じの人だった。もう一人、俺をここまで案内してくれた女性はリディアと名乗った。小麦色に日焼けした彼女は、この村で牛を育てているそうだ。そばかすのよく似合う可愛らしい女性だった。
「それで用というのは」
「はい、実は依頼のあった魔法薬なんですけど、ノースが言うにはその具体的な効果が分からないらしくて。どんな効果にして欲しいか、俺が確認しに来ました」
「それはそれは、すみません。注文役の人間が杜撰な仕事をしたようで。リディア、説明をお願いできますか」
リディアはもちろんですと頷いた。2人とも優しそうな人で安心する。内心、訪れた村の人が怖い人だったらどうしようと不安だったのだ。少し話をした結果、実物を見た方が早いということになり、俺は村の畑へと案内された。
ノース手作りの地図を見ながらしばらく歩き、無事に俺は目的地である村に到着することができた。俺を旅人か何かだろうと思ったんだろう、近づいてきた女性の村人に俺は、自分がノースの代わりに来たことを伝える。それを聞くと、その人は驚いて目を丸くさせ、「そ、村長の元に案内します」と言い、俺は村の奥にある大きな家へと連れてこられた。そこでも、自分がノースの代わりに来たと話し、またさっきと同じように驚かれた。
「えっと、何か……?」
「いえ、疑うわけではないのですが、本当にあなたがノースさんの使いの方なのかこちらも判別ができず……」
村の人と、村長さんが俺を見ながらこそこそと話している。居心地の悪さを感じて俺が尋ねると、村長さんは恐る恐ると言った風にそう話した。
「俺がノースの使いである証拠……」
地図でも見せるか、いや、あれが証拠になるのかな。ノースは意外にも可愛い絵を描くようで、渡された地図には、何とも言えないテイストの家や川が描かれていた。あれを見せたらノースが可愛い絵を描くことバレちゃうな、でも証拠になるのなら。そう思いながらポケットを漁っていると、何か固いものが指先に触れた。
「何だろう。これ……?」
「おお、それは魔晶石ですな。かなり質が良いものとお見受けします」
村長さんは俺がポケットから取り出したものに興味を持ったようだった。眼鏡をくいと上げ、俺が手の平に乗せているものをしげしげと見ている。俺のポケットに入っていたのは、紫色の角ばった小石みたいなものだった。
「あなたのものではないのですか?」
「いや、実はこの服ノースから借りたもので。多分、気づかずに入れたままだったんじゃないかな」
俺がそう言うと、俺をここまで案内してくれた人が「……服?」と呟いた。
「ちょっと失礼」
「えっ、なに」
女性は俺の肩をがしっと掴むと、顔を近づけ、じっと凝視した。突然の行動に驚いたが、「止まってください」と言われればしかたがない。何が起きているかも分からないまま、俺は変な格好でじっとしているしかなかった。
「あー、この服金糸が使われてますね」
「なにっ。ならば、この人は本当にノースさんの……」
「あの、動いていいですか!」
また2人だけで話しだしそうな雰囲気を感じ取り、俺は会話に割って入った。女性が、「ああごめんなさい。もういいですよと」微笑む。一体何なんだと思うと、俺の前に立っていた村長さんが「うほん」と咳ばらいをした。
「疑ってしまい申し訳ない。私はこの村の村長を務めるドターと申します。いや、まさかノースさんが人を使うとは思っておらず」
「はぁ……」
なぜ疑いが晴れたのか分からないまま、俺も自己紹介をした。ドターは、眼鏡をかけていて鼻の下にひげを生やしている。俺が小学生の時の校長先生がこんな感じの人だった。もう一人、俺をここまで案内してくれた女性はリディアと名乗った。小麦色に日焼けした彼女は、この村で牛を育てているそうだ。そばかすのよく似合う可愛らしい女性だった。
「それで用というのは」
「はい、実は依頼のあった魔法薬なんですけど、ノースが言うにはその具体的な効果が分からないらしくて。どんな効果にして欲しいか、俺が確認しに来ました」
「それはそれは、すみません。注文役の人間が杜撰な仕事をしたようで。リディア、説明をお願いできますか」
リディアはもちろんですと頷いた。2人とも優しそうな人で安心する。内心、訪れた村の人が怖い人だったらどうしようと不安だったのだ。少し話をした結果、実物を見た方が早いということになり、俺は村の畑へと案内された。
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