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第一章
中村
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「やっぱり戻ったか・・しかしここはいったいどこだ!万松寺ではないな・・」
そんなことを呟きながら振り向くとそこに!もう一人いるじゃないか!
「秀一!いったいどういうことだ!おまえなんで・・ついて来たのか!」
「ああ、どうしてか無性に付いて行きたくなってさ。自分でもびっくりしてるよ!はぐれなくてよかった~しかし結構辛いもんだな。」
そう言う秀一を呆れたように睨みつけ、その後二人で大笑いしたが・・
いつまでもそんな悠長な事はしていられない。
「秀一、まず急ごう。」
先ずはこの知らない池から離れ、ここがどこか把握し急いで城に帰らなければならない。
そう思った瞬間、先ほどの池の方から人の争う声が聞こえてきた。
私は瞬時に秀一を引き寄せ身を隠した。
「おい、三郎!誰か襲われているんじゃないのか?助けなくていいのかよ?」
驚きながらも秀一は小さな声で尋ねて来た。
「秀一、ここは平成じゃないんだ。あの様子だと山賊の類かもしれない。ここもどこかの村の山里のようだ。私がいつも使っている池とは違うところに出たらしい。急がないとこちらの命も危なくなる。」
困惑する秀一を連れて私は急いでその山を降りた。
麓の里で見つけた家に急いで駆け込む。
「誰かいますか!」
大声で叫ぶと中から1人の男が慌てたように出て来た。
「なんでしょうか!頼みます。命だけは簡便して下さい。ここは貧乏な農家だからなんもないです。」
その声を遮り三郎は男に尋ねた。
「ここは何という村だ!尾張城下まではどのくらいでいける?」
その男は恐る恐る答えた。
「ここは村外れの中村です。城下までは歩けば三日、馬なら半日くらいです。」
「そうか、何もしないから怖がるな。必ず礼はするからお前に頼みがある。馬を用意してもらえるか。あと馬に乗れる奴も必要だ。那古野城まで連れて行ける道案内が必要なんだ。直ぐに探してくれ!」
その時、秀一が倒れこんだ。
遅かったか!
「秀一!大丈夫か?」
「三郎、なんだか身体に力がはいらないんだ・・どうなってるんだ・・」
「そうなんだ。私もいつも移動後にはこうなる。」
「そういえばそうだったな・・」
そういうと秀一は気を失った。
「大丈夫なんですか?」
怯えている男を宥め話しを続けた。
「ああ、心配はない。ただこのまま連れていく分けには行かなくなった。済まないがこの男をお願い出来るか。必ず戻って来る。それまでこの男の世話を頼む人間はいるか?」
連れて来た馬を確認しながらその男は言った。
「俺がたずなを引きます。馬には慣れてるんだ。問題ねえ。この男も、母ちゃんと妹が世話をするから問題ねえ。その変わり必ず礼をはずんでくれよ!」
遠巻きに様子を伺っていた母親と妹らしき女子達が傍に来て頭を下げる。
「ああ分かった。心配するな。お前、名は何という?」
「はい。小一郎です。」
「では小一郎よく聞いてくれ。私ももうじきあいつと同じように意識がなくなるだろう。だがこのまま城下に入り、急いで那古野城へ向かえ。そこで、丹羽長秀に私をたくしてくれ。おまえは、私が目覚めるまでそばについているように言われたと、長秀に伝えるんだ。私から絶対に離れてはならない。良いな、信じているぞ。」
残っている力を振り絞り、小一郎と自分の身体を縛り馬の尻を叩いた。
何処まで持つか・・走り続けるうちに意識は段々と遠のいていった。
「お館様…信長様…お目覚めか!」
「長秀か・・」
あ~良かった。城にいるようだ。なん日たったんだ。こうしてはいられないが身体がまだ動かないな。
「小一郎は?」
「はい。お言いつけどおり傍においております。」
長秀が声を掛けると障子の隙間から小一郎が顔を覗かせた。
「良かった。小一郎、感謝している。早速で悪いがこの長秀をお前の家に案内してくれるか。置いてきた男を迎えに行かなければならないからな。礼の事も忘れてはいないから安心してくれ。」
「分かりました!任せて下さい。あ!礼なんていいんです・・俺、お館様だとは知らなくて・・お役に立てただけで嬉しいです。」
小一郎はそういうと満面の笑みを浮かべた。
「そういう事なんだが・・長秀、この小一郎の案内でこやつの家へ行ってほしい。そこに私の友人が私を待っている。そして城下に屋敷を見つけ世話を頼む。くれぐれも不自由のないように、そして決して皆には知られないようにだ。それから小一郎と家族には褒美を頼む。命の恩人なんだ。」
「分りました。今はまだ何も伺いません。が、落ち着きましたら全てお話し下さい。」
そう言うと小一郎を連れ部屋を後にした。
幼いころから変わらず、落ち着いた口調で淡々と語り仕事をする。
長秀は実に頼もしい。
そんなことを呟きながら振り向くとそこに!もう一人いるじゃないか!
「秀一!いったいどういうことだ!おまえなんで・・ついて来たのか!」
「ああ、どうしてか無性に付いて行きたくなってさ。自分でもびっくりしてるよ!はぐれなくてよかった~しかし結構辛いもんだな。」
そう言う秀一を呆れたように睨みつけ、その後二人で大笑いしたが・・
いつまでもそんな悠長な事はしていられない。
「秀一、まず急ごう。」
先ずはこの知らない池から離れ、ここがどこか把握し急いで城に帰らなければならない。
そう思った瞬間、先ほどの池の方から人の争う声が聞こえてきた。
私は瞬時に秀一を引き寄せ身を隠した。
「おい、三郎!誰か襲われているんじゃないのか?助けなくていいのかよ?」
驚きながらも秀一は小さな声で尋ねて来た。
「秀一、ここは平成じゃないんだ。あの様子だと山賊の類かもしれない。ここもどこかの村の山里のようだ。私がいつも使っている池とは違うところに出たらしい。急がないとこちらの命も危なくなる。」
困惑する秀一を連れて私は急いでその山を降りた。
麓の里で見つけた家に急いで駆け込む。
「誰かいますか!」
大声で叫ぶと中から1人の男が慌てたように出て来た。
「なんでしょうか!頼みます。命だけは簡便して下さい。ここは貧乏な農家だからなんもないです。」
その声を遮り三郎は男に尋ねた。
「ここは何という村だ!尾張城下まではどのくらいでいける?」
その男は恐る恐る答えた。
「ここは村外れの中村です。城下までは歩けば三日、馬なら半日くらいです。」
「そうか、何もしないから怖がるな。必ず礼はするからお前に頼みがある。馬を用意してもらえるか。あと馬に乗れる奴も必要だ。那古野城まで連れて行ける道案内が必要なんだ。直ぐに探してくれ!」
その時、秀一が倒れこんだ。
遅かったか!
「秀一!大丈夫か?」
「三郎、なんだか身体に力がはいらないんだ・・どうなってるんだ・・」
「そうなんだ。私もいつも移動後にはこうなる。」
「そういえばそうだったな・・」
そういうと秀一は気を失った。
「大丈夫なんですか?」
怯えている男を宥め話しを続けた。
「ああ、心配はない。ただこのまま連れていく分けには行かなくなった。済まないがこの男をお願い出来るか。必ず戻って来る。それまでこの男の世話を頼む人間はいるか?」
連れて来た馬を確認しながらその男は言った。
「俺がたずなを引きます。馬には慣れてるんだ。問題ねえ。この男も、母ちゃんと妹が世話をするから問題ねえ。その変わり必ず礼をはずんでくれよ!」
遠巻きに様子を伺っていた母親と妹らしき女子達が傍に来て頭を下げる。
「ああ分かった。心配するな。お前、名は何という?」
「はい。小一郎です。」
「では小一郎よく聞いてくれ。私ももうじきあいつと同じように意識がなくなるだろう。だがこのまま城下に入り、急いで那古野城へ向かえ。そこで、丹羽長秀に私をたくしてくれ。おまえは、私が目覚めるまでそばについているように言われたと、長秀に伝えるんだ。私から絶対に離れてはならない。良いな、信じているぞ。」
残っている力を振り絞り、小一郎と自分の身体を縛り馬の尻を叩いた。
何処まで持つか・・走り続けるうちに意識は段々と遠のいていった。
「お館様…信長様…お目覚めか!」
「長秀か・・」
あ~良かった。城にいるようだ。なん日たったんだ。こうしてはいられないが身体がまだ動かないな。
「小一郎は?」
「はい。お言いつけどおり傍においております。」
長秀が声を掛けると障子の隙間から小一郎が顔を覗かせた。
「良かった。小一郎、感謝している。早速で悪いがこの長秀をお前の家に案内してくれるか。置いてきた男を迎えに行かなければならないからな。礼の事も忘れてはいないから安心してくれ。」
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「そういう事なんだが・・長秀、この小一郎の案内でこやつの家へ行ってほしい。そこに私の友人が私を待っている。そして城下に屋敷を見つけ世話を頼む。くれぐれも不自由のないように、そして決して皆には知られないようにだ。それから小一郎と家族には褒美を頼む。命の恩人なんだ。」
「分りました。今はまだ何も伺いません。が、落ち着きましたら全てお話し下さい。」
そう言うと小一郎を連れ部屋を後にした。
幼いころから変わらず、落ち着いた口調で淡々と語り仕事をする。
長秀は実に頼もしい。
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