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〜甘い学園生活送ります〜

デートか否かは些細なこと

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俺がお迎えに上がりますからと嬉しそうだったルークを思い出しながら準備をしていく。

今日はルークと一緒だし学園の外に出るので好きな格好をする。
薄紫に小花を散らしたワンピースに長い黒髪は一部を編み込み、ピンクの小さな石の付いたピンを差し込んでいく。久しぶりにつけたリップはつややかな桃色。

全ての準備を整えると文句なしに美しい令嬢がそこにいた。
本当に……。自分で言うのもなんだけど、絶対に俺が呼ぶまで外に出ないでくださいねと念を押されたのも無理はないと思ってしまう。

準備が整った頃を見計らっていたかのようにルークが現れた。

「――……」

対面したルークがわかりやすく息を飲む。
笑んで見せると今度は溜息を吐かれた。

「今後も外で待ち合わせなんて無謀なことを考えないでくださいね」

「第一声がそれなの?」

大事なことですと言うルークに口を尖らせると目元をやわらげて失礼しましたと笑う。

「貴女の身の安全が一番大事ですが、確かに無粋でしたね。
とてもお美しいです、俺のための装いだと思うと尚更に」

誰にも見せずに隠してしまいたいですというのが冗談に聞こえない。

「気分転換だって言ってたのに、デートだったの?」

「名目がなんであれ、その格好は俺のためでしょう?」

丁寧に編み込んだ髪や化粧を見ながら問い返してくる。
その通りだけど。

「今日のルークの格好も私のため?」

いつもの従者然とした格好ではなく、色味は落ち着いているもののピンブローチなどの小物が華やかで、並んで歩いていればどう見てもデート中の二人だった。

「今日だけじゃありません。
俺の全てが貴女のためにあります」

過剰にも思えるセリフだけれど、艶然と微笑むルークはどこまでも真剣な目をしていた。





王立図書館の蔵書に圧倒されつつルークの案内のおかげで目的の本へはすぐにたどり着いた。
じっくり読みたいけれどそこまでの時間はないので一度ざっと目を通してから必要な内容だけをもう一度繰り返し読む。
そんなことを繰り返していると人のざわめきが大きくなってきた。
本を閉じるとそろそろ行きましょうかと返ってきたので頷いて本を重ねる。
俺が戻してきますと立ち上がるルークを見送って内容をまとめていたメモを揃えて片す。
ルークは時々私自身よりも私のことをよくわかってるんじゃないかと思う。
不思議と頭がすっきりした気分になっている。
知らない間に随分と気を張っていたみたい。
気分転換をした方が良いというのはそのとおりだった。


こうして令嬢らしい格好をしてルークの隣を歩くのは本当に久しぶりのことで、前はまだ少女らしい格好をしていた頃だった。隣を見上げると記憶にあるよりも精悍な顔つきになったルークが目に入る。
私でさえもそう思うんだから、ルークはもっと私の変化を感じていてもおかしくない。
側にいることを諦めなくて本当に良かった。

少しだけ頭を寄せるとどうしました?と穏やかな声が降ってくる。
なんでもないと答えた声も柔らかい。
ただ、幸せなだけだった。




真っ赤に熟したチェリーの果肉を凍らせたデザートは甘酸っぱくておいしかった。
カフェの中は個室に区切られていて、人の目を気にしないでいられて良い。
私だけでなくルークも衆目を集めやすいので個室だったのは嬉しかった。
お店を見つけたときから私と一緒に来ようと思っていたと話してくれる。
ずっと機会を窺ってたと言っていたので、私の様子を見て誘うタイミングを考えてくれていたみたい。

連れて来てくれてありがとうと伝えて微笑む。
俺も嬉しいですと返してくれるルークと見つめ合っていると幸せだと実感する。
学園生活も充実していたけれど、こうして見つめ合っていると忙しさ故の充実感や日々の達成感とは違う充足感が湧いてくる。

「お嬢、見つめすぎですよ」

「ルークこそ」

そう言いながらもお互い目を逸らさない。
あと少し頑張ったらこんな時間を過ごせる日々が待っている。そう思うといくらでも力が湧き上がってくる気がした。

「もう少し待っててね」

言葉にしてお願いをする。
すでに十分待たせているのはわかっているけれど。あと少しだけ。
私の意図を汲んだルークがまだ待ちますよと口元に笑みを作る。

「お嬢も、俺に愛される覚悟を決めておいてくださいね」

「これ以上?」

今でも十分甘やかされて愛されているとは思うんだけれど。

「こんなものではすみませんよ」

髪をひとすくいして口づける。深紫の瞳が灯りの加減で赤く翳った。
卒業したら我慢はしませんから、と笑むルークは背筋がぞくぞくするほど色気を放っていた。


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