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Ωの使い道 1

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「おはようございます。命様、皆瀬さん…て――
 皆瀬さん大丈夫ですか?何やらお顔が赤いようですが…」
「…大丈夫です。」

マンションエントランス前の駐車スペースで停車している車の前で
命たちが来るのを待っていた佐伯が
エントランスホールから出てきた命と洋一に挨拶をすると
洋一の顔が赤い事に気が付き、心配して声をかけてきた

「――そうですか?皆瀬さんがそうおっしゃるのなら――」

そう言うと佐伯は助手席に乗り込み、命と洋一も後部座席へと乗り込む

「早速ですが――」

車が徐行をしながらマンション前の噴水の横を通り抜け
警備員が常駐するゲートを抜けた先で
佐伯がシステム手帳を開きながら曇った表情で命に話しかける

「本当に向かわれるのですか…?松本オリエンタル工業に…」
「ああ…引導を渡しに行く。」
「え…引導って…?」

命の口からでた物騒な言葉に、洋一が何かの聞き間違いかと思って聞き返す

「…松本オリエンタル工業はここ数年の業績悪化で、経営が火の車でな。
 この数か月の間、我々にしつこく新たな融資を打診してきていたのだが――
 もう経営破綻は目と鼻の先と判断し
 鬼生道は今後御社に対し一切の融資は行わない――と…
 今日俺の口から直接社長に伝えに行く事になっている。」
「そんな…」
「――酷な話だが――コチラも慈善事業をしている訳ではないのでな…
 切れる所は切っておかないと…我々の足元をすくわれかねないのだ…」
「そう…なんですか…」

洋一は非常な現実を目の当たりにして言葉を失う

「しかし命様…何も今日、このような最後通告の場に命様自ら出向かわれなくても…
 誰か他の者ではいけなかったのですか…?」

佐伯がバックミラー越しに不安げな眼差しを向けながら命に尋ねる

「ああ…こういった事は先ず、鬼生道の誰かが出向き、誠意を見せないと…
 最初から弁護士などを送れば、向こうも頑なになって話が拗れかねないからな…」
「ですが…」
「向こうが納得せず、かつ話が長引きそうであれば――
 その時は弁護士に話をさせる。それでいいか?」
「――分かりました…」

車内は重苦しい空気に包まれたまま
車は目的地である松本オリエンタル工業へ向けて走り続けた…
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