上 下
12 / 128

Ωにあってαに無いモノ。

しおりを挟む
洋一と浩介はBARを出ると、電車に乗る為に歩いて駅へと向かっていた

「それにしても――
 明日から副社長の秘書だなんて――やったな!大出世じゃんw」
「…笑いながら言うな……大体…危険手当のつく秘書って何よ?」

浩介が茶化すように隣で笑いながら話す言葉に
洋一はちょっとムッとしながら返す

「しっかし嵐みたいな人だったな副社長。
 お前を秘書にすると決めた途端手続きだのなんだの済ませる為とか言って
 さっさと店出て行っちゃうし…」
「…俺に拒否権ナシだしな…ハァ…」

BARでの一件を思いだし、洋一が重い溜息を吐きだす

「そーだ!出世祝いしないとな!プレゼント何が良い?首輪?w」
「Ωじゃねーしっ!」
「だってこれから度々副社長に項噛まれるかもしれないんだろ?w
 だったら項保護する首輪とか必要じゃね?
 この先今日みたいにあんなに激しく項噛まれる事があったら嫌だろ?w」
「そりゃヤだけど――てかお前、楽しんでる?他人(ひと)事だと思って…」
「いや~…お前が匂いというか体臭?のせいでα引きつける体質なのは
 高校の頃から見てきたから知ってたけど――
 ま~さか項噛みついてくるとはなwお前の匂いには発情効果ないハズなのに…
 やっぱΩのフェロモン中てられたαって怖いな。見境なしに襲ってくんだから…」

それを聞いて、洋一は何処か複雑な表情を浮かべながら口を開く

「それは――仕方ないよ…Ωにはフェロモンを抑える抑制剤があるけど
 αには未だにソレを防ぐ薬とか開発されて無いんだから…」
「ホントそれ…なんでだろうな?俺の親父も言ってたけど――
 αにもΩのフェロモンを防ぐ薬でもあれば性犯罪も減るし
 なにより意図しない相手と誤って番う事も無くなるだろうに…」

浩介は未だに自分の父親に“運命の番”が現れる事に怯える母親を思いだし
その表情が苦々しく歪む…

「まあそれは兎も角――明日から副社長お付きの秘書になる訳だし――
 明日何処かでお前の出世祝いも兼ねてパーッと騒ぐか!」
「パーッと騒ぐ…ねぇ…俺は何だか今から気が重いよ…」

ハァ~…と項垂れながら溜息を突く洋一に
浩介が肩を組みながら励ますようにして、2人して駅へと向かった





そんな2人を他所に





『どうだ。確認はできたか?』
「ハイ。恐らくは――」
『画像を送れ。』
「ハイ。」
『……来た。この2人のうちのどちらかか…分かったもういい。』
「それでは失礼いたします。」

ピッと通話は切れ
黒塗りの車は静かに動きだすと
歩道を歩く2人の横を通り過ぎ、その場を去って行った…
しおりを挟む
感想 26

あなたにおすすめの小説

執着攻めと平凡受けの短編集

松本いさ
BL
執着攻めが平凡受けに執着し溺愛する、似たり寄ったりな話ばかり。 疲れたときに、さくっと読める安心安全のハッピーエンド設計です。 基本的に一話完結で、しばらくは毎週金曜の夜または土曜の朝に更新を予定しています(全20作)

さよならの合図は、

15
BL
君の声。

どうやら俺は悪役令息らしい🤔

osero
BL
俺は第2王子のことが好きで、嫉妬から編入生をいじめている悪役令息らしい。 でもぶっちゃけ俺、第2王子のこと知らないんだよなー

鬼ごっこ

ハタセ
BL
年下からのイジメにより精神が摩耗していく年上平凡受けと そんな平凡を歪んだ愛情で追いかける年下攻めのお話です。

『これで最後だから』と、抱きしめた腕の中で泣いていた

和泉奏
BL
「…俺も、愛しています」と返した従者の表情は、泣きそうなのに綺麗で。 皇太子×従者

君のことなんてもう知らない

ぽぽ
BL
早乙女琥珀は幼馴染の佐伯慶也に毎日のように告白しては振られてしまう。 告白をOKする素振りも見せず、軽く琥珀をあしらう慶也に憤りを覚えていた。 だがある日、琥珀は記憶喪失になってしまい、慶也の記憶を失ってしまう。 今まで自分のことをあしらってきた慶也のことを忘れて、他の人と恋を始めようとするが… 「お前なんて知らないから」

新しい道を歩み始めた貴方へ

mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。 そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。 その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。 あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。 あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……? ※沢山のお気に入り登録ありがとうございます。深く感謝申し上げます。

嘘の日の言葉を信じてはいけない

斯波良久@出来損ないΩの猫獣人発売中
BL
嘘の日--それは一年に一度だけユイさんに会える日。ユイさんは毎年僕を選んでくれるけど、毎回首筋を噛んでもらえずに施設に返される。それでも去り際に彼が「来年も選ぶから」と言ってくれるからその言葉を信じてまた一年待ち続ける。待ったところで選ばれる保証はどこにもない。オメガは相手を選べない。アルファに選んでもらうしかない。今年もモニター越しにユイさんの姿を見つけ、選んで欲しい気持ちでアピールをするけれど……。

処理中です...