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第3話① 正直だったお兄ちゃん、今は嘘つきなんですか?※
しおりを挟む偽装結婚初日の夜――。
ベッドの上で、寝ぼけたシルヴァから身体を愛撫され続け、気持ち良くて頭がおかしくなりそうだった。
背後にいる彼の器官が、腰に触れてぞくぞくとした快感が走る。
「あ……シルヴァ……あっ……」
先ほどびくびくと全身が痙攣したばかりだが、その時以来、ちょっとの刺激で身体が反応してしまうようになっていた。
腰に彼の熱くて硬い何かが擦りつけられる。
「リモーネ……」
子どもの時の優しい調子とは違って……。
私を呼ぶ彼の声が熱っぽくて、敏感に耳が反応してしまう。
「あっ、んっ――シル……だめっ……」
これから何が起こるのだろうかという、未知の恐怖と期待とがないまぜになって襲ってくる。
だけど――。
(どうしよう、シルヴァお兄ちゃん、全然起きない……!)
異性に身体に触れられるのが、そもそも初めてだというのに、眠っている男の人が相手というのは、なんだか寂しい。
別にシルヴァに触られて不快だとかそういうわけではない。
(だけど、こんな相手も気づかないうちで初めての体験をするのはやっぱり嫌……そうだ――!)
ひらめいた私は、シルヴァの腕を掴む。
血が出ない程の強さで、がぶりと噛みついてみた。
「――っ!」
シルヴァがうめき声をあげる。
「シルヴァお兄ちゃん、起きて――!」
なんとか声を振り絞ることが出来た。
「リモーネ……」
シルヴァの腕の力が和らぐ。
「俺は……何を……?」
ぽつりと低い声で呟いた後、慌てて彼が私から離れる。
「すまない、リモーネ……何があった?」
なんとか彼に問いかける。
「……覚えてないの?」
「ああ……俺はもしかして、お前に何かしたのか?」
彼の問いに、私はこくりと呟いた。
「震えているな……」
先程までの熱を帯びた声音とは打って変わって、彼の声には後悔がにじんでいる。
言われるまで気付かなかったが、自分の身体が震えていることに気づいた。
私は膝を抱えて丸くなる。
彼の手が私の肩に近づいてくるのを感じたけれど、結局彼がそれ以上、私に触れてくることはなかった。
「少し外に出てくる」
そう言うと、彼は部屋から出ていく。
扉の閉まる音が、なんだか虚しく響いたのだった。
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