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第7章 2年後、3人は家族になった
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しおりを挟む「おやおや、梅小路さん、どこに行こうとしているのかな?」
一見すると善人そうな笑顔を浮かべた男が室内へと入ってくる。
彼の背後には、申し訳なさそうな表情を浮かべる阪子の姿もあった。彼女は桃花の姿を見ると、さっと何処かへと姿を消してしまう。
桃花はキッと相手を睨みつけた。
「嵯峨野社長」
名を呼ばれた嵯峨野は大仰に両手を振り仰いだ。
「おやおや、梅小路さん、君は今の自分の立場を分かっているのかい?」
「このご時世に誘拐だなんて、貴方こそ、ご自身の立場は分かっていらっしゃるのですか?」
すると、嵯峨野が手を降ろす。顔を愉悦に歪めたまま、桃花に向かって語り続ける。
「私は君についてきてほしいと頼んだだけに過ぎない。部下たちも君に手出しはしていない」
「危害を加えると脅迫してきたでしょう?」
「そんなことは言ったかな? だけど、証拠は何もないはずだ」
素知らぬフリをして話す嵯峨野の姿を見て、桃花はムッとしてしまう。
「ああ、せっかく二階堂総悟の不幸せそうな姿を二年間眺めることが出来たというのに、二階堂会長が余計な計らいをしたせいで君が戻ってきてしまった。あげくの果てに、君ときたら、総悟から酷い目に遭わされたというのに、すんなり元の立ち位置に戻って、本当に学習能力がないと見える。見ていてちゃんちゃらおかしいよ」
「どうして二年前、私たちの仲を引き裂くような嘘を吐いたのですか?」
桃花の声音は自然と低くなってしまった。
すると、嵯峨野がそばに近づいてきて、桃花のことを見下ろしてくる。
自己陶酔したかのような視線が、なんとなく気持ち悪かった。
「そんなの決まっているだろう? 俺と嗣子の間を引き裂いた罰だよ」
「嗣子、さん……?」
思いがけず総悟の姉の名前が出てきた。
「そう、二階堂嗣子、俺の婚約者にて……最愛の女性だ」
嵯峨野はどこか遠い目をしていたが、ふと桃花へとじっとりとした視線を向けてくる。
「俺が嗣子に一方的に懸想していると思っていそうな目線を感じるが……残念ながら、俺と嗣子は恋人同士だったんだ。総悟くんから聞いていないのかな?」
桃花は眉を顰めた。
嵯峨野は気にせずに喋り続ける。
「嗣子はね、とても綺麗な女性だった。ドイツ生まれの奔放な母親から生まれたとは思えないほど貞淑で、たおやかな大和撫子のような女性だったんだ。俺は彼女と高校時代に出会った。とても綺麗な女性でね、彼女はまるで華のような女性だった」
写真の嗣子は確かに嵯峨野の言うような印象のある女性だった。
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