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第5章 2年後、2人の子ども

20-1 総悟の嫉妬

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 マンションの一件から数日が経った。
 今日も桃花は仕事に精を出していたのだが、急遽子ども園から電話がかかってきたので、社長室から廊下の端へと移動して、電話対応をしていた。

「ごめんなさい、どうぞよろしくお願いします」

 スマホをタップして通知を切る。

(急な日程変更があって、子ども園がお弁当の日だったことを忘れてしまっていたわ)
 
 桃花は獅童に持たせる弁当を作るのをすっかり忘れてしまっていたが、子ども園が宅配弁当を手配してくれるらしく、ほっとしていた。

(獅童にご飯を食べさせるために働いているのに、ご飯を作りそびれたら本末転倒ね)

 電話を終えた桃花が社長室に戻るべく廊下を歩いていると……

「ああ、終わったの?」

 目の前に総悟が立ちはだかった。

「社長……!」

 桃花はドキッとする。

(さすがに遠距離だったし、電話の内容は聞こえていないわよね? それにしたって、わざわざ社長室から出てきたの?)

 彼女は彼のことをおずおずと見上げた。
 ここ最近の彼だったら、『上司よりも休んでばかりで、専属秘書の役目を果たす気があるのか?』と言いそうな雰囲気があったけれども……

「部屋の外に出て気分転換はできた?」


 総悟は桃花に向かって穏やかな笑顔を向けてきたのだ。
 ドクンと、桃花の心臓が大きく跳ね上がる。

「はい、そうですね。社長、仕事中に申し訳ございません」

 桃花は深々と謝罪した。
 どうやら総悟は桃花が気分転換のために一時席を外したと思っているようだった。

(本当は子ども園とのやり取りだったんだけど……それは伝えられないわね)

 それにしたって、久しぶりに総悟が笑顔を見せてくれたものだから、心臓がドキドキと鳴りやんでくれない。

(私ったら現金だわ)

 だけど、思いつめたように仕事に向かっていた総悟を見ていると、こちらまで苦しいぐらいだったから、桃花としては正直嬉しくて仕方がなかった。

「この間の一件で、たまに休むのは大事だって再認識したから、少しぐらい抜けても大丈夫だよ」

「ありがとうございます」

 総悟の先日までのトゲトゲとした雰囲気はどこかへ飛んで行ってしまったようだ。

「さあ、社長室に戻ろうか」

「はい……!」

 総悟に促されて桃花が前進しようとしたところ……
 
 ~♪~♪

「すまない、電話だ。もしもし」

 総悟がスマホの着信に対応しはじめた。今度は彼が廊下の奥の方へと向かう。

(総悟さんのことを待とうかしら? それとも先に部屋に戻る?)

 桃花がそんなことを考えていると、ちょうどエレベーターが開き、現れた人物が声を掛けてきた。

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