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第3章 2年前、2人の別れの理由
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しおりを挟む(桃花ちゃんの方から話したいことがあるって聞いていたから、てっきり、恋人になりたいとか、そんな都合の良い話だと思っていたんだけど、俺だけが浮かれていたのかもしれないな。それよりも、数日前から桃花ちゃん、俺に少しだけよそよそしい気がするのは気のせいかな?)
気にはなったけれど、疲れが溜まってきているせいで、相手の反応に対する受け取り方がネガティブになっているのかもしれない。
そんな風に総悟が自分自身に言い聞かせていると……
「二階堂副社長」
改めて名前を呼ばれた。
総悟はますます桃花に対して寂しさを覚えて、胸が苦しくなってしまう。
(仕事中だから仕方ないのかもしれないけど、名前で呼んでもらいたい)
そんなことを思っていたら……
「総悟さん」
突然、下の名前を呼ばれたので総悟は胸の内で歓喜した。仕事中だと平静を装いながら、問い返す。
「桃花ちゃん、どうしたの?」
すると、桃花が総悟に向かって深々と頭を下げてきた。
「ありがとうございました、そして……」
桃花がゆっくりと顔を上げる。
「さようなら」
ドクン。
彼女は微笑んでいた。同時に、どことなくスッキリした表情にも見えた。
だけど、どうしようもなく、総悟は違和感を覚えた。
漠然とした不安を払拭すべく、明るい声音で返す。
「うん、それじゃあね、桃花ちゃん、また」
桃花からの返事はなく、淡く微笑んだまま、すっと踵を返した。
総悟に背を向けると、扉へと向かって颯爽と進んでいく。
彼は彼女が退室していく姿を黙って見送った。
パタン。
乾いた音を立てて扉が閉まる。
疲れているからだろうか、強い寂しさを感じたが、彼女が掛けてくれた白いブランケットを、彼は抱きしめるかのように手繰り寄せた。
(もう一度桃花ちゃんを抱きしめたい。もう一度と言わず、これから先もずっと……)
ふわふわのブランケットの感触が、まるで桃花に抱きしめられているかのようで、総悟は夢見心地だった。
総悟は瞼を閉じると考え事をはじめる。
ちゃんと自分の抱えている内情を桃花に伝えないとフェアじゃないと、竹芝に言われたことが頭の中に浮かんでは消えていく。
(一般的な女性だったら、自分の子どもは欲しがるよな。だけど、俺は子どもなんて欲しくない、そんなもの必要ないんだよ)
総悟の胸の中で強く心の傷として残っていることがある。
どれだけ周囲から大丈夫だと言われても、そんなのあり得ないと否定されたとしても……どうしても心の理解が追い付かなくて、どんなに頑張っても修正することができない。
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