上 下
40 / 220
第2章 2年前、幸せな2人

9-1 初めて結ばれる(前編)※

しおりを挟む
 夜。高層ビルの向こう側。どこよりも高い場所にあるため、都会だけれど月が見える。
 桃花は二階堂副社長に横抱きに抱えられ、庭園のあるバルコニーから部屋の中へと戻った。大人五人ぐらいは余裕で横たわれそうな広々としたベッドの上へと連れて行かれる。
 室内の白色灯はまだ煌々と輝いていて、彼の綺麗な横顔をじっくりと眺めることができる。
 すっと通った鼻筋は日本人離れしていて、凛々しく引き結ばれた唇に、首にある雄々しい喉仏や隆線を描く鎖骨は、どこか官能的だった。

(二階堂副社長と私は今から……)

 ……ドクン、ドクン。

 自身の鼓動が煩いぐらいに音を立てていた。
 桃花は確かに酒に酔っていたが、もうすっかり風に当たって意識はしっかりしてきていた。だというのに、熱に浮かされたかのような浮遊感が消えてくれない。
 他の男性に同じようにベッドに運び込まれでもしたら、間違いなく抵抗しているだろう。
 だというのに、抗うことなくなすがままになっている。
 
 ……もう桃花も二十二歳の大人だ。

 二階堂副社長とはこれまでに何度かキスをした。
 今は高級ホテルの一室で一緒に過ごしている。
 自意識過剰になってしまっているかもしれないが、これから男女同室で一夜を共にするのだとして……この先何が起こるのか想像が全くつかないわけではない。

(自意識過剰になり過ぎているのかもしれない)

 頭の中で理性がそう訴えかけてくるものの、彼に何をされるのだろうという期待と不安が、桃花の全身を支配していた。
 ギシリ。
 滑らかなシーツの上が敷かれた弾力のあるベッドの上、彼女はまるで壊れ物のように横たえられたかと思うと、彼の大きな掌が彼女の頭を何度か慈しむように撫でてきた。

「桃花ちゃん、拒むなら今の内だよ」

 彼女が見上げると、彼の優しくも熱情の宿る翡翠の瞳が目に飛び込んできて、心ごと蕩けてしまいそうだった。

(私は二階堂副社長とどうなりたいの……?)

 桃花は自問した。
 自分はこれから先いったいどうしたいのだろうか?
 彼とどうなりたいのだろうか?
 ずっとずっと一人で頑張らないといけないと思って生きていた。
 だけど、誰かに頼ったとしても嫌われない、大丈夫なんだと初めて実感を与えてくれた異性。

(それがこの人……)

 評判通り優しくて気さくな男性だった。
 噂とは違って仕事にも他者にも誠実に対応できる人でもあった。
 まるごと自分のことを包み込んでくれそうな包容力も持ち合わせていて……
 だけど、時折寂しそうに微笑む姿を眺めていたら、目が離せなくなっていって……
 いつの間にか、どんどん惹かれていったのだ。

(私は、二階堂副社長のことが……この人のことが好き)



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

イケメンエリート軍団の籠の中

便葉
恋愛
国内有数の豪華複合オフィスビルの27階にある IT関連会社“EARTHonCIRCLE”略して“EOC” 謎多き噂の飛び交う外資系一流企業 日本内外のイケメンエリートが 集まる男のみの会社 唯一の女子、受付兼秘書係が定年退職となり 女子社員募集要項がネットを賑わした 1名の採用に300人以上が殺到する 松村舞衣(24歳) 友達につき合って応募しただけなのに 何故かその超難関を突破する 凪さん、映司さん、謙人さん、 トオルさん、ジャスティン イケメンでエリートで華麗なる超一流の人々 でも、なんか、なんだか、息苦しい~~ イケメンエリート軍団の鳥かごの中に 私、飼われてしまったみたい… 「俺がお前に極上の恋愛を教えてやる 他の奴とか? そんなの無視すればいいんだよ」

孕ませねばならん ~イケメン執事の監禁セックス~

あさとよる
恋愛
傷モノになれば、この婚約は無くなるはずだ。 最愛のお嬢様が嫁ぐのを阻止? 過保護イケメン執事の執着H♡

完結【R―18】様々な情事 短編集

秋刀魚妹子
恋愛
 本作品は、過度な性的描写が有ります。 というか、性的描写しか有りません。  タイトルのお品書きにて、シチュエーションとジャンルが分かります。  好みで無いシチュエーションやジャンルを踏まないようご注意下さい。  基本的に、短編集なので登場人物やストーリーは繋がっておりません。  同じ名前、同じ容姿でも関係無い場合があります。  ※ このキャラの情事が読みたいと要望の感想を頂いた場合は、同じキャラが登場する可能性があります。  ※ 更新は不定期です。  それでは、楽しんで頂けたら幸いです。

冷徹御曹司と極上の一夜に溺れたら愛を孕みました

せいとも
恋愛
旧題:運命の一夜と愛の結晶〜裏切られた絶望がもたらす奇跡〜 神楽坂グループ傘下『田崎ホールディングス』の創業50周年パーティーが開催された。 舞台で挨拶するのは、専務の田崎悠太だ。 専務の秘書で彼女の月島さくらは、会場で挨拶を聞いていた。 そこで、今の瞬間まで彼氏だと思っていた悠太の口から、別の女性との婚約が発表された。 さくらは、訳が分からずショックを受け会場を後にする。 その様子を見ていたのが、神楽坂グループの御曹司で、社長の怜だった。 海外出張から一時帰国して、パーティーに出席していたのだ。 会場から出たさくらを追いかけ、忘れさせてやると一夜の関係をもつ。 一生をさくらと共にしようと考えていた怜と、怜とは一夜の関係だと割り切り前に進むさくらとの、長い長いすれ違いが始まる。 再会の日は……。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

年上彼氏に気持ちよくなってほしいって 伝えたら実は絶倫で連続イキで泣いてもやめてもらえない話

ぴんく
恋愛
いつもえっちの時はイきすぎてバテちゃうのが密かな悩み。年上彼氏に思い切って、気持ちよくなって欲しいと伝えたら、実は絶倫で 泣いてもやめてくれなくて、連続イキ、潮吹き、クリ責め、が止まらなかったお話です。 愛菜まな 初めての相手は悠貴くん。付き合って一年の間にたくさん気持ちいい事を教わり、敏感な身体になってしまった。いつもイきすぎてバテちゃうのが悩み。 悠貴ゆうき 愛菜の事がだいすきで、どろどろに甘やかしたいと思う反面、愛菜の恥ずかしい事とか、イきすぎて泣いちゃう姿を見たいと思っている。

イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。

すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。 そこで私は一人の男の人と出会う。 「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」 そんな言葉をかけてきた彼。 でも私には秘密があった。 「キミ・・・目が・・?」 「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」 ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。 「お願いだから俺を好きになって・・・。」 その言葉を聞いてお付き合いが始まる。 「やぁぁっ・・!」 「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」 激しくなっていく夜の生活。 私の身はもつの!? ※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 では、お楽しみください。

クソつよ性欲隠して結婚したら草食系旦那が巨根で絶倫だった

山吹花月
恋愛
『穢れを知らぬ清廉な乙女』と『王子系聖人君子』 色欲とは無縁と思われている夫婦は互いに欲望を隠していた。 ◇ムーンライトノベルズ様へも掲載しております。

処理中です...