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後日談1① アイゼンの執着
しおりを挟むわたしが本当のルヴィニ・メーロ侯爵令嬢だと判明した後、使用人仲間たちがこぞって謝罪に現れた。
「本当にごめんねルビー、ルヴィニ夫人に脅されてたせいで、あんたをかばってやれなくて……!」
「ごめんね、ルビー」
職を失うと行くあてもないものだって多い。
「仕方ないわ、これからも皆で仲良くしましょう」
わたしが笑うと、皆もすごく幸せそうに笑ってくれた。
「あんた、本当は侯爵令嬢なんだろう? もう」
メイド仲間の一人が「そういえば――!」と言って、話を切り出す。
「ルビーに気のある庭師がいたんだけど、あんたがアイゼン様の本当の奥さんだって言ったら、大層へこんでて――」
「誰が、私の妻に気があるんだい」
背後から、爽やかな青年の声が聞こえた。
「アイゼン様――!」
メイド仲間たちが一斉に色めき立つ。
鳶色の髪に水色の瞳をした美丈夫は、脇目も振らずに、わたしの元へと歩み寄ってきた。
わたしの足元に跪いたアイゼン様は、さっと私の右手をとると、ちゅっと口づけを落とす。
「ルビー、会いたかった――僕の最愛の妻」
メイド達がますます興奮して落ち着かなくなる。
そんな彼女達に向かって、彼は問いかけた。
「ねえ、皆、教えてほしい。ルビーのことを好きな男の人がいるのかな?」
穏やな口調だが、彼の目は笑っていなかった。
彼女たちは首をぶんぶんと振ると、一斉にどこかに去って行ったのだった。
「どうして皆教えてくれなかったんだろうか――?」
困ったように言う彼を、わたしはこれまた困ったような調子で見る。
(無意識?)
自覚がないのは大変だなと、そんなことをわたしはぼんやりと思った。
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