21 / 33
本編
21
しおりを挟むそうして、翌朝。
二人して目の下にクマを作った状態で王城へと向かった。
国王陛下からは『やっとアーサーが身を固めてくれるのか、これで王城の女性陣が少しは落ち着くな』と、なぜか大喜び。
せっかく騎士団長になったのに妻帯しないアーサー兄さまをけしかけるために、陛下が色々と根回しをしてくれていたようだった。
「俺の親友のケンダルがいるだろう? 第二王女様はあいつと仲が良いんだ」
「え?」
どうやら第二王女様の方も、幼馴染のケンダル様とくっつくかくっつかないかでもめていたらしい。
「だからな、お前に告白して、あいつらをくっつけるための惚れ薬を作ってもらう作戦も考えてはいた」
「そうだったんですか!?」
「玉砕覚悟で告白しようと思っていたしな。だが、『惚れ薬を作ってくれ』と言ったのに、お前は無表情で『分かった』とか言い出すし、あげくの果てには『兄としか思っていない』と言い出すし……それで、俺のための惚れ薬を作ってもらう決意が固まっていったんだ……」
「あ……ごめんなさい、私が勘違いしたせいで」
そっとアーサー兄さまが私の髪を撫でてくる。
「いいや、俺の方こそ潔く告白すればよかったんだ、悪かった。詫びはこれから先いくらでもするから」
頭を下げられた。
「そんなに謝らないでください!」
「いいや、一時的に頭に血が昇ってしまって、あやうく大事なお前を失うところだったからな」
ふと、彼が私の手をとった。
指に何かを感じると思ったら――
「翠玉の指輪……」
兄さまと同じ綺麗な色の婚約指輪だった。
「リーリア、お前は忘れてしまっているだろうが……」
指輪と同じ色の瞳でこちらをまっすぐに見つめてくる。
「ずっと昔からお前だけを妻にしたいと思っていた」
「アーサー兄さま……」
「お前との約束を守るために少々時間がかかってしまったがな……」
「私との約束?」
「いいんだ、約束というよりも、俺の誓いみたいなものだから……」
なんだか覚えていないのが申し訳ない気がしたが、アーサー兄さまは満足そうな表情を浮かべていた。
その時、彼の手が私の頬に添えられた。そうして麗しい唇が耳元に近づいてくる。
「……なあ、リーリア、昨日の今日でこんなことを言うのも気が引けるが……」
そうして――蕩けるような声音で囁いてきた。
「今度また惚れ薬を作ってくれよ、昨日みたいにずっと愛し合おう」
「アーサー兄さまったら……!」
後日、二人は王国の皆に見守られながら幸せな結婚式を挙げた。
王国の騎士団長として民たちから慕われたアーサー公爵は愛妻家で有名な人物であり、森の奥にある塔の中で、最愛の妻とたくさんの子どもに恵まれながら幸せに暮らしたのだと言われている。
19
お気に入りに追加
858
あなたにおすすめの小説
引きこもり令嬢が完全無欠の氷の王太子に愛されるただひとつの花となるまでの、その顛末
藤原ライラ
恋愛
夜会が苦手で家に引きこもっている侯爵令嬢 リリアーナは、王太子妃候補が駆け落ちしてしまったことで突如その席に収まってしまう。
氷の王太子の呼び名をほしいままにするシルヴィオ。
取り付く島もなく冷徹だと思っていた彼のやさしさに触れていくうちに、リリアーナは心惹かれていく。けれど、同時に自分なんかでは釣り合わないという気持ちに苛まれてしまい……。
堅物王太子×引きこもり令嬢
「君はまだ、君を知らないだけだ」
☆「素直になれない高飛車王女様は~」にも出てくるシルヴィオのお話です。そちらを未読でも問題なく読めます。時系列的にはこちらのお話が2年ほど前になります。
※こちら同じ内容で別タイトルのものをムーンライトノベルズにも掲載しています※
淡泊早漏王子と嫁き遅れ姫
梅乃なごみ
恋愛
小国の姫・リリィは婚約者の王子が超淡泊で早漏であることに悩んでいた。
それは好きでもない自分を義務感から抱いているからだと気付いたリリィは『超強力な精力剤』を王子に飲ませることに。
飲ませることには成功したものの、思っていたより効果がでてしまって……!?
※この作品は『すなもり共通プロット企画』参加作品であり、提供されたプロットで創作した作品です。
★他サイトからの転載てす★
借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる
しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。
いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに……
しかしそこに現れたのは幼馴染で……?
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
婚約者が巨乳好きだと知ったので、お義兄様に胸を大きくしてもらいます。
鯖
恋愛
可憐な見た目とは裏腹に、突っ走りがちな令嬢のパトリシア。婚約者のフィリップが、巨乳じゃないと女として見れない、と話しているのを聞いてしまう。
パトリシアは、小さい頃に両親を亡くし、母の弟である伯爵家で、本当の娘の様に育てられた。お世話になった家族の為にも、幸せな結婚生活を送らねばならないと、兄の様に慕っているアレックスに、あるお願いをしに行く。
燻らせた想いは口付けで蕩かして~睦言は蜜毒のように甘く~
二階堂まや
恋愛
北西の国オルデランタの王妃アリーズは、国王ローデンヴェイクに愛されたいがために、本心を隠して日々を過ごしていた。 しかしある晩、情事の最中「猫かぶりはいい加減にしろ」と彼に言われてしまう。
夫に嫌われたくないが、自分に自信が持てないため涙するアリーズ。だがローデンヴェイクもまた、言いたいことを上手く伝えられないもどかしさを密かに抱えていた。
気持ちを伝え合った二人は、本音しか口にしない、隠し立てをしないという約束を交わし、身体を重ねるが……?
「こんな本性どこに隠してたんだか」
「構って欲しい人だったなんて、思いませんでしたわ」
さてさて、互いの本性を知った夫婦の行く末やいかに。
+ムーンライトノベルズにも掲載しております。
【R18】愛され総受け女王は、20歳の誕生日に夫である美麗な年下国王に甘く淫らにお祝いされる
奏音 美都
恋愛
シャルール公国のプリンセス、アンジェリーナの公務の際に出会い、恋に落ちたソノワール公爵であったルノー。
両親を船の沈没事故で失い、突如女王として戴冠することになった間も、彼女を支え続けた。
それから幾つもの困難を乗り越え、ルノーはアンジェリーナと婚姻を結び、単なる女王の夫、王配ではなく、自らも執政に取り組む国王として戴冠した。
夫婦となって初めて迎えるアンジェリーナの誕生日。ルノーは彼女を喜ばせようと、画策する。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる