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本編

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(妙な展開になってしまったわ……)

 ひとまず客室のベッドの上で、アーサー兄さまから「特別な体液」を入手することになった。
 アーサー兄さまが風呂に入りたいと言い始めたのだ。
 湯浴みをしてもらった後、騎士団の洋服は脱いでもらって、アーサー兄さま専用の寝間着に着替えてもらった。
 作りかけの惚れ薬の入ったフラスコをベッドサイドのテーブルに置いた。

「リーリア、お前も風呂に入ってくると良い」

「? 分かりました」

 そうして、客室に戻ると、寝間着姿のアーサー兄さまがベッドの上でくつろいでいた。

(お風呂上がりのお兄様もカッコいい……)

 ドキドキしながら彼のそばに近づく。
 まるで新婚が初夜を迎えたみたいだなんてことを思ってしまう。

(ち、違うんだから、これは依頼の一環で……)

 浮かんできた想像を頭の中で打ち消しながら、ベッドの上に乗った。
 そばには完成間際のフラスコ。

(採取スタンバイ)

 とはいえ緊張してカチコチに固まってしまう。
 対してアーサー兄さまには大人の余裕が漂っていた。

「それではどうぞよろしくお願いいたします」

「ああ、分かった、いつもしているみたいにするから」

「い、いつも……!!」

 それを聞いて顔が真っ赤になってしまう。頬を両手で挟んで相手の顔が見れなくなった。

「誤解しないでくれ、リーリア、本能的に仕方がなくてだな……!」

「も、もちろん分かっています!」

 兄さまも男性なのだ。

「ええっと、本当に裸の絵画なんかは必要ありませんか?」

「大丈夫だ、俺にはお前からもらったこれがあるから……ああ、おかしなことを話したな……」

 そうして、彼は白いハンカチーフを手にしていた。

(昔、私が刺繍してプレゼントしたものだわ……)

 白いものを汚したくなる願望の人たちが一定数いるという。

(アーサー兄さまもその類の趣味をお持ちだったのね……)

 人は見かけによらないというが、本当にその通りだ。

「すまない、本人に話す内容じゃなかったな」

「いいえ、誰にでも人には言えない趣味があると思いますから……!」

「?」

 アーサー兄さまは不思議そうな顔をしていたが、下衣をくつろげると男根を取り出した。

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