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第22話 聖女と水竜
しおりを挟む海に宝玉が落ち、天に向かって光の柱が立った。
「光が……!」
海に棲む竜になったガウェインの背に乗るシレーナは、目の前の出来事を呆然と見つめる。
光の柱から溢れた光は周囲を包み込み、放射状に拡がっていく。
シレーナとガウェインの身体を透過した光は、エルフの住む島まで拡散していった。
ひとしきりまばゆい光を放った後、光はまた収束し、跡形もなく消えてしまう。
一瞬の出来事だった。
眩しくて開けられなかった瞳を、シレーナはゆっくりと開く。
まるで、光の柱など出現してはいなかったかのように、海はいつもの海だった。
彼女は、島に目をやる。
霧なのか靄のような何かに包み込まれていた島だったが、それは全て払われ、元の緑生い茂る風景へと戻っていたのだった。
(霧が深い島だと思っていたけれど、そうじゃなかったの?)
シレーナの身体の下にいる竜が、ゆっくりと身体をうねらせる。
そうして彼女は、陸地へと運ばれた。
竜の体から降りたシレーナは、彼の大きな鋭い牙を持つ下顎をそっと撫でる。
「ガウェイン……ありがとう。さっきの光はなんなの……?」
だが、水流はグルグルと鳴くだけで、彼女にはさっぱり何を言っているのかが分からない。
竜が顎を擦寄らせてくるので、シレーナも頬を寄せた。
ちょうどその時、海賊に負けて浜辺に倒れていたエルフ数名たちが、身体を起こした。
「あ……」
(逃げたほうが良い……?)
悩むシレーナだったが、いつもとエルフの皆の様子がおかしい事に気づき、その場に留まることにした。
「あれ……? おかしいな、どうして俺たちは浜辺にいるんだ?」
「確か、フロッシュ様に……フロッシュって誰だ……?」
エルフ達の困惑した声が聴こえてくる。
(皆様子が変だわ……フロッシュ様を知らない……?)
すると、竜の姿をしたガウェインとシレーナに、エルフ達が気づき、悲鳴を上げ始めた。
「島の守り神が覚醒なさっている!!」
「どうして!?」
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「シレーナ、早く……!」
皆が口々に、シレーナのことを呼ぶ。
彼女を心配している皆の様子に、シレーナ本人は困惑した。
「皆、どうしたの……? 私は魔女なんじゃ……?」
混乱するシレーナは、ガウェインの巨大な下顎にしがみついた。
その時――。
「助けてくれ!」
エルフの村の方から、青年が駆けてくる。
「どうした!?」
青年は叫んだ。
「エルフの村が焼けているんだ!!!」
(エルフの村が……!?)
シレーナは振り向く。
――村の方からは、黒煙が立ち込めていたのだった。
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