【R18】海賊騎士は聖女に甘く溺れる

おうぎまちこ(あきたこまち)

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第21話 光と竜と

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 グラムが手にした宝玉から放たれた光が、ガウェインに直撃してしまった。
 閃光とともに、姿を消したガウェインだったが――。

 海賊船の真下にある小舟の上に、ハーフエルフの銀髪の少女シレーナと、エルフの美男子グラムが乗っていた。
 突然、激しく海面が揺れ動き、小舟もグラグラと揺れ始めた。

「なに……!?」

「なんだ……!?」

 揺れに耐えるため、シレーナとグラムは、木で出来た船に跪いた。
 なかなか揺れがおさまらない。

(船の端をつかまないと落ちちゃう……!)

 そうは思ったシレーナだったが、そのままずるりと体勢を崩してしまう。

「きゃっ……!」

「シレーナ!」

 持ち崩した彼女は、そのまま荒れ狂う海の中へと飲み込まれてしまった。
 
(苦しい……!)

 海の中で、シレーナは必死に手足をばたつかせる。
 シュミーズドレスが水を吸い、どんどん重くなっていく。
 彼女がもがけばもがくほどに、海面は遠くなっていった。
 口からはごぼごぼと、空気が逃げて行ってしまう。
 海のうねりは強く、彼女の身体を引きちぎってしまいかねない程だった。

(ああ、私は、もう……)

 彼女の脳裏に、藍色の肩先まである髪に、自分と同じ黄金の瞳をした、端正な顔立ちをした青年の姿が浮かぶ。

(ガウェイン……)

 初めて出会った人間の異性。
 憧れていたグラムとは違い、紳士的ではなく強引なところもあったけれど、心根は優しい男の人。
 声の出ないシレーナの話を、遮らずに、一生懸命分かろうと努力してくれた人。
 誰からも大事にされてこなかったシレーナの、身体と心を大事にしてくれようとしていた――。
 彼女の声が出た時に、自分のことのように優しく喜んでくれたりもした。
 気持ちがはっきりとしないまま、どんどん惹かれていく彼と結ばれてしまったようなところもあけれど、お互いに「好き」だと言い合うことの出来た彼。

(ガウェインに、最期に『ありがとう、大好き』って伝えたかった……)

 意識が朦朧とするシレーナは、海底に沈みながら、そんなことを考える。

(ガウェイン、さようなら……)

 届かない程に遠い、光の差す水面へと、シレーナが手を伸ばした、その時――。

(え――――!?)

 突然背中を、何かに圧される感覚があり、そのまま彼女の身体は海面へと上昇していく。
 
 一瞬、身体に鋭い痛みを感じた後、ざぱぁんと大きな音を立て、彼女の顔が外へと飛び出した。
 そのまま、一気に空気が肺へと送り込まれ、シレーナはごほごほとむせ込んだ。
 そうして、彼女の身体は、海賊船よりも遥かに高い位置へと浮上していく。

「なに――――――!?」

 困惑する彼女は、自身が何か硬い鱗に覆われた生き物の身体の上に乗っていることに気づいた。
 シレーナの身体何人か分の頭に、少しだけ明るい藍色をした、盾のように硬い鱗、腹部も尖った鱗に覆われた、まるで蛇のような長大な生き物――。

 彼女の耳に、エルフの美青年グラムの叫びが聞こえる。

「――伝承の、海に棲む竜!?」

 そう、シレーナは光り輝く鱗に覆われた、竜の身体の上に乗っていたのだった。

 竜は、蛇のごとくうねりながら、海中を這うようにして、海賊船の近くにたたずむ小舟の近くへと向かう。

(なんだろう、この竜の身体の色……異形の化け物の上に乗っているはずなのに、心が休まる感じ……)

 シレーナは、ちらりと見える竜の巨大な瞳の色を見て、確信を得た。

 その瞳は、黄金色をしている。


「ガウェイン――!!」


 彼女が名を呼ぶと、その通りだといわんばかりに竜が哭いた。

 風と水面を震わせるような大きな声が、周囲に拡がっていく。

 竜の頭は、エルフの美青年グラムへと迫った。
 異形の怪物が嘶くと、強風が強く、グラムの手から宝玉が離れる。

「宝玉が――――!」

 そのまま、ほのかに光る玉が海の中へと落ちたと思いきや――。


 海の中から天に向かって、光の柱が出現したのだった。



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