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第17話 海の上で――※

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 初めて繋がり合い、甘い余韻に浸っていたガウェインとシレーナの二人。
 副船長室に二人、穏やかな空気が流れている。
 シレーナの蜜を吸ったことで、ガウェインの傷は綺麗に塞がってしまっていた。
 裸のまま、繋がりあったままで抱きしめ合う二人の肌は、互いの汗で吸い付きあっている。
 彼女の額に張り付いた銀色の髪を、ガウェインが優しく払う。

「シレーナ……これからも、お前を大事にする」

 そう言うと、彼は彼女の額にちゅっと口づけを落とした。

「ガウェイン……すごく嬉しい」

 シレーナは、花が綻ぶような笑みを浮かべる。
 すると、頬を赤くしたガウェインが、彼女の身体を抱き寄せた。

「シレーナ……」

「ガウェイン……あっ……」

 いつの間にか、彼女は彼に口付けられていた。

「あっ……は……あっ……」

 情熱的に唇を求められ、シレーナは喘ぐ。
 口づけはどんどん深くなっていき、彼女は息継ぎを必死におこなった。

「はっ……んっ……ガウェイン……」

「シレーナ……」

 彼女の背を、彼の大きな手が撫ではじめる。

(あ、またガウェインのが、私の中で大きく――)

 シレーナの頬が赤らんだ。

「ガウェイン、あ、あの――」

 だが、彼女が声をかけると――。

「あれ……?」

 ――ガウェインの黄金の瞳がとろんとしていた。

(この間もあったような……?)

 シレーナに手を出してしまいそうだと。ガウェインを縄で縛った出来事が山小屋であったが、その時の彼の反応を思い出した。

「ガウェイン、どうしたの?」

 シレーナの問いかけに、彼ははっと気づく。

「ああ……少しだけ、俺の身体が俺のものじゃないみたいで――なんて言ったら良いんだ……この間みたいな感じは、昔も……」

「俺のものじゃない……? あの日だけじゃなくて昔もあったの? なにが――?」

 彼女が問いかけた時――。


 ガタン!


 ――海賊船が激しく揺れた。

「何!?」

「どうした!? 敵襲か!?」

 彼は欲棒を、彼女の中からずるりと引き抜く。
 シレーナは、身体の中ならガウェインがいなくなったことで少しだけ寂しさを覚えたが、すぐに気を取り直して、落ちていたドレスを身にまとった。
 ガウェインも、服をまとう。
 とにかく船の揺れが強い。遠くからは砲弾の音も聴こえた。
 紺碧のアビコートを羽織った彼の腕に、シレーナはしがみつく。

「ガウェイン」

「シレーナ、大丈夫だ。状況を確認するために、外に出るぞ――身体がきついだろう? 俺が抱えて連れて行ってやる」

 彼の筋肉質な両腕に、彼女は横抱きにされた。

(なんだか照れくさい……)

 シレーナは気恥ずかしさを覚える。

「もう俺は、お前と絶対に離れない――」

 そうして二人は、甲板に向かうことになったのだった。 



※※※



 海賊船の甲板には激しい雨粒が、断続的に叩きつけていた。
 もちろん、雨はガウェインとシレーナも容赦なく濡らしていく。
 黒地に骸骨の絵が描かれた海賊旗ジョリー・ロジャーが、強風に煽られ、バタバタと激しい音を鳴らしていた。
 帆は風をはらみすぎて、膨張して見える。
 そんな中、男達が大声を上げて合図を交わし合っていた。
 海賊らに混ざり、シレーナを抱き寄せたままのガウェインが叫んだ。

「アーサー! 状況は? いったいどうなってる?」

「見ての通りだよ! この間みたく、突然嵐に巻き込まれたんだよ!」

 操舵の近くにいる、黒髪に眼帯をした船長アーサーが叫び返した。
 ガウェインはまた声を荒げながら、アーサーの近くまで走る。

「この嵐は恐らく、人為的なものだ! 数日前に、俺が嵐に巻き込まれた時の嵐に煎ている!」

「人為的かはさておき、まあ、確かにここまで予兆なしで嵐が起きるのもおかしいか――まあ、何にせよ、エルフの島に避難するしかねえか――」

「すまない、おそらく罠だ――だが、この嵐を引き起こしている宝具か何かを奪ってくることは出来ていない――」

 シレーナを抱きかかえたままのガウェインは、呻くように伝えた。
 アーサーは少しだけ悩んでいるようだったが――。

「敵の罠だったとしても、船員達の命を守らなきゃならない。仕方ない、船を島に戻せ――!」

 船長の叫びを聞いた操舵士は、舵をこれまでとは反対の方へと向ける。

「すまない、シレーナ……絶対にお前を島から出してやるから――」

 結局、海には出れず、シレーナはまたエルフの里へと引き戻されたのだった。



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