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第6話 何をされるか分からない※

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 昨日、両腕を縄で縛った状態のガウェインの昂りが落ち着き、眠りについたのを確認した後、シレーナも隣で眠った。
 早朝、彼女が目を覚ますと、彼はすでに目を覚ましており、椅子に座って、なにかにせっせと取り組んでいる。

(ガウェイン、何を……?)

 彼女がむくりと身体を起こしていると――。

「シレーナ、起きたのか? 昨日は悪かった……」

 ガウェインが綺麗な眉をひそめながら、謝罪してきた。

(昨日の……動物が発情したみたいな、あれは……いったい何だったのかしら……?)

 気にはなったが、ひとまずシレーナは、両手を横に振って、ガウェインに気にしないように伝えた。

「すまないな……この借りは、必ず返す……」

 彼の言葉を聞いて――。

(ガウェインは、とても義理堅い男性なんだわ……)

 シレーナは、そんなことを考えた。

(そういえば、ガウェインは何をやっているんだろう……?)

 まだ寝起きでぼんやりとしていた彼女の元に、作業が終了したガウェインが歩み寄ってくる。
 すると――。

「――――っ!」

 突然彼に足首を掴まれてしまい、シレーナの身体はびくんと跳ねた。

(まだガウェインのおかしな様子は続いているの――!?) 

 動揺する彼女のスカートがめくられ、秘部をさらけ出される――。

「まさか、何も穿かずにいたとは思わなかったが……ちょうど良さそうだな――」

 ――気づけば――。

 ガウェインによって、彼女はショーツを着せられていた。
 とろりと滑らかな肌触りで、シレーナは驚く。

(あれ……? この下着は……? 絹? 新品に見えるけど……? 私はごわごわの綿のものしか……)

「昨日の詫びだ――」

 昨日、おかしな様子のガウェインが、シレーナの下着を破り捨てた。
 手持ちの下着が少ないので、後から縫い直すつもりで、洗って室内に干していたのだ。ちなみに、テーブルに目をやると、そちらの下着も元に戻っている。

(何が起きて――――? ガウェインは女の人が着る下着を持ち歩いたまま、海で遭難したの……!?)

 困惑するシレーナに向かって、ガウェインが口を開いた。

「今お前が穿いている下着は、手持ちの絹の手巾を裂いて、俺が作ったものだ」

 さらりと彼は言ったが――。

(人間の男の人は、裁縫もこなすのね……!)

 勘違いしたシレーナは、ペコペコと彼に向かって頭を下げる。

「――俺の父親が、特段器用な男でな――多忙な人だが、母によくドレスを作ったりしてプレゼントしたりするような人で……俺が教えてくれといったら、『てめえで見て覚えろ』と言って、よく作業の様子を横で眺めていた……」

(ガウェインの実家は、仕立て屋さんか何かなのかしら――?)

「見て覚えろというわりには、なんだかんだで父は俺に色々教えてくれた。褒めてもくれるし……気付けば俺も出来るようになったことは多かったな」

 彼は続ける。
 
「なんでも器用にこなす偉大な父だ。自分も大人になったら、当然、自然とそういう男になれると思っていたが――そうではなかったな……」

 ガウェインは、少しだけ寂しそうに告げた。

 ――職人の道も険しいのかもしれない。

 ふと、ガウェインが表情を引き締めた。

「それもそうだが――シレーナ、男の横で眠るのは、あまり感心できないな……」

(――――!)

 ――シレーナの身体は、またもやベッドに倒れ込んだ。
 彼女の銀色の長い髪が、白いシーツの上に拡がる。
 彼の顔が彼女の顔に近付いたかと思うと――。

「――っ!」

 ガウェインの唇が、彼女の首筋をきつく吸い上げた。
 ちゅっ、ちゅっと音を立てながら、彼女の鎖骨から胸の谷間まで、なだらかな肌を、彼の唇が吸っていく。

「あっ……んっ……!」

「お前は隙が多い――気を付けておかないと、何をされるか、分からないぞ」

 そのまま、彼の大きな手が、彼女の乳房を包み込んだ。
 片方は、ドレスの襟元から覗くなだらかな部分を吸われ、片方はゆっくりと形を変えられ、シレーナは喘ぐ。
 
「あっ……ゃあっ……んっ……」 

 彼の舌が、彼女の唇を割る。
 何かカタンと音が聴こえたが、それ以上に、二人の唇から発するくちゃんくちゅんと鳴る水音にかきけされてしまった。

(魔女だと言われて育ったから、こんなに私に接近してくるのはガウェインぐらいで――)
 
 段々と快楽に溺れ、シレーナは思考がままならなくなる――。

 二人の唇が離れる。

「シレーナが良いなら、このまま――」

 ガウェインが何かを言いかけた、その時――。

 彼は、何かの気配にはっと気づく――。

「まさか――」

 彼がシレーナの身体の上で、体勢を整えようとした瞬間――。

「ぐっ――」

 ――彼の頭の上に何かが覆いかぶさった――!

 ガウェインはうめき声を上げる。

(な、何――?)
 
 彼の頭を覆う何かは、ライトブラウンのフサフサとした何かで、もそもそと蠢いている。
 シレーナも突然の出来事に、呆然とした。
 うごめく何かをガウェインの手が掴み、引き剥がす――。
 息が出来なかったのだろう、深呼吸をした後に、ガウェインが口を開いた。

「モモ――やはり、お前か――」

 彼が手に持つ何かの正体は――。

「しゅーっ!」

 ――一声鳴いた……。

 首根っこを掴まれた、もふもふした生き物――大きさは、ガウェインの頭2つ分ぐらい――は、ガウェインに嬉しそうにしがみつく。

(知り合い――?)

 戸惑うシレーナにガウェインが答える。

「俺の飼いモモンガのモモだ――」

(――飼いモモンガ――?)

 聞き慣れない言葉だが、人間の世界では一般的なのかもしれない――。

 モモンガのモモは、シレーナの方を振り向くと、きーーっと威嚇をはじめた。

(なんだろう……動物の言葉が分かるわけじゃないけど――)

 シレーナはひしひしと、モモにライバル視されているのを肌に感じた――。

「モモ。シレーナが探していた聖女だ。お前、他のやつらの居場所は――」

 ガウェインがモモに問いかけはじめた時、山小屋の扉が叩かれる音がする。

「シレーナ、話があるんだ――」

 外から聴こえた声はグラムだ――。
 ガウェインとモモを慌てて暖炉に隠し、シレーナは小屋から出る。
 エルフの美男子グラムは、なんだか切迫した表情を浮かべていた。

(グラム、どうしたのかしら――?)

 その時――。

「シレーナ――」

 彼女の身体は、グラムに引き寄せられた。

 そのまま、抱きしめられてしまい、シレーナは戸惑う。

「シレーナ――私を助けてほしい」

(私がグラムを助ける?)

 予想外の出来事に、彼女は動けなくなってしまったのだった――。



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