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第2話 小屋に招く※
しおりを挟む「金の瞳……お前が島の聖女か――」
しばらくの間、海に打ち上げられていた青年とハーフエルフの少女シレーネは、砂浜に座り込んだまま、互いの黄金の瞳を交わし合う。
穏やかな波が引いては打ち寄せ、潮の香りを二人に届けてきた。
(私が聖女……? この人は何を勘違いしているの……?)
シレーネは胸に当てた手をぎゅっと握った。
目の前に座り込んでいる、コバルトブルーを思わせる藍色の肩先まである髪に、金色の瞳をした青年。
彼は、エルフの村で魔女と呼ばれているシレーネのことを、聖女と呼んだ。
「聖女様自ら、熱烈に俺を求めてくれるなんて、仕事が楽に終わりそうだな――」
青年がそう言ったかと思うと――。
「――っ!」
気づけば、シレーネの視界が反転し、眩しい空を見上げる格好となった。
背中から、ざらざらとした砂が入り込んでくる。
そんな彼女の視界に、さっと影が差した。
「ちょうど俺の目的が、お前を探すことだったんだ――手間が省けたな――」
いつの間にか、シレーナの身体に、青年が覆いかぶさってきていた。
言葉を発することが出来ない彼女は、男が身体の上に乗ってきても、大声を上げることも出来ない。
「あっ……は……ぅ……」
またもや、彼の唇に彼女の唇は塞がれる。くちゅりくちゅりと音が立ち、自身の唇から聴こえるのだと思うと、シレーナに羞恥が走る。
口の中の粘膜への、青年の舌による刺激だけで、彼女の身体は今まで感じたことがないような、ぞくぞくとした感覚が彼女の中を駆け巡った。
口の中を犯されている間に、彼の大きな右手が、彼女の左胸の膨らみをおもむろに掴んだ。
「-―――っ!?」
シレーナが驚いたのも束の間、彼の手が、彼女の膨らみの形を荒々しく変形させる。
「あっ……あっ……ゃあっ……んっ……」
「セイレーンの鳴き声みたいに、さそってくるじゃないか――嫌だと抵抗もしてこないし……聖女とは言うが、生娘ではないのか――?」
彼女の声を聞いて昂ぶった青年は、再度彼女に荒々しく口づける。
「はぅっ……ぁあっ……んんっ……」
迫害されて育ってきたシレーナには性の知識がほとんど身につかなかった。そもそも、男女で何かをする前に、神に捧げられるはずだったので、誰も教えてはくれなかったのだろう。
未知の出来事への恐怖と、言いようのない快感が、彼女の背筋を這っていった。
「あっ……んんっ……」
気づけば、ショートスカートの中に、彼の大きな手が侵入しており、彼女の太腿をまさぐっている。びくびくとシレーナの身体は、白魚のように跳ねあがった。
「ああ、聖女なのに、声は魔性の人魚だな――」
そのまま下着の中に、彼の指が侵入したかと思うと、蜜溝をぬるぬると泳ぎ始める。しばらく動いた後、彼の指が敏感な芽に到達する。そのままゆっくりと、彼の指が充血する芽の周囲で遊びはじめた。
乳房を弄ばれ、誰にも触れられたことのない花弁の隙間や芽を指でいじられ、シレーナの頭の中がふわふわ、ちかちかと点滅してくる。
(何――? どうしたら――? このままじゃ、頭がおかしく――)
そうして――。
「んんっ……あっ……ああっ――!」
小さく悲鳴を上げた後、彼女の身体が一際激しく波打った。
これまでに感じたことのないような、雷に打たれたかのような快楽が、彼女の全身を駆け抜ける。
陽に当てられ、青年に身体を撫でまわされ、シレーナの頬は紅潮していた。
荒い呼吸を繰り返す彼女の半開きになった唇の間に、青年の舌が差し入れられ、再度彼女の口の中を犯しはじめる。
(なに――? どうしたら――? これ以上、何が起きるというの――?)
その時、芽を弄っていた指が、彼女の狭穴へと向かう。
中指が侵入しようという時――。
「――――っ!」
シレーナに痛みが走り、可愛らしい顔を歪めた。
「ん……?」
しばらく彼女の様子を見ていた青年だったが――。
「喘ぐだけの生娘か――興が醒めたな――」
そういうと、シレーナの身体から離れ、彼女の衣服を整えた。
起き上がり、身を縮こませる彼女に向かって、青年が声をかけてくる。
「おい――助けてくれた礼を言う。あとは、勝手に身体を触って悪かった――島に不慣れだ――よければ、俺を案内してくれないか――?」
しばらく困惑したシレーナだったが――。
(同じ金の瞳……人間の男の人……)
自分と同じ何かを、彼に感じ取った彼女は、ひとまず青年を、シレーナの住む山小屋に連れて行くことにしたのだった。
※※※
山小屋に着くと、シレーナは青年に湯あみを勧めた。
物置を探すと、人間だったという彼女の父親が来ていたと思われる衣服が出てきた。
ひとまず、シレーナは湯上りの青年に、その衣服を手渡すことにした。
彼は渡された衣類を見ると、ぽつりと呟く――。
「ああ、やはり……騎士の……」
(騎士の……?)
何か気になる発言をしていたが、彼女は言葉が出ないので、問い返すことが出来なかった。
ひとまず何か口に出来るものをと思い、シレーナは青年にクミンのスープを手渡す。
「わざわざ、飯の準備までしてくれたのか、ありがたいな……」
スープをひとすすりした後、彼は名を名乗った。
「俺の名はガウェイン――お前は――?」
少しだけ低い彼の声は耳障りがとても良いものだった。
彼女はこくんと頷くと、口をぱくぱくさせながら名を呟く。
「セレーナ? シレーヌ? シレーナか……シレーナ、浜辺でも思ったが……お前は声が出せないのか?」
彼にそう言われ、シレーナは眉をひそめながら、再び頷いた。
少しだけ困ったような表情を浮かべ、ガウェインは独り言ちた。
「――嬌声は上げていたから、全くでないわけじゃないんだろうが――心因性のものか――?」
顎に手を当て、ぶつぶつと彼は呟きはじめた。
(心因性のもの――?)
シレーナは、自分自身でも、声が出なくなった原因が分からなかった。
単純に、人と接する機会が奪われていたせいかと思っていたが、青年の見解はどうやら違うもののようだった。
「まあ、目的とは関係がないか――シレーナ、お前に聞きたいことが――――っ……!」
会話の途中、ガウェインはうめき声を上げる。
慌てて、シレーナは彼のそばに寄った。彼は左の脇腹を抑えている。
急いでベッドで横になるように、彼女は彼に勧めた。
どうやら彼は怪我をしているようだった。急いでシレーナは、包帯を手に取ると、彼のワイシャツを脱がせる。
「お、おい……お前、待て……」
ガウェインの制止も聞かず、彼女は彼の手当てをおこなった。
(よし、これで良し……!)
謎の達成感に包まれたシレーナが顔を上げると――。
「……大胆な女だな……」
ガウェインはそっぽを向いていた。彼はなぜか顔を真っ赤にしている。
(……どうしたのかしら?)
「まあいい……助かった……」
シレーナは余った包帯をしまいに向かおうとすると――。
「おい」
彼女の手首を、ガウェインが掴んだ。
「お前に試したいことがある――俺と――」
その時――――。
「シレーナ? 小屋の中にいるなら返事をしろ――いや、返事は出来ないか――」
名を呼ばれた彼女の身体はびくりと震える。
(グラムの声――)
彼女ははっと、腕を掴んだガウェインの姿を見た。
彼の表情が緊張の面持ちへと変化する。
「どうやら人間が島に流れ着いたらしいんだ――シレーナの元には来ていないか――? 入るぞ――」
ガチャリと小屋のドアノブに手がかかる音が聴こえた――。
(どうしよう、このままだとガウェインは捕まってしまう――それとも、村の人々に相談して、ガウェインを預けてしまう――?)
シレーナに決断の時が迫っていたのだった――。
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