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2日目

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 ヒルダは最後の抵抗を試みる。
 なんとか口を動かした。

「待ってくれ……!」

「なんだい?」

 ジークフリートは拍子抜けしたような表情を浮かべた。

「気が長くて、千年近く耐えた俺だけど、これ以上は待てないよ。もう遊びは終わりだ。君の魂に限界が来る前に――俺の力――命を君に託さなきゃいけない」

 真剣な表情を浮かべる相手に向かって告げる。

「貴殿は……私と既成事実を作るだけ作って、逃げだすつもりなのだろうか?」

「え……?」

 ジークフリートの相好が崩れた。

「人聞きの悪い言い回しはしないでくれよ。君には俺が、そんな最低なことをする男に見えるのかな?」

 ヒルダは……
 こくりと頷いた。
 すると、ジークフリートが長く息を吐き出すと、髪をかき上げながら続けた。

「まあ、言われてみれば似たようなものだしね。それに、そもそも君から記憶を奪ったのは俺だ。仕方ないね」

「今の私からすれば貴方は強姦魔だ。貴方はそれで良いのだろうか?」

 うっすらと記憶が戻りつつあるから、ジークフリートがそんな理由で身体の関係を結ぼうとしていないことなんて百も承知だ。
 だけど、どうにかして、ジークフリートが消滅する事態を防ぎたかった。

(意味のない時間稼ぎかもしれないが……)

 すると、ジークフリートが淡く微笑んだ。

「……このまま強姦魔扱いなのも、ちょっとだけ寂しいけれどさ。俺がどう思われようが構わないんだ。君がおかしな運命から逃れられさえすればさ。それに、逃げる君をやっと捕まえることができたんだから。あとは――」

「ひゃっ……!」

 ジークフリートがヒルダの首筋をゆっくりと食んだ。
 熱を孕んだ吐息がかかって、彼女の身体はびくりと跳ね上がった。

「異常者扱いの方が、君の魂に俺という存在が刻みこまれそうだ。何よりも、俺は君の血となり肉となり、君の全身を巡り続ける。そもそも、君の中から俺の記憶は消滅する。俺は君の中で永遠に君の一部となって生き続ける。ああ、なんて甘美な響きだろう」

 再び、花弁の間を先端がぬるぬると蠢きはじめる。

「ふあっ、ああっ……あっ……」

 粘膜同士が触れ合うたびに、身体がびくびくと跳ね上がった。

「ヒルダ、熱くて重いからさ。大丈夫、ちゃんと痛くないようにしてあげるから、さあ、入るよ……ちゃんと背中に掴まっておいで」

 彼が腰を揺らした後、蜜口に熱杭が侵入を果たしてきた。
 両脚の間から全身に向かって灼熱が駆ける。
 硬く熱せられた剣の侵入はまだ始まったばかりだ。

「っあっ……ああっ……」

「ああ、やっと君の中に潜り込める……すごく幸せだ……ほら、そんなに力まないで、まあ、君に立てられる爪痕なら大歓迎だけどさ」

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