10 / 10
10
しおりを挟むその後、時間停止の魔法が切れる前に、二人して執務室を抜け出して、オズワルドの寝室に向かった。
そうして、オズワルドは仕事に戻り、エリーは一日休みをもらった。
迎えた夜、エリーは真実を知ることになる。
「ええっ……!? 再会したあの日、オズワルド様は私の生家にいって、私と小さい頃に交わした婚約が有効かどうか確認に行ってたんですか!?」
目の前のオズワルドはこくりと頷いた。
エリーの生家からは手紙が送られていたようなのだが、本人の元には手違いで届いていなかったようだ。
婚約者になったのに近くで暮らすのも拒否されていると思ったオズワルドは、焦燥に駆られ、どうにかしてエリーに逃げられないように必死だったらしい。
「だけど、時間停止の魔術を使っている間に、き、キスの練習をしたり、しかも夜這いをしかけてくるなんて、他の女性だったら引いていると思います」
すると、オズワルドは犬のように、しゅんとうなだれていた。
「すまない。だけれど、『オズ兄ちゃんみたいな魔術師さんになる』と言っていた君の言葉を励みにここまで頑張ってこられたところがあって……君を見たら血が昇って、どうにかしないとと焦りすぎてしまって……」
そんな彼を見て彼女はそっと手を差し出す。
「今回は許しますから。それに、オズワルド様が突っ走りやすいのは分かりました。これからはちゃんと色々と面と向き合って話し合っていきましょう」
彼がぽつりぽつりと口をひらく。
「ありがとう、エリー」
そうして、エリーの手に青玉の指輪をオズワルドが嵌めた。
「勘違いで色々と順番が前後してしまったが……ずっと昔から、俺にはお前だけだよ。愛している、エリー、これからもそばで公私ともに支えてほしい」
「はい、オズワルド様――オズお兄ちゃん、いいえ、オズワルド」
二人は指を絡ませると、白いベッドの上に転がって、今度はしっかりと愛を確かめ合ったのだった。
その後――。
気付けばエリーに嫌がらせをしていた女文官は別のどこかに飛ばされることになっていた。
それからまたしばらくして、魔法騎士団総出で盛大な結婚式が催されることになった。
そうして――。
あの朝礼の日。
実はとっくの昔に、ショーンの時間停止の魔法は解けてしまっていて……二人の情事をしばらく眼前で見せつけられていて――それどころか、しばらく後にはほぼ全員の魔法が解けてしまっていて、皆が気を利かせて時間停止したふりをして必死に固まったふりをして過ごしてくれていたことに――幸せいっぱいの当の本人たちは気づいていないのだった。
69
お気に入りに追加
391
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
洞窟ダンジョン体験ツアー案内人役のイケメン冒険者に、ラッキースケベを連発してしまった私が患う恋の病。
待鳥園子
恋愛
人気のダンジョン冒険ツアーに参加してきたけど、案内人のイケメン冒険者にラッキースケベを連発してしまった。けど、もう一度彼に会いたいと冒険者ギルド前で待ち伏せしたら、思いもよらぬことになった話。
泡風呂を楽しんでいただけなのに、空中から落ちてきた異世界騎士が「離れられないし目も瞑りたくない」とガン見してきた時の私の対応。
待鳥園子
恋愛
半年に一度仕事を頑張ったご褒美に一人で高級ラグジョアリーホテルの泡風呂を楽しんでたら、いきなり異世界騎士が落ちてきてあれこれ言い訳しつつ泡に隠れた体をジロジロ見てくる話。
ブラック企業を退職したら、極上マッサージに蕩ける日々が待ってました。
イセヤ レキ
恋愛
ブラック企業に勤める赤羽(あかばね)陽葵(ひまり)は、ある夜、退職を決意する。
きっかけは、雑居ビルのとあるマッサージ店。
そのマッサージ店の恰幅が良く朗らかな女性オーナーに新たな職場を紹介されるが、そこには無口で無表情な男の店長がいて……?
※ストーリー構成上、導入部だけシリアスです。
※他サイトにも掲載しています。
日常的に罠にかかるうさぎが、とうとう逃げられない罠に絡め取られるお話
下菊みこと
恋愛
ヤンデレっていうほど病んでないけど、機を見て主人公を捕獲する彼。
そんな彼に見事に捕まる主人公。
そんなお話です。
ムーンライトノベルズ様でも投稿しています。
黒の神官と夜のお世話役
苺野 あん
恋愛
辺境の神殿で雑用係として慎ましく暮らしていたアンジェリアは、王都からやって来る上級神官の夜のお世話役に任命されてしまう。それも黒の神官という異名を持ち、様々な悪い噂に包まれた恐ろしい相手だ。ところが実際に現れたのは、アンジェリアの想像とは違っていて……。※完結しました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる