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 そのまま彼が、尖ってしまった赤い実を、まるでお菓子か何かを食べるように口に含んだ。
 そうしてそのまま、彼の舌が突起を転がしはじめる。

「ひゃっ、あっ、あっ、それは……!」

 だんだん、両脚の間がじんじんしてきて、自分でも様子がおかしいことに気づいてしまった。
 紺色のスカートをたくし上げられると、そのままショーツに手を掛けられる。

「だ、ダメですってば、契約違反です! 約束と違いますってば、アルベルト様!」

「メアリー、俺は君の魅力を君に教え込まないといけないと思っているんだ」

「ご、強引なのはダメです!!!」

 そう言うと、彼は止まった。

「そうか……メアリーの意思に反するならダメだな……」

(良かった……アルベルト様が止まったわ……!)


「そうです、こういうことはアルベルト様が本当に好きな人を相手にやるべきです!」


 するとアルベルト様が真剣な顔をして続けた。

「俺が本当に好きな人なら良いの?」

 私はがくがくと顎を縦に振る。


「アルベルト様が本当に好きな人限定です!!!」


 私の言葉を聞いた彼は微笑みながら告げた。

「だったら、このままで問題ないな――」

「え――?」

 どういう意味――?

「アルベルト様、それはどういう意味ですか?」

 問いかける声が震えてしまう。

「メアリー、そんなの決まってる。俺は――」

 彼が何か言いかけた時――。

 コンコン。

 扉をノックする音が聴こえた。

「坊ちゃん、お父様から連絡ですじゃ」

 声を掛けられたアルベルト様は、仕方なしにベッドを降りると声の方向へと向かう。

「ごめん、メアリー、少しだけじいやと話をさせてくれ」

 扉がパタンと閉まった。

(アルベルト様……さっきは何を言いかけたの……? まさか、偽の恋人役じゃなくて、アルベルト様は私のことを本当に――?)

 考えたら、かあっと身体全体が熱くなってしまう。

(でも、そんな、私にアルベルト様に好かれるような魅力なんて――)

 だけど、彼は私の声が可愛いと言ってくれていた。

(じゃあ、アルベルト様は私の声が好きだってこと?)

 声楽部なんかだったらともかく、歌い手でもなんでもないのに――。

(それにしても……話が長いわね……アルベルト様、帰って来ない……)

 彼の様子が気になった私は、ベッドから降りると、乱れた衣服を整えて扉へと向かう。
 立ち聞きは良くないとは思ったが、アルベルト様とじいやさんとの会話に耳を澄ませた。

 すると、とんでもない話が聴こえたのだ。

「海外留学の話に関しては、分かっていたつもりだが……そんなに早くか……? 卒業してからだという話はどうなったんだ?」

「じいやに理由は分かりかねます」

(アルベルト様が海外留学――!?)

 今まで聞いたことがなかった話に、私の足元が崩れ落ちそうな衝撃が襲ってくる。

「分かった、仕方ないな……それで、いつに決まったんだ?」

 じいやさんの答えは無情だった。


「ダイヤモンド・クイーン号の出航に合わせて、来週の日曜日になります」


 (来週……!?)

 ――あまりに唐突に、アルベルト様の恋人役を終了することが決まったのだった。


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