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おまけ「どれだけ離れたとしても」

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 大きな掌が、いつの間にか私の後頭部に回されていて、そのままギルフォードに引き寄せられる。
 相手の地厚い舌が私の唇を割って侵入してきて、口の中に甘ったるさが拡がっていく。
 そのままギルフォードの口付けに翻弄されていると、頭の芯がぼうっとして、ショコラのように蕩けてしまいそうだった。
 しばらく後に、彼の唇がゆっくりと離れると、ギルフォードからは熱のこもった視線で見つめられてしまい、心臓がバクバクと落ち着かない。しかも、色香を孕んだ声音で囁いてくるではないか。

「昔は分からなかったが……今なら、お前の親父さんが俺を嫌う理由も分かる――こんな悪い男に持ってかれるなんざ、嫌で嫌でしょうがなかっただろうからな……」

「ギル……んっ……」

 そのまま隣に座るギルフォードに力強く抱き寄せられ、彼の片脚の上に両膝を立てて跪く格好になってしまった。彼の逞しい胸板に胸が密着する格好になると、相手の体温を感じて、ますます鼓動が落ち着かなくなっていく。
 馬車の揺れに併せて、彼の大きな手で背筋を擦られている内に、もう片方の手がドレスの裾の中へと侵入してきて、太股を直に撫でさすられる。

「あっ……ギル……馬車の中で……待って――んっ……」

 制止は利かず、ますます相手に抱き寄せられると、私の首筋にギルフォードの熱い吐息がかかって、全身がビクンと跳ね上がった。柔らかいけれど硬くもある唇が鎖骨の上を這うと、全身にゾクゾクと快感がさざめく。

「あっ……待ってったらっ……」

 胸の谷間にギルフォードの顔がきたかと思うと、吐息が肌に直接かかって落ち着かなくなってくる。

「待ってというわりに、甘ったるい声で誘ってくるな、お前は……」

「そんなっ……ああっ……」

 少しだけ薄い生地で出来たドレスの上からでも分かるぐらいに尖ってしまった先端を、彼の唇が衣服ごとかじってきた。そのままドレスの襟がはだけていって、露わになった乳房を彼の舌が這う。
 スカートの下では、這いずる手によって割れ目を何度もなぞられてしまい、じわじわと下着が濡れていくのが自分でも分かって恥ずかしくてしょうがない。

「あっ……ギル……だから、待ってって……ひゃあっ……」

「待たない……お前の言うことでも、これだけは聞いてやることができない」

 布越しに淫丘を撫でられ、長い指で陰核を弄られながら、乳頭にざらついた舌で刺激を与えられている間に、どんどんどんどん全身が火照っていって、全身に快感が何度も何度も駆け抜けていく。
 次第に頭の中が、まるでホイップクリームみたいにふわふわ、どんどん白んでいく。

「ふあっ、ああっ、ギルっ……もう、それ以上はっ……ああっ……――」

 相手の唇と指とに翻弄されてしまい、達してしまった身体がビクビクと馬車の揺れに合わせて小刻みに震えてしまった。
 荒い息を漏らす私の唇を、ギルフォードがすかさず奪ってくる。
 達したばかりの身体への愛撫は留まることを知らず、彼の求めは激しくなっていく一方だ。

「あっ……ギル、ちょっとだけ……休ませてっ……」

 すると、一瞬だけ彼の愛撫が止んで、一度きつく抱きしめられる。

「ルイーズ、今日急いで帰ってきたが――お前も知っての通り、俺は明日の朝には一旦国を離れないといけない」

「ギル……」

 海外で活躍している新進気鋭の実業家でもあるギルフォードは、忙しなく国内外を移動している。今日は弟の誕生日に合わせて一時帰国してくれただけで、明日の朝にはまた彼は屋敷を旅立つのだ。

「ギル、一週間ぐらいしたら帰って……くるんでしょう?」

「ああ、だがな――俺は、一秒たりともお前との時間を無駄にしたくないんだよ」

 ――甘い囁きが私の胸を蕩かせてくるだけでなく、かけがえのない時間を大事にしようとしてくれている彼の優しさがじんわりと全身に広がっていくようだった。
 どうしようもなく――彼の真摯な求めに応じたくて仕方がなくなってしまう。

「ギル……」

 彼の想いに応えたくて、私はギルフォードの唇へと自分から唇を重ね、そっと離れた。
 ギルフォードの蒼い瞳が私を優しく映してくると同時に、蕩けるような笑みを浮かべて愛の言葉を囁いてくる。


「どれだけ離れて過ごしたとしても、お前への愛は色褪せることはない――いいや、離れて過ごす分、お前への愛は深く募っていくだろう――どんなに離れていたとしても、俺の心の全て、お前のものだ――愛している、ルイーズ」


 そうして――馬車の中も降りて寝室に戻った後も――その晩は一晩中、彼の愛に包まれて過ごしたのでした。
 

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