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しおりを挟むシンと静まり返った夜の帳の中。
淫らな水音と荒い呼吸とが重なり合っては消えていった。
「あ……清一郎……もっと……来て……ああっ、あ……」
「椿様……」
折り重なった二人の身体が揺れ動く。
椿の華奢な身体の上に跨った清一郎は、獰猛な獣のように激しく腰を揺り動かし、彼女の奥深くを抉るように突き続けた。
彼女の豊満な乳房の先端もふるふると弧を描く。
「あっ、あんっ、あっ……もっと奥に来て……清一郎……」
「言うようになったな、椿様も……」
彼女の背に敷布が擦りつけられると、結合部がぐちゅぐちゅと淫らな音を立てる。
「ふあっ、ああっ、あっ……清一郎……来てる、来てるの……あっ、あ、ああっ……」
「ああ、そんなに……締め付けられると――俺も――……」
肉杭がさらに膨張して蜜道を拡充させた。
さらに何度か肉壁を擦り上げられると、どんどん椿の頭の中が白んでいく。
そうして――。
「ああっ……」
「くっ……」
達した椿の身体が戦慄くと同時に、紅い洞の中へと清一郎が一気に吐精した。
熱い奔流が胎の内を充たしていく。
一度では終わらず、清一郎は何度か精を吐き出してから、彼女の中から肉塊を引き抜いた。
どろりとした泡が二人の肌の上を流れ、布団を濡らしていく。
「椿様……」
「清一郎……」
二人は言葉と唇を何度か交わし合うと、寝室に敷かれた布団の上、裸のまま寝そべって過ごしていた。
まだ室内には愛し合った熱気が漂っている。
しばらく経った頃、清一郎がぽつぽつと話しはじめる。
「俺の母親は貴女の想像するように異国の――独逸の人間だ。日本人の男と交際していてね、そうして俺を妊娠したんだ」
「独逸……確か、私の父も留学したことがあるという……」
椿が小さい頃にはもう既に姿はなかった父親。祖父によく似た白黒写真だけが現存している。
「その……忍がやたらと父の留学話をしていたのだけれど……私たちは……まさか――母親違いの兄妹だったり……?」
少しだけ胸騒ぎがした椿は、ちらりと清一郎の姿を見るとクスリと笑われてしまった。
「貴女の心配するような話ではないよ。貴女の父上が留学に来た頃には、もう俺は生まれていたんだ。それに貴女様もね。だから、母親違いの兄妹ということはない。どうか安心してほしい」
そう言われ、ほっと胸を撫でおろすと同時に、繋いだ指先に力が入った。
「俺の母親は俺を育てながら、別の独逸人の元に嫁いでいた。義理の父親は優しい人だったのを覚えている。だけど――留学してきた君と俺の母親が出会って、人生が一変してしまった」
「え――?」
「君の父親は、最初は日本の血が混じっている俺に対して同情して、色々と遊んでくれるようにんったんだが――そんな君の父親に俺の母親は入れ込んでしまったんだ――そうして、俺達家族を捨てて二人でどこかに行ってしまった」
「そんな……!」
彼がそっと彼女の両手に指を絡めてきた。
「母が出て行ったのだから、親切な義父とも離れないといけなくなった。全てを失った俺は、どうしても君の父上のことが許せなくて――日本に渡って君の家に復讐をしようとしていたんだ。男娼まがいのことをして金を稼いで――そうして、日本へと渡って役者見習いをはじめた」
椿は申し訳なくなって胸が押しつぶされそうだった。
目蓋を伏せた彼女の睫毛に、彼の唇がそっと触れる。
「そんな顔をしないでくれないか、椿様……?」
「だって……私の父のせいで……」
清一郎はぽつぽつと続けた。
「あの日、貴女に拾われたのは本当にたまたまだったんだが――最初の頃はしめたと思って、猪俣家に復讐する機会を狙っていたんだが――」
「…………」
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