16 / 26
第8話_2 追手(?)が現れた※
しおりを挟むわたしとシュタインが、あくせくと着替え終わった瞬間――。
ばんっと、寝室の扉が盛大に開かれた――。
「ヴィオレッタ姫、本当に生きておいでとは――」
かなり大勢の騎士たちが、扉の中から次々に部屋の中へと入ってくる。鎧がガチャガチャと音を立てていた。彼らの着用している鎧は、わたしの祖国であるオルビス・クラシオン王国のもので間違いない。
外は雪だからか、泥だらけの靴で侵入してきた騎士たちの身体にはそこかしこに雪の跡が残り、冷たい外の夜の空気の匂いも運んできていた。
平和に暮らしていたわたしの前に、祖国オルビス・クラシオン王国から、追手(?)のようなものが現れてしまった――。
(どうせ、あのおばちゃんの仕業ね……剣の一族は寄越していないところをみるに、継母が買収した騎士達ってところかしら?)
「さあ、こちらに来ていただこうか?」
乱れた白い髪をしたわたしを見て、屈強な男が話しはじめる。
そいつを睨みつけながら、わたしは言い放った。
「いやよ――どうせわたしは死ぬつもりだから、放っておきなさい――だけど、死に方はわたしが決めるわ――痛い目にあいたくなかったら、さっさと屋敷から出ていきなさい!!」
後ろに控えている騎士たちが、それでもひるまずに、わたしとシュタインのいる方に近づいてくる。
「仕方ないわね――」
わたしは、近くに落ちていたシーツを手にとる――。
「――お前、やっぱり姫だったのか――?」
シュタインが蒼い瞳で、わたしの方をまじまじと見つめた。
(やっぱり――? まさかこの人、わたしの正体に最初から気づいて――?)
そんなことを思うのも束の間――。
――なぜか彼は、わたしの背中に隠れた。
「ヴィオレッタ! あいつらをどうにかしてくれ! 小さな部屋で魔術を使うのは危険だ――!」
「――は?」
わたしは唖然としてしまった。
(ここは、実は剣の手練れでしたとかで、姫を護る流れじゃないわけ――? まあ、こいつに期待したわたしが馬鹿だったわ――)
そんなことを思って、わたしははっとする。
(わたしはシュタインに何を期待しているというの――?)
わたしが考え込んでしまっていたのを知ってか知らずか、騎士たちが剣を次々に抜いてきた。
「女のわたしに、どうにかできるわけないじゃない――あなた、ひょろひょろとは言え、剣ダコが出来てるんだから、剣が一応扱えるんじゃないの――? わたし、一応姫なんですけど――なんか適当に攻撃とかできないわけ?」
「実戦経験がないんだよ!」
シュタインが叫ぶ。
(シュタインを見てたら、情けなくて涙が出そうだわ――)
「夜の営みについてもそうだったけど、貴方、やればできる男よ。だいぶ良い感じになってきてる。剣術も出来ないって思いこんでるだけよ――やってみなさい――」
「ぶ、武器がないんだ――!」
「呆れた――もう仕方がないわね――」
私は手に持っていたシーツを持ち直した。
「時間、稼いでやっても良いけど――わたしを動かすのは、高くつくわよ――!」
シーツを手に持つわたしに、まずひとりめの騎士が襲いかかってくる。
騎士の脚にわたしの脚を引っ掛けると、相手は派手にすっころんだ。
(城でいじめられた経験のおかげで、敵を巻いたりするのは得意なのよね――)
シュタインがわたしに叫ぶ!!
「す、すまない、ヴィオレッタ! か、覚悟を決めるから――!」
二人目の騎士たちが襲来すると、わたしは集団目がけてシーツを投げる。
視界が白くなった男たちが、一斉に大声をあげた。
そのすきに、最初に転ばせた男から、わたしは武器をかすめとってシュタインに放り投げた。
そうして、わたしは彼に向かって叫んだ――。
「シュタイン! 本当にわたしがいないとダメなんだから――!」
6
お気に入りに追加
562
あなたにおすすめの小説
【R18】殿下!そこは舐めてイイところじゃありません! 〜悪役令嬢に転生したけど元潔癖症の王子に溺愛されてます〜
茅野ガク
恋愛
予想外に起きたイベントでなんとか王太子を救おうとしたら、彼に執着されることになった悪役令嬢の話。
☆他サイトにも投稿しています
冷徹御曹司と極上の一夜に溺れたら愛を孕みました
せいとも
恋愛
旧題:運命の一夜と愛の結晶〜裏切られた絶望がもたらす奇跡〜
神楽坂グループ傘下『田崎ホールディングス』の創業50周年パーティーが開催された。
舞台で挨拶するのは、専務の田崎悠太だ。
専務の秘書で彼女の月島さくらは、会場で挨拶を聞いていた。
そこで、今の瞬間まで彼氏だと思っていた悠太の口から、別の女性との婚約が発表された。
さくらは、訳が分からずショックを受け会場を後にする。
その様子を見ていたのが、神楽坂グループの御曹司で、社長の怜だった。
海外出張から一時帰国して、パーティーに出席していたのだ。
会場から出たさくらを追いかけ、忘れさせてやると一夜の関係をもつ。
一生をさくらと共にしようと考えていた怜と、怜とは一夜の関係だと割り切り前に進むさくらとの、長い長いすれ違いが始まる。
再会の日は……。
【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!
楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。
(リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……)
遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──!
(かわいい、好きです、愛してます)
(誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?)
二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない!
ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。
(まさか。もしかして、心の声が聞こえている?)
リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる?
二人の恋の結末はどうなっちゃうの?!
心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。
✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。
✳︎小説家になろうにも投稿しています♪
初恋をこじらせた騎士軍師は、愛妻を偏愛する ~有能な頭脳が愛妻には働きません!~
如月あこ
恋愛
宮廷使用人のメリアは男好きのする体型のせいで、日頃から貴族男性に絡まれることが多く、自分の身体を嫌っていた。
ある夜、悪辣で有名な貴族の男に王城の庭園へ追い込まれて、絶体絶命のピンチに陥る。
懸命に守ってきた純潔がついに散らされてしまう! と、恐怖に駆られるメリアを助けたのは『騎士軍師』という特別な階級を与えられている、策士として有名な男ゲオルグだった。
メリアはゲオルグの提案で、大切な人たちを守るために、彼と契約結婚をすることになるが――。
騎士軍師(40歳)×宮廷使用人(22歳)
ひたすら不器用で素直な二人の、両片想いむずむずストーリー。
※ヒロインは、むちっとした体型(太っているわけではないが、本人は太っていると思い込んでいる)
甘く優しい世界で番に出会って
能登原あめ
恋愛
* R18シリアス寄りのお砂糖過多な話です。
14歳のマミは母と2人暮らしだが、ある日母の恋人に身の危険を感じて、ベランダに隠れる。
目がさめると草原にいて……?
獣人のいる世界で言葉もわからないのに温かい家庭に迎えられて番の男の子に出会うお話。
* ヤマのない甘いだけの話となっております。疲れた時に読んでいただければと思います。
* 全六話+おまけ数話+番外編。
* 年齢を2つほど引き上げて少々改稿しました(2022.01)
* Rは、終盤。※マークあり。
* 表紙はCanvaさまで作成した画像を使用しております。
腹黒王子は、食べ頃を待っている
月密
恋愛
侯爵令嬢のアリシア・ヴェルネがまだ五歳の時、自国の王太子であるリーンハルトと出会った。そしてその僅か一秒後ーー彼から跪かれ結婚を申し込まれる。幼いアリシアは思わず頷いてしまい、それから十三年間彼からの溺愛ならぬ執愛が止まらない。「ハンカチを拾って頂いただけなんです!」それなのに浮気だと言われてしまいーー「悪い子にはお仕置きをしないとね」また今日も彼から淫らなお仕置きをされてーー……。
隠れ御曹司の愛に絡めとられて
海棠桔梗
恋愛
目が覚めたら、名前が何だったかさっぱり覚えていない男とベッドを共にしていた――
彼氏に浮気されて更になぜか自分の方が振られて「もう男なんていらない!」って思ってた矢先、強引に参加させられた合コンで出会った、やたら綺麗な顔の男。
古い雑居ビルの一室に住んでるくせに、持ってる腕時計は超高級品。
仕事は飲食店勤務――って、もしかしてホスト!?
チャラい男はお断り!
けれども彼の作る料理はどれも絶品で……
超大手商社 秘書課勤務
野村 亜矢(のむら あや)
29歳
特技:迷子
×
飲食店勤務(ホスト?)
名も知らぬ男
24歳
特技:家事?
「方向音痴・家事音痴の女」は「チャラいけれど家事は完璧な男」の愛に絡め取られて
もう逃げられない――
色々と疲れた乙女は最強の騎士様の甘い攻撃に陥落しました
灰兎
恋愛
「ルイーズ、もう少し脚を開けますか?」優しく聞いてくれるマチアスは、多分、もう待ちきれないのを必死に我慢してくれている。
恋愛経験も無いままに婚約破棄まで経験して、色々と疲れているお年頃の女の子、ルイーズ。優秀で容姿端麗なのに恋愛初心者のルイーズ相手には四苦八苦、でもやっぱり最後には絶対無敵の最強だった騎士、マチアス。二人の両片思いは色んな意味でもう我慢出来なくなった騎士様によってぶち壊されました。めでたしめでたし。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる