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第5話_1 仕方ないから手伝うわ※
しおりを挟む北の大帝国ロクスの最北端の岬に坐する古い城。
断崖絶壁のその場所に、金髪碧眼眼鏡なイケメンであるシュタインとわたしは暮らしている。
時折、打ち寄せる波の音ともに、舞い上がった潮風が鼻をくすぐってくるような場所だ。
シュタインの活動範囲は狭く、古い城とその周囲だけにとどまっている。いつも魔術の研究にふけっているのだが、時折、忽然と姿を消すことがある。しかしながら、何をやっているのかまでは知らない。
実は、古い城の尖塔から見下ろすと、小さな村が近くにあることがわかった。シュタインは、どうやらその村に向かう。
(納税かしら? そもそも一人でどうやってお金を取り立てて、中央政府に渡しているわけ?)
シュタインに関しては、いまだに謎が多かった。
小さな村から帰ってくると、彼はわたしによくお土産をくれる。
だけど、あまりにもダサいものが多い。
この間も、首がもげかけたいかつい熊のぬいぐるみをくれた。熊の口は縫い付けられている。正直、奇抜なデザインで可愛さとは程遠い。
「なに、これ? 呪術とかに使うの?」
「呪術であるものか! 村のおばあさんが、女性は人形の類が好きだと言って、これを売りつけてきたんだ。ヴィオレッタも城で退屈だろうから、プレゼントしようと思ったんだ」
シュタインの言葉を聞いて、わたしはあきれてしまった。
「ふうん……たぶん、あなた騙されてるわよ。廃品回収ついでにお金までもぎとられたのよ」
わたしがそういうと――。
「まさか! この俺が、騙されるような人間に見えるというのか!? ヴィオレッタ、君はまずその考えを改めた方が良い! わたしはどちらかと言えば、人を騙す狡猾な人間で……!」
「何? シュタイン、自分ではそういう設定のつもりなの?」
「設定じゃない!」
彼なりに、自分をこう見せたいというのがあるらしいのだが、残念ながら、彼の理想と現実のギャップは激しい。
わたしが彼を現実に直面化させると、彼は毎度のごとく嘆いていた。
(死体が好きな変態だってことをのぞけば、人が良いのは間違いないわね……)
わたしは、嘆くシュタインを見て、こっそり笑んだのだった。
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