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無垢な花嫁は、青焔の騎士に囚われる【短編版】
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しおりを挟むそれまで全く私の元を訪れてこなかったデュランダル将軍だったが、翌日また姿を現した。
寝室に入ってくるなり、肩に白猫を乗せた彼は、私に何かを放り投げてくる。
「ほら、お前にやるよ」
「なんですか?」
私の掌の上で、金の土台に紫色の宝石が載った指輪がコロンと転がった。
「……昨日の礼もかねて、お前に結婚指輪だよ」
「え、えっと……ありがとうございます」
まさか怪我を治癒したお礼に結婚指輪を渡されるなんて、どう反応して良いか分からないで戸惑ってしまう。
彼の視線を感じて、私は顔を上げた。
「ひえっ……」
やはり眉をひそめて、ちょっと怖い顔をした彼に少しだけ怯えてしまう。
「ものを与えてもつられないのかよ……珍しい女だな」
明らかに機嫌を損ねた顔をして、彼は去って行ったのだった。
※※※
それから毎日、デュランダル将軍は私の元を訪れるようになった。
嫁いでから知り合いが全くおらず、話し相手は猫のコハクだけだったので、毎日誰かが来てくれるのが嬉しかった。
不愛想な表情で彼が私に何かを手渡してきた。
「ほら、お前にこれをやるよ。とにかくなんでも良いから飯を食え。やせっぽっちの女よりも、ちょっと丸いぐらいが可愛げがあるぞ」
「コハクの餌とお菓子ですね」
コハクにやる餌と一緒に、私にお菓子を買ってきてくれたりする。
太りそうなのに良いと言ったが、彼は毎日菓子を持ってきた。
どうやら私の食が細いのを気にしての行動だったらしい。
「あの……いつも、ありがとうございます。デュランダル将軍」
私が礼を告げると「おう」とぶっきらぼうに、一言だけ彼は返答してきた。
「菓子が好きだなんて、まだまだ女未満のガキだな」
言い方はきついが、彼の顔が赤くなっているのが分かる。
(照れ屋さん……)
彼に促されて、私も徐々にご飯も喉を通るようになってきていた。
(デュランダル将軍は対外的には乱暴者だと言われているし、実際にすごみはあるけれど、不愛想なだけで、本当の彼は優しくて、世話好きな男性……)
私もちょっとずつ、彼に心を開いてきたのだった。
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