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元令嬢の気高き女騎士団長は、幼馴染の年下副騎士団長(旦那)に翻弄されて困ってます!
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しおりを挟むハルジオンの群生地から少しだけ離れた森の奥、ハデスと私は二人で過ごしていた。
敵はしばらく来ないだろういう話になり、ランスロット様とオルテンシア様は二人きりで花の鑑賞に勤しむのだそうだ。
「ペルセ姉さん、はい、小川で水を汲んできたよ。ランスロットからも、他の部下を呼ぶから、もう俺たちの任務は終わりで良いって」
木の下にしゃがみ込んだ私に向かって、ハデスが水の入った筒を渡してきた。
「ハデス、ありがとう」
冷たい水を含むと、少しだけ頭も冷えてくる。
ハデスが私の隣にしゃがみ込んでくる。
二人で夕焼けを見て過ごした。
しばらくどちらも喋らなかったが、耐えきれずに口を開いたのは私の方だった。
「本来なら、ハデスよりも上官である私の方がもっとしっかりと立ち回らなければならなかったのに……」
「姉さんはオルテンシア様を御守りしていたじゃないか。それにもっと上の立場のランスロットが姉さんにそう命じていたんだから別に良いだろう」
それはそれで尤もだ。
「だが、別にオルテンシア様をお前が守って、女の私が戦陣に立っても良かったわけで……」
ハデスが怪訝な表情を浮かべた。
「どうしたんだ、ペルセ姉さん……ランスロットだって、俺がオルテンシア様を抱きかかえるのは嫌で、判断したんだろう。そこは適材適所だと思うのだけれど……」
「私が女だから……」
思わず声が震える。
「姉さんが女性だからこそランスロットも頼みやすかったんだと思うのだけれど……どうしたんだ、えらく女だと気にしているみたいだね……ああ、もしかして子どものことで生家の伯爵家から色々言われるから引っかかっているの?」
図星だった。
「任務中に気をとられるぐらいには気になっているようだな」
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「私も子どもが欲しくないわけではないんだ……今まで男性と張り合って積み上げてきた生き方をここで捨てないといけないのかと思うと……だが、子どもをもうけないとお前に対しても失礼で……」
まだ生まれてもいない子どもに対して申し訳ないと思う気持ちと、自身の積み上げてきたものが崩れるのではないかという恐怖が胸の内を襲ってきた。
一人でずっと悩んでいたことを、夫であるハデスに初めて打ち明ける。
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