上 下
75 / 118
元令嬢の気高き女騎士団長は、幼馴染の年下副騎士団長(旦那)に翻弄されて困ってます!

1

しおりを挟む



 漆黒の髪にサファイアブルーの瞳、長身痩躯の美青年ハデス。
 かなり年下の彼が私の夫になって、はや数年の月日が経った。
 仕事を最優先にしてきたため、まだ我々の間に子どもはいない。とはいえ、夫婦仲は順調だ。家族からはもう三十前後だからはやく赤ん坊を見せてくれと急かされてはいた。

(両親は何もわかっていない……子どもが出来たら、せっかく女性初の騎士団長になったというのに、その地位が危ぶまれる……)

 子どもがほしくないわけでは決してなかったが――イライラしてしまった私は、ハデスとの夜の営みを避け、仕事に入れ込んでしまっていたのだ。

 そんなある日のこと。

 年下の幼馴染兼上司であるランスロット様と、その婚約者の少女オルテンシア様――そんな二人の後ろを、今は夫婦二人、馬で並んで駆けていた。

 この世のものとは思えないほどの美貌を持った白銀の髪に紫色の瞳の美青年ランスロット様と、ローズピンクの髪に金の瞳を持った愛らしい少女オルテンシア様の二人は、兄妹ではなく、れっきとした婚約者同士である。

(我々とは違って、女性が年下の組み合わせだ……)

 ちなみにランスロット様と夫ハデスは比較的年も近い。どちらも綺麗な顔立ちだが、ランスロットの方がより中性的で、ハデスの方が男性らしいと言える。二人の性格をよく知らない女騎士や文官たちは、二人が並んで話すときゃあきゃあ騒ぐのを知っていた。

(見た目だけは二人とも……良いからな……)

 どんどん馬は森の中へと入っていく。
 
 実は、ハデスと私――何週間かぶりに夫婦が揃ったのだが――。

「ペルセ姉さん、男装姿でも綺麗だ」

 馬上から、平然とそんな声を掛けてくるハデスに対して顔が真っ赤になってしまう。

「な……今は任務中だぞ、お、おかしなことを言うんじゃない」

「事実を述べたまでだ。金の髪が白馬の流れる尾のように綺麗だし、そのロイヤルブルーの男性用のコートだって、姉さんの美しさを際立てるためのちょうど良い飾りになっている」

 花言葉で婚約者を口説きまくる幼馴染ランスロット様の影響か、ハデスもこういう気障な台詞をさらさら述べてくるので、何年経っても心臓がもたない。
 
「それに、任務だと言ってもランスロットが一緒なんだから何か起きたとしても平気だろう。あいつもなかなか休みが合わない我々夫婦に気を遣って、任務だと言って連れ出してくれただけだ」

 そう、婚約者のことで頭がいっぱいで、脳内がお花畑に感じなくもない(一応)将軍補佐ランスロット。だけどわりと繊細な彼が、気を利かせてこの任務を組んでくれたのを知っている。

「ペルセ姉さん、もう着くよ」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

職場のパートのおばさん

Rollman
恋愛
職場のパートのおばさんと…

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

処理中です...