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大嫌いな幼馴染の、おもちゃになってしまいました

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 ミルフィーユは自室で枕を抱えて涙を流す。

 いじめられたり、いじめたり、そんな歪な関係を繰り返していた自分たち。

 だけど、リヒトが離れて行って初めて気が付いたのだ。

(私は……リヒトのことが……)

 大きな傷が出来たことで、リヒトから愛されなくなるのを恐れ、ミルフィーユはずっと支配的に振舞ってしまっていたのだ。

 そうして、長い間、彼も彼女の行動に付き合ってくれた。

(でもきっと、リヒトは私の自慰行為を見て、いよいよ離れる好機を得たと思ったのだわ……それで私に嫌われるように振舞い続けたのよ……)

 でも、今更気づいたところで、時すでに遅し……。

 ご飯も何も通らない。

 しくしくと涙だけがこぼれていく。

 誰も部屋に近づけずに、一人で泣いて過ごしていた。

 ふと、失恋した自分を慰めるために、スカートの中に指を伸ばす。

 悲しいかな、あまりの辛さに花弁も潤いをなくしてしまっていた。


「ひっ……う……リヒト……」


 彼女が泣いていると――。


「呼びましたか? ミルフィーユ様」


 突然、リヒトの声が聴こえた気がした。

(ついに、寂しさから、彼の幻聴が聴こえるようになったのね……)

 ミルフィーユがそんなことを考えていると――。


「きゃっ――」


 突然、ベッドに横たわる彼女の身体を、別の誰かが抱き寄せる。

 それはもちろん――。


「リヒト……? 本物のリヒトなの……?」


「はい、そうです……」


 彼女の前に、黒髪赤眼の美しい騎士リヒトが現れたのだった。

「僕の、自惚れなのかもしれませんが……」

 唐突に、彼は口を開いた。

「ミルフィは、僕のことが好きなんですか?」

「そ、そんなこと……」

 素直になれない彼女だったが――。


「言わなくても分かってちょうだいよ……!」


 彼女はおんおんと泣きながら身体を起こす。そうして、リヒトの身体に抱きついた。


「ご、ごめんなさい……リヒト……大嫌いな私に好かれたって嬉しくないでしょう? ごめんなさい、ごめんなさい……」


 わんわんと泣くミルフィーユの背を、リヒトは優しく撫でる。

「僕の方こそ、ミルフィに嫌われていると思って……いっそ嫌われてしまえと、自暴自棄になって、あんな行為を繰り返してしまいました……本当にごめんなさい」

「うそ……じゃあ、私たち……」

「ずっと両想いだったみたいですね……」


 互いの顔を見合わせて、そうして二人はクスクス笑った。

 ベッドの上で、向き合って座るリヒトとミルフィは、どちらともなく口づけ合う。

「ん……あっ……ん……」

 舌同士が絡み合い、いやらしい水音を立て始めた。

「ミルフィ……ずっと好きでした……」

 口づけが終わった後、彼は彼女のドレスにそっと手をかける。
 そうして彼に背を向けるように、彼女は座りなおさせられた。
 彼女の背に、彼はそっと口づける。

「僕のせいでついた傷……」

 彼の唇が背中を這って、ぞくぞくとした感覚が身体を支配する。

「あっ……ん……」

「本当はまっさらな、美しい背だったのに……」




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