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お菓子な国の姫君は、年下の堅物甘党王子に溺愛されています

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『はい、林檎たっぷりのパイですよ、元気になってくださいませ』

『食べたくないです』

『あら~そうなんですか~』

 そうして、マカロンがニコニコしたまま、少年のそばで過ごしていると――

 ぐ~~

 お腹の音が聞こえてきて、観念したかのように少年がパイを手に取った。

『や、やっぱり食べます』

『はい、どうぞ~』

 そうして、一口食べたら嬉しそうに微笑んだ。

『おいしい……!』

『あらあら元気になりましたわね。また作って差し上げますから~』

 少年はぽろぽろと涙を流しながら笑ったのだった。



「あらあらあらあら……まさか、あれがサヴァラン?」

 サヴァランが嬉しそうに微笑んだ。

「思い出してくださいましたか?」

「ええ」

 こくりと頷く。
 サヴァランが続けた。


「伯爵家出身で貴族の門を叩いた僕ですけれど……マカロン様の護衛をして、そうして……もう一度菓子を作ってもらいたかったのです」

 彼の顔は、まるで林檎のように真っ赤になっていました。

「あら、そうだったんですね、そんなずっと昔から」

「はい……求婚するまでに陛下の承認を得るのに時間がかかってしまいました。だけど……幼い頃からずっと貴女だけをお慕いしています、マカロン様」

 てっきり、行き遅れているわたくしの菓子を食べている間に好きになったものだと思っておりましたのに……

 ずっとずっと自分のことを好きでいてくれたなんて……

「嬉しいですわ、サヴァラン」

「僕の方こそ、マカロン様。長年の悲願を叶えることができました」

 今日のサヴァランはやけに饒舌でした。

 そうして、サヴァランが、まるで砂糖菓子のように甘くて蕩ける笑みを浮かべてきます。
 

「マカロン様、いいえ、マカロン。これからもあなたのことを生涯愛し続けると誓います」


「まあ、サヴァラン、ありがとうございます」
 

 二人してどちらからともなく口づけを交わし合いました。


 そう、こんな風に――わたくしたちは、お菓子のようにとっても甘い夜を毎日過ごしているのでした。


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