上 下
47 / 118
お菓子な国の姫君は、年下の堅物甘党王子に溺愛されています

1

しおりを挟む

 わたくしは、マカロン・ロクス、ロクス帝国の第一皇女です。よく人からはおっとりしていると言われます。ちょっと夢見がちな性格、好きな殿方としか結婚したくないという信念のせいで、いわゆる行き遅れになってしまいました。

 帝国では十五で成人を迎え、二十歳を越しても結婚をしていないと行き遅れと言われます。わたくしはなんと、二十六歳。世間では、ちょっと売れ残りとか言われておりまして……あら~どうしましょう。

 ちょっと前までは行き遅れと言われていながらもそこまで気にしておりませんでしたが、二十五を過ぎたぐらいから、世間の圧力が強くなってしまいました。

 ちなみに見た目は、お父様とお母様譲りの綺麗な金髪に菫色の瞳をしているのですが、美形二人に比べると見劣りするから、あまり並びたくはないのです。

 そんなわたくしに最近気になる殿方がついにできましたの。

「マカロン様、今日は、お部屋の警護に当たります。どうぞよろしくお願いいたします」

 彼の名前はサヴァラン。

 ちょっと堅物で有名の騎士様、とっても強くて、将来有望と評判ですのよ。市井の女性たちから大人気だそうです。令嬢たちもこぞって、彼を狙っていると評判ですわ。
 サヴァランは、飴色のつややかな髪に、綺麗な碧色の爽やかな瞳、そうしてとても騎士らしく男らしい顔立ちをしておりますの。

 そして彼からはいつもラム酒の良い香りがいたします。

 わたくしよりも、ちょっと年は下のはず。ご結婚はされていないそうなのですが、どうして男の人は行き遅れと言われないのかしら、羨ましいですわ。

 まあただやはり、彼からすれば年を召した行き遅れの警護対象でしかないと思います。残念ですが、わたくしの一方的な憧れで終わり。
 そんなふうに思っていたのですが――。


「はい、サヴァラン。今日は林檎をふんだんに用いたパイに、氷菓子を添えたお菓子を準備いたしましたわ」


「マカロン様、このサヴァラン、一生貴女様にお仕えする所存にございます」


「うふふ。まあ、ありがとう、サヴァラン」


 サヴァランは柔らかい緑色の瞳で、わたくしの方を見ております。

 実は――なんと皇女にしては珍しくお菓子作りが好きだったわたくしは、なんと甘党だったサヴァランを餌付けすることに成功しましたの。
 男らしい見た目なのに、まさかの甘党。
 最初、わたくしが彼の事実を知った時、恥ずかしそうにしておりましたが、お菓子作りが好きなわたくしからすればとても好印象でしたわ。

 他の者たちも知らない、わたくしだけが知ってる彼の素顔。

 でも彼はわたくしのお菓子につられていて、別にわたくし自体が好きなわけではございません。
 だけど、わたくしのお菓子を彼が試食してくれる瞬間は、まるで彼と恋人になれたようで、なんだかとっても幸せでしたの。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

職場のパートのおばさん

Rollman
恋愛
職場のパートのおばさんと…

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

処理中です...