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最終章 満天の星の下、消えゆく君と恋をする
最終話ー11
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(高校時代の俺が助けた時、美織は小学生じゃなかったか?)
その辺りの経緯がよくは分からないままではあったが――毎日献身的に自分のことを支えてくれる彼女に対して、彼が再び好意を抱くようになったのは当然の流れではあった。
(美織と俺は今年、皆に遅れての大学受験なわけだが……)
美織は術後のフォローやリハビリの関係があったので、高校を卒業した後は無職のまま過ごしていたようだが、成績自体は良いので、本土にある宇宙学科に通うのを検討しているらしい。
蒼汰は今年大検に合格したし、全国模試を受けたら医学部もA判定のままだった。自身の怪我や寝たきりだった経緯や美織の病気について調べている内に興味も湧いてきていた。
(医者になって、ほんの少しで良い、俺や美織と同じように困ってる人達の力になれたら……)
新たな目標が出来て、蒼汰の燻ぶっていた情熱の炎は再燃しはじめていた。
だから、二次試験の対策をしっかりした上で医学部受験に挑戦するつもりだ。
(俺と一緒に過ごす約束を果たしたら、美織はいなくなるんだろうか?)
「元気になったら一緒に泳ごう」と約束を交わしたのは覚えているので、願いを叶えるべく一緒にいるわけだが――蒼汰と美織は恋人同士というわけではない。
蒼汰には美織のことを庇って高潮に攫われて七年間眠ってしまったという経緯がある。
(俺の時間を奪ったっていう負い目があるんじゃないだろうか?)
だからこそ、約束を果たした彼女が、もうすっかり元気になりつつある自分の前からいなくなるのではないか?
蒼汰はずっとそのことを懸念していた。
(年齢も五歳上だし、親父みたいに一回で医学部に受かれば良いが、俺もブランクもあるし……)
下手したら二十六歳の浪人生になってしまう恐れがある。
(小学生の頃の美織は俺に憧れていたはずだから……)
だけど、それからもう八年の月日が経っているのだ。
どうしてだか、蒼汰としては眠っていた期間も長かったため、美織を同年代のように考えてしまうことがあるのだが……
本当の同年代の男性の方が良いと言われたらどうしようか。
(俺は……前をまっすぐに見るって決めただろう?)
いつそう思ったのかは忘れたが、漠然とそのことは覚えている。
蒼汰は高鳴る鼓動を抑えながら、美織に声をかけた。
「美織、お前に話がある」
「んん? なあに?」
振り仰いできた美織のことを蒼汰はまっすぐに見据えると力強く告げた。
「良かったら、これから先も俺とずっと一緒にいてほしいんだ」
どうか色好い返事が返ってきてほしい。
そんな風に蒼汰は願ったのだが……
「え……?」
美織がどうしてだか瞳を忙しなく揺らしている。
蒼汰の心にまるで高波が襲ってきたかのような衝撃が襲ってくる。
(やっぱりダメなのか?)
すると、美織から返事があった。
「君は一緒にいるつもりがなかったの?」
「は……?」
その辺りの経緯がよくは分からないままではあったが――毎日献身的に自分のことを支えてくれる彼女に対して、彼が再び好意を抱くようになったのは当然の流れではあった。
(美織と俺は今年、皆に遅れての大学受験なわけだが……)
美織は術後のフォローやリハビリの関係があったので、高校を卒業した後は無職のまま過ごしていたようだが、成績自体は良いので、本土にある宇宙学科に通うのを検討しているらしい。
蒼汰は今年大検に合格したし、全国模試を受けたら医学部もA判定のままだった。自身の怪我や寝たきりだった経緯や美織の病気について調べている内に興味も湧いてきていた。
(医者になって、ほんの少しで良い、俺や美織と同じように困ってる人達の力になれたら……)
新たな目標が出来て、蒼汰の燻ぶっていた情熱の炎は再燃しはじめていた。
だから、二次試験の対策をしっかりした上で医学部受験に挑戦するつもりだ。
(俺と一緒に過ごす約束を果たしたら、美織はいなくなるんだろうか?)
「元気になったら一緒に泳ごう」と約束を交わしたのは覚えているので、願いを叶えるべく一緒にいるわけだが――蒼汰と美織は恋人同士というわけではない。
蒼汰には美織のことを庇って高潮に攫われて七年間眠ってしまったという経緯がある。
(俺の時間を奪ったっていう負い目があるんじゃないだろうか?)
だからこそ、約束を果たした彼女が、もうすっかり元気になりつつある自分の前からいなくなるのではないか?
蒼汰はずっとそのことを懸念していた。
(年齢も五歳上だし、親父みたいに一回で医学部に受かれば良いが、俺もブランクもあるし……)
下手したら二十六歳の浪人生になってしまう恐れがある。
(小学生の頃の美織は俺に憧れていたはずだから……)
だけど、それからもう八年の月日が経っているのだ。
どうしてだか、蒼汰としては眠っていた期間も長かったため、美織を同年代のように考えてしまうことがあるのだが……
本当の同年代の男性の方が良いと言われたらどうしようか。
(俺は……前をまっすぐに見るって決めただろう?)
いつそう思ったのかは忘れたが、漠然とそのことは覚えている。
蒼汰は高鳴る鼓動を抑えながら、美織に声をかけた。
「美織、お前に話がある」
「んん? なあに?」
振り仰いできた美織のことを蒼汰はまっすぐに見据えると力強く告げた。
「良かったら、これから先も俺とずっと一緒にいてほしいんだ」
どうか色好い返事が返ってきてほしい。
そんな風に蒼汰は願ったのだが……
「え……?」
美織がどうしてだか瞳を忙しなく揺らしている。
蒼汰の心にまるで高波が襲ってきたかのような衝撃が襲ってくる。
(やっぱりダメなのか?)
すると、美織から返事があった。
「君は一緒にいるつもりがなかったの?」
「は……?」
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