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最終章 満天の星の下、消えゆく君と恋をする

最終話ー10 エピローグ

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 あれからまた季節は巡り、再び夏を迎えた。
 夜、潮騒が鳴り響く浜辺では、水着姿の青年と女性――蒼汰と美織が波打ち際に佇んでた。

「ああ、だいぶ暗くなってきたな。もう海から出るぞ」

「うん、分かった」

 二人は砂浜の上にしゃがみ込んで隣同士で座ると、濡れた肌同士が張り付きあう。
 もう少しで満月になりそうな月が空にはかかっていて、満天の星が光り輝いている。
 打ち寄せる波の音が響き渡る中、二人は寄り添いあって夜空を眺めた。

「星、綺麗だね」

「ああ、そうだな」

 美織は元々美少女だったが、さらに美しく成長しており、神々しくて月の女神のような出で立ちだ。
 本土を歩いていたらアイドルにならないかとスカウトされたらしいが、丁重にお断りしたという。

(勿体ないが、まあ俺としても安心だな)

 七年の月日を経て奇跡的に復活した蒼汰はといえば、凛々しい美青年へと成長していた。ちゃんと髭も沿っているため精悍な顔つきが露わになっている。
 最初は自身の容貌の変化についていくのがやっとだったが、鏡を何度も見ている内にだいぶ慣れてきた。
 筋力が衰えていたのも気になっていたが、リハビリの成果もあって徐々に元々の逞しい体つきへと戻ってきている。肩の怪我に関してはやはりどうにもならないようだったが、ある程度は動かせるため、日常生活を送ったり就労したりするには問題ないようだ。
 もちろん、前のような速さで泳ぐことは出来ないが、海で泳ぐには支障はないので、蒼汰としても満足していた。

(また海で泳げさえすれば、それで良い)

 蒼汰が目を覚ましたことを、蒼汰の父も妹ほのかも親友の恭平も――それどころか島中の皆が喜んでくれていた。
 先日、すっかり老け込んでしまっていた山下先生からは、改めて謝罪の言葉があった。
 高校生当時はショックだったが、蒼汰の将来のことを思って率直な意見を述べてくれただけだと理解している。
 幼少期から蒼汰に憧れていたという昼空学という人物がいた。美織に恋していたようだが、そっと身を引いたようだった。

「また君とこんな風に星を眺めることが出来て幸せだよ」

「俺もだよ」

 美織が屈託なく微笑んできたので、蒼汰の胸も温かく満ちてきた。

「ちゃんと顔をつけることができるようになったし、ビート板があればバタ足は出来るようになったし、もう少しで君との約束を果たせるはずだよ」

 そんな風に話す美織の姿を見て、蒼汰としては懸念があった。

(美織が俺にとってかけがえのない存在なんだってことは分かるんだが……)

 実は、蒼汰としては、どうしてそうなったのか、まだ完全には記憶が戻ってきていないのだ。

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