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第5章 荒れ狂う海、消えゆく君を追いかける
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そんなある日、もう何回目かも覚えていない病室で過ごして時のこと、
ちょうど台風が到来したので、窓はすごくガタガタ揺れ動いていた。
『お星さまは見れないけど、病院は島で一番丈夫な建物だから、台風の時は安心ね』
音がうるさくて結構怖いし、看護師さん達に言われていたから、カーテンを閉めようかなと思って窓に近づいた。
ふと、海に視線を奪われる。
ちょうど満潮のようだ。暴風の影響で、海は普段の穏やかさを失っており、激しくうねっていた。防波堤に打ち寄せる波の様子は、近づけば飲み込まれてしまいそうで、あまりにも恐ろしいものだった。
普段は釣りをする人たちが並んでいるのだが、今日は誰も近づこうとしていた。
『さすがにこんな日には誰も近づかないかな? えっ……!?』
美織は見間違いかと思って、目を何度か擦った後に、パチパチ瞬く。
どう見たって人がいるのだ。
台風の浜辺を歩く男性は、どうも近くの高校の制服を身に纏っているように見える。
『それに、あの人は……』
ドキンドキンドキン。
ずっと外に出て欲しいと思っていたから、目の錯覚かもしれない。
入院中、いくら個室とはいえ天体望遠鏡を設置するわけにはいかないと思って、双眼鏡を持ってきている。オーバーテーブルの上から双眼鏡を手に取ると、また窓辺に戻ってレンズを覗いた。
『あ……』
やっぱり、そうだ。
『蒼汰お兄ちゃん』
外に出ているのは喜ばしいことだが、防波堤から海をぼんやりと眺めていた。
まだ小学生の美織だった分かっている。
こんな台風の海に近づくのが危ないことなんて。
そんなこと、頭の良い彼のことなのだから、もっと分かっているに違いない。
なのに、どうして、危険な場所から動こうとしないのか?
『行かなきゃ!』
美織は病室を抜け出した。
ちょうどスタッフステーションを覗いたけれど、誰も姿が見えない。
突然いなくなったらびっくりするだろうから、近くにあったメモに『海にいきます 夜海美織』と書き残して、エレベーターホールへと向かった。
台風の準備で忙しいのか、人に出くわすことがほとんどなかった。
『間に合って……!』
病院の正面玄関を抜けて、坂道へと駆け出す。
だけど……
(私が勝手な行動を起こしたせいで、あの悲劇は起きてしまったんだ)
ちょうど台風が到来したので、窓はすごくガタガタ揺れ動いていた。
『お星さまは見れないけど、病院は島で一番丈夫な建物だから、台風の時は安心ね』
音がうるさくて結構怖いし、看護師さん達に言われていたから、カーテンを閉めようかなと思って窓に近づいた。
ふと、海に視線を奪われる。
ちょうど満潮のようだ。暴風の影響で、海は普段の穏やかさを失っており、激しくうねっていた。防波堤に打ち寄せる波の様子は、近づけば飲み込まれてしまいそうで、あまりにも恐ろしいものだった。
普段は釣りをする人たちが並んでいるのだが、今日は誰も近づこうとしていた。
『さすがにこんな日には誰も近づかないかな? えっ……!?』
美織は見間違いかと思って、目を何度か擦った後に、パチパチ瞬く。
どう見たって人がいるのだ。
台風の浜辺を歩く男性は、どうも近くの高校の制服を身に纏っているように見える。
『それに、あの人は……』
ドキンドキンドキン。
ずっと外に出て欲しいと思っていたから、目の錯覚かもしれない。
入院中、いくら個室とはいえ天体望遠鏡を設置するわけにはいかないと思って、双眼鏡を持ってきている。オーバーテーブルの上から双眼鏡を手に取ると、また窓辺に戻ってレンズを覗いた。
『あ……』
やっぱり、そうだ。
『蒼汰お兄ちゃん』
外に出ているのは喜ばしいことだが、防波堤から海をぼんやりと眺めていた。
まだ小学生の美織だった分かっている。
こんな台風の海に近づくのが危ないことなんて。
そんなこと、頭の良い彼のことなのだから、もっと分かっているに違いない。
なのに、どうして、危険な場所から動こうとしないのか?
『行かなきゃ!』
美織は病室を抜け出した。
ちょうどスタッフステーションを覗いたけれど、誰も姿が見えない。
突然いなくなったらびっくりするだろうから、近くにあったメモに『海にいきます 夜海美織』と書き残して、エレベーターホールへと向かった。
台風の準備で忙しいのか、人に出くわすことがほとんどなかった。
『間に合って……!』
病院の正面玄関を抜けて、坂道へと駆け出す。
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