満天の星の下、消えゆく君と恋をする

おうぎまちこ(あきたこまち)

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第4章 夏の終わり、消えゆく君が別れを告げる

22-2

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 蒼汰は死者で、美織は生者だ。
 自身が立てた過程が正しいとするならば、このまま彼女のそばにいれば、彼女の寿命を短くしてしまう恐れがある。そうなれば、ただでさえ残り少ない時間、彼女がやりたいことをやる時間を奪ってしまうのかもしれないのだ。
 もしそれでも美織がそばにいたいと話したとしても、死んだ自分では彼女に何かを与えてやることは不可能だ。
 これまで通り、星を観て、彼女の生きる時間を短くして……考えるだけで害悪しかないのだから。
 そう、だから、蒼汰は決めたのだ。
 力強く美織を見据えると、震えそうになる自分に喝を入れて、口を開いた。

「昨日の話も聞いてたし、俺がお前のことを好きなのはよくわかったよ。しかも割と昔っからさ」

 美織としては思いがけない話だったのだろう。キョトンとした後、頬を赤らめる。

「ええっと、それは、またちょっと別の話だけど……そう、ずっと昔から知ってて、憧れてたんだよね。ごめんね、隠し事ばっかりしてて」

 恥ずかしそうに話す彼女の言葉の数々が、蒼汰は本当はすごく嬉しい。
 もし昨日までの自分だったら、彼女の告白を手放しに喜ぶことが出来ただろう。
 だけど、純粋に喜べないのは、彼女が病魔に侵されているからか、それとも自分自身が死者だからか、はたまたそのどちらもか。
 そんな彼女に向かって、蒼汰は頬を引き締めると伝え直す。

「美織、でも俺たちはもう一緒にいない方が良い」

「え?」

 美織の表情が絶望に歪んでいく。
 蒼汰は、心臓が鷲掴みにされてしまうようで、息が苦しい。

「お前は星を観て過ごしたいんだろう? だけど、俺がそばにいれば、お前の寿命は短くなるだけだ」

「どうしてそういう話になったの!? 元々残り少なかったんだもん、それが短くなったって構わないよ!」

 美織も身体に変調をきたしているのに気づいているはずだ。
 蒼汰は首を横に振った。

「生きるために手術に挑むんじゃなかったのか? 下手をしたら、お前は明日死ぬかもしれないんだぞ?」

「……っ」

 だけど、美織は引かない。

「明日死ぬかもしれないだなんて、そんなこと知ってるよ。だけど、残り少ない命を誰と一緒に過ごすかは自分で選びたいんだよ」

 嗚咽を漏らす美織のことを、もう抱きしめてやることもできない。

「お前が俺のそばに現れたのは、自責の念からだろう?」

 すると、美織が猛反論してきた。

「さっきも言ったけど、それは違うよ! 絶対に違うんだから! 私は君のことが、ずっと……!」

 だが、蒼汰は冷淡に遮った。

「いいや、お前が俺の将来を奪ったから、俺に近づいてきたのは、それだけの理由だ」

「ちがう」

「お前はそうじゃないと思ったかもしれないが、俺はお前のことをそんな風に思ってしまった」

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