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第3章 夏祭りの夜、輝く君とキスをする
13-1 昼空学
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夏祭りで待ち合わせを済ませた蒼汰と美織。
前進する美織のことを身ぎれいな青年が呼び止めた。
(なんなんだ、こいつは?)
蒼汰は、本能的に相手に対して嫌悪感のようなものを抱いた。自分のなわばりに別の獣が侵入してきたような感覚だ。
島ではあまり見かけないような美少年が、美織に向かって口を開く。
「どうして入院しているはずの美織が夏祭りに来ているんだい?」
同い年ぐらいだろうか。背格好はやや細身で、自分よりも少しだけ目線が下だ。だが、どちらかといえば粗雑な自分と比べると、線が綺麗な王子系の男子だと思った。
それにしたって、美織に対して親し気な喋り方なのが、やけに蒼汰の鼻についた。
彼女はといえば、バツが悪そうに地面に視線を落としている。
「学くん、ううん、昼空くん……なんで……?」
ザワリ。
蒼汰の本能がまたもや刺激された。
(美織は俺のことを「君」としか呼んでこない)
だというのに、蒼汰の知らない美少年のことは「学くん」と下の名前で呼ぶのだ。
知らず知らずのうちに拳に力が入り込んでしまい、爪が硬い肌に食い込んできた。
「美織が一人でこんなところに遊びに来るなんて、意外だったよ」
どうやら目の前の美青年は蒼汰のことなど眼中にないようで、美織に向かって話を続ける。
(いけすかない奴だな)
学と呼ばれた美少年が続ける。
「無断離院は、前みたいに先生や看護師さん達を困らせるよ。美織が帰らないって言うんなら、僕の家の運転手に頼んで車で連れ帰ってあげるから」
すると、美織が声を出した。
「幼馴染だからって、そんなことしなくて良いから。それに無断離院なんかじゃない。ちゃんと一時退院したんだよ」
「一時退院? どうして僕に知らせてないんだい?」
「教える必要がないからに決まってるでしょう?」
すると、目の前の学の表情が一気に陰る。
「どうしてなんだ、美織、昔だったら、何でも僕に話してくれたじゃないか?」
「小学生の時の話でしょう? もうさすがに何でも話せる年齢じゃないんだよ」
だが、学と呼ばれた美少年は引かない。
「美織が周囲の人に隠し事をするようになったのは、あの男の事件があってからで……」
「その話はやめて……!」
突然、美織が大きな声を上げたため、対峙していた学だけでなく、蒼汰の身体までびくりと反応してしまった。
それまで傍観していた蒼汰だったが、美織と学の間に入る。
「美織が困っているだろう?」
すると、学が眉を顰めた。
制服のリボンの色を見れば赤。現在の一年生のカラーリングだ。
(こいつ、かなり失礼な下級生だな)
そもそも、近くに見知らぬ男が立っていたというのに、まるで空気のような扱いをしてくるのだ。
前進する美織のことを身ぎれいな青年が呼び止めた。
(なんなんだ、こいつは?)
蒼汰は、本能的に相手に対して嫌悪感のようなものを抱いた。自分のなわばりに別の獣が侵入してきたような感覚だ。
島ではあまり見かけないような美少年が、美織に向かって口を開く。
「どうして入院しているはずの美織が夏祭りに来ているんだい?」
同い年ぐらいだろうか。背格好はやや細身で、自分よりも少しだけ目線が下だ。だが、どちらかといえば粗雑な自分と比べると、線が綺麗な王子系の男子だと思った。
それにしたって、美織に対して親し気な喋り方なのが、やけに蒼汰の鼻についた。
彼女はといえば、バツが悪そうに地面に視線を落としている。
「学くん、ううん、昼空くん……なんで……?」
ザワリ。
蒼汰の本能がまたもや刺激された。
(美織は俺のことを「君」としか呼んでこない)
だというのに、蒼汰の知らない美少年のことは「学くん」と下の名前で呼ぶのだ。
知らず知らずのうちに拳に力が入り込んでしまい、爪が硬い肌に食い込んできた。
「美織が一人でこんなところに遊びに来るなんて、意外だったよ」
どうやら目の前の美青年は蒼汰のことなど眼中にないようで、美織に向かって話を続ける。
(いけすかない奴だな)
学と呼ばれた美少年が続ける。
「無断離院は、前みたいに先生や看護師さん達を困らせるよ。美織が帰らないって言うんなら、僕の家の運転手に頼んで車で連れ帰ってあげるから」
すると、美織が声を出した。
「幼馴染だからって、そんなことしなくて良いから。それに無断離院なんかじゃない。ちゃんと一時退院したんだよ」
「一時退院? どうして僕に知らせてないんだい?」
「教える必要がないからに決まってるでしょう?」
すると、目の前の学の表情が一気に陰る。
「どうしてなんだ、美織、昔だったら、何でも僕に話してくれたじゃないか?」
「小学生の時の話でしょう? もうさすがに何でも話せる年齢じゃないんだよ」
だが、学と呼ばれた美少年は引かない。
「美織が周囲の人に隠し事をするようになったのは、あの男の事件があってからで……」
「その話はやめて……!」
突然、美織が大きな声を上げたため、対峙していた学だけでなく、蒼汰の身体までびくりと反応してしまった。
それまで傍観していた蒼汰だったが、美織と学の間に入る。
「美織が困っているだろう?」
すると、学が眉を顰めた。
制服のリボンの色を見れば赤。現在の一年生のカラーリングだ。
(こいつ、かなり失礼な下級生だな)
そもそも、近くに見知らぬ男が立っていたというのに、まるで空気のような扱いをしてくるのだ。
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