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第1章 満天の星の下、儚げな君と出会う
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蒼汰は自分で言っておきながら胸が苦しくなった。
それ以上何か伝えることが出来ず、そのまま星空を眺めることにした。
今日は昨日と違って、空には雲一つない。教科書で習ったから知っているのだが、夏の大三角形が綺麗に見える。星が燦然と輝いていて、なんだか無性に眩しかった。
(無駄なこと、無駄な時間だったんだろうな)
そう、水泳に多くの時間を費やしてきた。
残せた成果だって多かった。
けれども、結果として選手生命は絶たれてしまったのだ。
これまでの全てが無駄で徒労に終わってしまったように感じて、どうしようもない。
(くそっ……)
胸をかきむしりたくなる衝動を抑え込む。
放っておけば、抱え込んでくすぶった内なる獣が胸の中で暴れて、蒼汰の身体を突き破って飛び出してきそうだった。
やるせない気持ちを抱えたまま、静かな時を過ごす。
どれだけの時間が経っただろうか。
蒼汰の隣に座り込んだ美織が、一緒に黙って星空を見つめていた。
どうやら彼女に帰るつもりはないらしい。
せっかく一人で天体観測ができる穴場だと思っていたのに、誰かがそばにいるようじゃあ、なんだか休んだ気にもなれない。
そんな風に伝えようかと思っていた、ちょうどその時……
「あのね、この場所なんだけどさ」
「なんだ?」
蒼汰の心を知ってか知らずか、美織は突然場所の話をはじめた。
かと思えば、瞳をくるくる上下左右に動かして、見ていて飽きない。
そうして、こちらを見据えると続けた。
「君がくる前は、私専用の場所だったんだよ!」
「は?」
蒼汰は驚きの声を上げる。
自分がこの穴場を見つけたのはつい昨日だ。結構人が少なくて良い場所だなって、昨晩は自分だけの特等席だと思いこんでいたわけだが、そもそも公共の場所で自分のそんな場所があるはずもない。
(そりゃあ、そうだよな)
どう返して良いか考えあぐねた後、蒼汰は返答した。
「じゃあ俺がお前の邪魔してたってことか、悪かった」
すると、美少女がくすくすと笑い始めた。
「なあんてね! 最近はずっと来てなかったんだ。ここ、涼しくて誰もこない穴場で良い場所だよね」
「ああ?」
最近は来ていないのなら、美織専用でも何でもないではないか。
(もしかすると揶揄われた?)
こちらは割と心配して謝ったというのに、冗談だと分かってムッとなってしまった。
そんな蒼汰の胸の内に気付いているのかいないのか、美織は話を続ける。
「だけど、本当に本当のことなんだ」
ふんわりした言い回しだ。
ふと彼女の横顔を見れば少しだけ陰って見えた。伏し目がちになって黒くてびっしりと生えた睫毛が頬に影を作っている。頬に落ちる黒髪をそっと耳にかける姿が、やけに妖艶に映った。
彼女は砂浜を見つめたまま続ける。
それ以上何か伝えることが出来ず、そのまま星空を眺めることにした。
今日は昨日と違って、空には雲一つない。教科書で習ったから知っているのだが、夏の大三角形が綺麗に見える。星が燦然と輝いていて、なんだか無性に眩しかった。
(無駄なこと、無駄な時間だったんだろうな)
そう、水泳に多くの時間を費やしてきた。
残せた成果だって多かった。
けれども、結果として選手生命は絶たれてしまったのだ。
これまでの全てが無駄で徒労に終わってしまったように感じて、どうしようもない。
(くそっ……)
胸をかきむしりたくなる衝動を抑え込む。
放っておけば、抱え込んでくすぶった内なる獣が胸の中で暴れて、蒼汰の身体を突き破って飛び出してきそうだった。
やるせない気持ちを抱えたまま、静かな時を過ごす。
どれだけの時間が経っただろうか。
蒼汰の隣に座り込んだ美織が、一緒に黙って星空を見つめていた。
どうやら彼女に帰るつもりはないらしい。
せっかく一人で天体観測ができる穴場だと思っていたのに、誰かがそばにいるようじゃあ、なんだか休んだ気にもなれない。
そんな風に伝えようかと思っていた、ちょうどその時……
「あのね、この場所なんだけどさ」
「なんだ?」
蒼汰の心を知ってか知らずか、美織は突然場所の話をはじめた。
かと思えば、瞳をくるくる上下左右に動かして、見ていて飽きない。
そうして、こちらを見据えると続けた。
「君がくる前は、私専用の場所だったんだよ!」
「は?」
蒼汰は驚きの声を上げる。
自分がこの穴場を見つけたのはつい昨日だ。結構人が少なくて良い場所だなって、昨晩は自分だけの特等席だと思いこんでいたわけだが、そもそも公共の場所で自分のそんな場所があるはずもない。
(そりゃあ、そうだよな)
どう返して良いか考えあぐねた後、蒼汰は返答した。
「じゃあ俺がお前の邪魔してたってことか、悪かった」
すると、美少女がくすくすと笑い始めた。
「なあんてね! 最近はずっと来てなかったんだ。ここ、涼しくて誰もこない穴場で良い場所だよね」
「ああ?」
最近は来ていないのなら、美織専用でも何でもないではないか。
(もしかすると揶揄われた?)
こちらは割と心配して謝ったというのに、冗談だと分かってムッとなってしまった。
そんな蒼汰の胸の内に気付いているのかいないのか、美織は話を続ける。
「だけど、本当に本当のことなんだ」
ふんわりした言い回しだ。
ふと彼女の横顔を見れば少しだけ陰って見えた。伏し目がちになって黒くてびっしりと生えた睫毛が頬に影を作っている。頬に落ちる黒髪をそっと耳にかける姿が、やけに妖艶に映った。
彼女は砂浜を見つめたまま続ける。
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